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だから僕は左目なんかいらない。  作者: 日暮 絵留
28/45

07 覚悟

         1

「彼女の死が、いつ、どこで、どのように訪れるのかはわたしにも分かりません。ただ、わたしのような「力の弱い死神」にでもくつがえせる可能性がある死である以上、病死などの可能性はないと見ていいでしょう。」

 なるほど…。

 大体の状況は把握した。…つもりだ。

 芹沢さんを救える上に、すももちゃんの手助けにもなるのなら、協力しない理由なんてない。

 ただ、

「僕は具体的に何をすればいいの?」

「一言で言ってしまえば、なるべく芹沢さんと行動を共にしてほしいです。」

「つまり、護衛ってこと?」

「そこまで大仰でなくても構いませんが、できるだけ彼女から目を離さないことは重要ですから。」

「だから、さっきも芹沢さんにくっついて行動していたんだね?」

「はい。本来の役目も疎かにはできませんので、四六時中というわけにはいきませんでしたが、颯太が協力してくれれば、かなり“穴”はなくなるでしょう。」

「学校があるうちは夕方までほとんど一緒だから任せてよ。ただ、夏休みに入ったら、さすがに毎日顔を合わせるのは難しいなぁ…。夜まででよければ見張ることもできると思うけど…」

「それだけしてもらえれば十分です。」

「よし、じゃあ、それでいこう」

 …って、えっ? ちょっと待てよ?

「今は? 今、この瞬間はどうなってるの?」

「実はもう一人、協力してくれている死神がいます。わたしの後輩で、とても優秀な子です。今はその子がフォローに回ってくれているので大丈夫。芹沢さんの周囲に不穏な空気を感じればすぐに連絡をくれるでしょう。」

「僕がいなくても問題ないんじゃ…」と内心思ったけど、その後輩さんも自分の役目を多数抱えているため、あくまで、僕とすももちゃんの目が行き届かないときのフォロー要員と捉えるべきとのことだった。


         2

「試験に合格したら、すももちゃんは晴れて生き返れるんだよね?」

「はい。生き返らずに「更に上位の死神を目指す」という選択肢もあることはありますが…。」

「じゃあ、その…もし、失敗したらどうなるの?」

「わたしはこの世界に再び転生する権利を永久に剥奪された上で、存在そのものを消されるでしょう。その場合、颯太の記憶に残ることはありません。」

 僕はここにきて、ようやく、試練に挑むことのリスキーさを知った。

「もっとも、成功して生き返ることになったとしても、“わたしが死神であったこと自体が無かったことになる”ので、やはり颯太の記憶に残ることはありません。だから、颯太にとってはどちらも大して変わりませんよ。」

 そんなことはない。

 どちらにしたって記憶には残らない。

 成功したとしても、僕たちが再び出会うことは二度とないだろう。

 だからって、例え悪い結果になっても大して変わらないなんてことは、絶対にない。

 本音を言えば、試験なんか受けずに、このまま「死神の」すももちゃんと交友関係を持つのも悪くないという気持ちもある…。

 でもそれはできない。

 これはすももちゃん自身が選んだことなのだから―――

 彼女の「命をした選択」に対して、口出しすることなどできるはずもなかった。

 それにこの最終試験には芹沢さんの命運もかかっている。

 救うチャンスがあるのに、それをみすみす、ふいにするわけにはいかない。

 必ず成功させてみせる。

 すももちゃんのために。

 芹沢さんのために。

 そして、僕自身のためにも。

 やり遂げよう、絶対に。

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