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だから僕は左目なんかいらない。  作者: 日暮 絵留
21/45

21 別れのとき

         1

 いよいよ、すももちゃんが帰る(と言っていいのかは分からないけど)時間になり、二人で玄関に来ていた。

 母さんと父さんはまだ外出中で、他のみんなは「最後くらいは従兄妹同士、水入らずで過ごしなよ」ということで既に引き上げている。

 モカすらも気を利かせたのか、いつの間にか見当たらなくなっていた。

「結局、ノートの真の姿を見るには至りませんでしたね。」

 そう言えばそんな設定だったんだっけ…。

「まあ、また次の機会があるよ。さすがに頻繁に泊まりに来られるのは母さんたちも渋ると思うけど、普通に遊びにくればいいじゃないか」

「はい…。」

 連絡先は交換してある。

 すももちゃんは携帯の類は持っていないそうなので自宅の番号を聞いておいた。

 家出中の身である彼女の自宅にこちらから連絡を入れるわけにはいかないけど、教えてもらった番号から着信があれば、僕たちはいつでも繋がれるのだ。

 それがいつになるのかは、僕には分からないけど―――

「夏休みにはまた連泊の許可がもらえるかもしれないし、その頃には僕もきっとノートの姿が見えるようになるって」

「そうかもしれませんね…。でも、それでは―――のです。」

 途中が聞き取りにくかったので聞き返そうとしたら、その前にすももちゃんが「あっ」と声をあげた。

「すみません。颯太。肝心なノートを颯太の部屋に置き忘れてしまったようです。」

「そう言えば…。確かに部屋を出るとき机の上に置いてあったような気がする」

「…居心地のよさにすっかり気が緩んでしまっていたようです。死神失格ですね…。」

「そんな大げさな。待ってて。僕が取ってきてあげるよ」

「ありがとうございます…。」

 駆け足で階段を上がり、部屋の扉に手をかけた。

 扉を開けると正面に僕の勉強机があって、その上にすももちゃんのノートが無造作に置かれている。

 でも、

 あれ? 何かがおかしい…


「このノート“こんな色してたっけ”?」


 血のように赤いノートを見て、僕は少しの間立ち尽くしてしまった―――

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