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だから僕は左目なんかいらない。  作者: 日暮 絵留
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02 事の発端

         1

 事の発端は下校途中の道端で見つけた一冊の大学ノートだった。

 なんとなく気になって手に取ってみると、表紙には黒のマジックでこう書いてあった。


『死神のノート』


「どこかで聞いたことがある設定のノートだな…」

 最初は子供が遊びで書いたものかと思ったけど、それにしては字が綺麗過ぎた。

 達筆というわけではなくて、いかにも中学生か高校生くらいの女の子が書いたような、少し丸みを帯びた文字だった。

 嫌いな人の名前でも書いてストレスを発散していたのだろうか。

 字が綺麗な女の子には個人的に魅力を感じるのだけど、さすがに“これ”は…無い。

 氏名を書く欄にも、しっかり「死神」と書いてあるのが更に“痛さ”を助長していた。

 落とし物は交番に届けるべきだという良識は持ち合わせているつもりだけど、このノートはむしろ届けるべきではないと判断した。

 ―――のだけど、

 僕にこのノートをどうしろと言うのだろう?

 落とし主を探して直接返すとしても、どんな顔をして渡せばいいのか分からない。

 かと言って、このまま放置しておくのも問題がありそうだ…。

「とりあえず持って帰るかな…」

 良識は持ち合わせていると言ったばかりだけど、正直、中身を見てみたいという気持ちもあった。

 その「悪魔のささやき」を「仕方がないから持ち帰る」という大義名分に包み隠して、僕は再び帰路に就いた。


         2

 家に帰ってきた僕は、いの一番に二階の自室へと向かった。

 いつもは居間にいる母さんと愛猫の『モカ』に挨拶をするのが常だけど、ノートの内容が気になって仕方がなかった。

「持ち主に繋がるような手がかりがあるかもしれないから」というのは建前で、その実、興味本位がほとんどを占めていた。

 ベッドに横になった僕はなんの躊躇いもなくノートの表紙をめくった。

 そこには人の名前と、括弧で囲われた何かの数字が一行飛ばしに記されていた。

 まるでPCで打った文字を印刷したような字体は表紙の筆跡とは明らかに違う。

 括弧の中の数字は様々だけど、おそらく、その人物の年齢だろう。

 全体的に六十以上の数字が多く、八十代や九十を越えるものもあった。

 逆に十代・二十代などの若い数字はあまりないようだ。

 表紙を見た段階では、ノートの持ち主は若い女の子というイメージだったけど、それにしては“死んでほしい相手”の年齢が高過ぎる気がする…。

 不思議に思いながらも、僕は次々にページを捲っていった。

 どのページにも規則正しく一行飛ばしで名前と数字が並んでいた。

 理路整然と書かれたそれらには、有名な「某・死のノート」のように死因らしきものは書き込まれていない。

 僕は思った。

 こんなに平然と“殺したい相手の名前”をノートに書き溜めているなんて、持ち主は相当“あぶない人”に違いない、と。

 恨みを込めたような荒々しい字で書かれている方がまだマシに思えるくらいだ。

 そうして幾度かページを捲っていくと、やがて一人分の名前と数字だけが書かれたページになった。

 更にパラパラと捲ってみたところ、その後のページには何も書かれていないようだ。

 ノート自体はまだ半分以上も残っているけど、現時点でのリストはここまでらしい。

 ざっと見た感じでは僕の知っている人物の名前はなかったと思う。

 そのことに少し安堵して、僕はノートを閉じた。

 最後にぽつんと書かれていた『山田一郎(47)』という文字が、僕には何故か、やけに寂しそうに映った。

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