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だから僕は左目なんかいらない。  作者: 日暮 絵留
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01 学生たちの憂鬱

みなさん、初めまして。そしてお久しぶりです。

日暮絵留ひぐらしえると申します。

処女作の『黒猫のような君と、僕の物語』から半年ちょっと…

今作の投稿は、前回の反省点を踏まえて、少しでも読者の方に読みやすいよう心がけたいと思っています。

週二回、水曜日の夜と日曜日のお昼ごろに連載していこうと思っておりますので、最後までどうぞよろしくお願い致します。

では、『だから僕は左目なんかいらない』をお楽しみください。

         1

 朝晩はまだまだ肌寒い日も多いけど、五月に入って、だいぶ春めいてきた。

 と言っても、今日はまだ一日ついたちだけど…。

 今のところ花粉症とは縁のない僕には過ごしやすい季節の到来だ。

 今朝はとてもいい陽気なので

「ふあぁ…」

 と、欠伸が出てしまうのも仕方がない。

 僕は『橘颯太たちばなそうた』。

 県立高校に通う、十七歳の学生だ。

「家から近い」のと「偏差値が自分の学力と釣り合っている」という理由で受験した男女共学の高校は、その“丁度良さ”で人気の高い学校である。

 一応、もう一度言う。

 今日は五月の一日。

 ゴールデンウィークの中日なかびに当たる今日と明日は学校のある日だ。

 憂鬱な気持ちを引っさげながら学校への道をとぼとぼと歩いていると、

「よっ! 颯太おっはよー」

 背後から声をかけられた。

 誰なのかは振り向かなくても分かるけど、後で「無視したー」などと難癖をつけられても困るので、きちんと振り向いておく。

「やぁ。芹沢せりざわさん。ゴーデンウィーク中の登校だって言うのに元気だね」

「そりゃあ元気よ。あたし学校好きだしぃ? て言うか、あたしから元気を取ったら何も残らない的な?」

「前半は「疑わしさ」しかないけど、後半部分は概ね同意するよ」

「颯太ったら、超失礼!」

 この、僕とほとんど同じ理由で同じ高校に通っている女子生徒は『芹沢結衣せりざわゆい』さん。

 彼女とは小学生の頃からずっと同じクラスだったという縁があって、それなりに仲良くさせてもらっている。

 つい二月ふたつきほど前に二年生に進級したタイミングでクラス替えがあったのだけど、またしても、まるで示し合わせたかのように同じクラスになった。

 登下校に一緒になることも多く、大抵の場合は芹沢さんの方から声をかけてくる。

 ちなみにこの時期の彼女はいつもマスクをつけている。花粉症に悩ませれている一人というわけだ。

「まぁ、だるいのはよく分かるけどさ、颯太は放課後になればすぐ帰れるじゃんか。あたしなんか、委員会の集まりだよ? そして花粉症だよ? マジ最悪だよぅ」

「今の流れに花粉症はまったく関係ないと思うんだけど…」

「あるよー。花粉症で辛い中、こうして健気に登校してるんだよ? あたし超偉いじゃん!」

「はあ…」

 愉快な芹沢クラスメイトさんのお陰で憂鬱な気分も少しは晴れて、朝日が眩しい通学路を二人は行くのだった。


         2

 なんだかんだで一日目はアッという間に終わった。

 春の陽気に包まれた教室での授業に身が入ったかどうかは、あえて言うまい。

 まあ、休み時間は満喫したということで。

 ごく平凡な生活を送っている、ごくごく普通の高校生である僕の一日に特筆するような出来事が起きるはずもなく、何事もなく家路に就いた。

 ―――はずだったのだけど…。

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