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だから僕は左目なんかいらない。  作者: 日暮 絵留
18/45

18 GW後半・二日目

         1

 ゴールデンウィークの残りの三日間にこれと言って予定を入れなかったのは、家で一人でテレビゲームでもしながらゆっくりと過ごすつもりだったからだ。

 想定外の「従兄妹」の存在によって、少なくとも「一人で」という部分は変更せざるを得なくなった。

 僕は本来、予定していたことを急に変えられたりすることを嫌う質なのだけど、今回はむしろ、彼女と一緒に過ごせることを素直に喜んだ。

 残された三日のうち、一日目は部屋で一緒にオセロをしたり、モカとたわむれたりして過ごした。

 大したことは何もしなかったけど、その分、たくさんの話ができたと思う。

 そのほとんどは、言ってしまえば、とりとめもない雑談だった。

 例えばこんな風に―――


         2

「颯太、モカは本当に賢い子ですね。」

 我が家のアイドルであるモカが褒められるのは本当に嬉しい。猫に限らず、ペットを飼っている人であれば、その気持ちも少しは分かってもらえるだろう。

「まあね。ときどき本当に人間の言葉を理解してるんじゃないかって思うことがあるくらいだよ」

「何を言っているのですか? 大抵の動物は人間の言葉を理解しているものですよ? ただ、それを気取らせないようにしている者が多いというだけの話です。」

「へぇ。なかなか面白い考え方だね」

「事実です。他種族の言葉を理解できていないのは、同じ種族間ですら言葉の壁に翻弄されている人間たちだけです。さながら、バベルの塔ですね。」

 バベルの塔というのは、確か、旧約聖書に出てくるもので、人類が複数の言語を使うことになるきっかけとなった話だ。

 ある時、天に届くほどの塔を築こうとした人間たちのおごりが神の怒りに触れ、それまで一つだった言葉を複数にされてしまう。

 意思疎通が困難になったことで塔は完成せず、それぞれの言葉が世界に広がった。

 ざっくり言うと、こんな感じで合ってると思う…たぶん。

 このエピソードがきっかけとなり、現在でも世界各地に多くの言語が溢れているというわけだ。

「まあ、人間が他の動物の言葉を理解するのは難しいよね。たまにそういう能力を持ってるって人がテレビに出てたりするけど、実際、本当なのかも分からないし」

「わたしは理解できますよ。ね? モカ。」

「にゃー」

「はは。本当に会話が成立しているみたいだからすごいや」

「“みたい”ではなく、しています。」

「じゃあさ、普段はあまり外出しないモカがたまにふらっと出かけることがあるんだけど、そういうときに何をしているのかを聞いてみてよ」

「だ、そうですよ。 モカ。」

「…にゃー」

「なるほど…。それは良いことをしましたね。」

「彼女はなんだって?」

「少し前のことのようですが、『裏山うらやま』という場所で「真っ黒な格好をした、さみしそうな少女」にお願いされて「読書好きの優しそうな少年」を引き合わせてあげたそうですよ?」

 なんだそれ…?

『裏山』と呼ばれているところは割と近くにあるけど、内容の方はさっぱりだ。

 僕が知らない、少女漫画とかにある話だろうか?

 と言うか、すももちゃん。

 モカは「にゃー」としか鳴いていないのに、少し長文過ぎやしないか?

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