出会い
鶯の響き渡る鳴き声や僕らを優しく照らす太陽の光。春の訪れを感じる今日この頃、僕はある公園に足を運んでいた。
少し急な坂と階段を何段か上る。
すると、吸い込まれそうなほどに広がる空、碧碧とした芝生を目前にすがすがしさと、とてつもない解放感を覚える。穏やかに吹くそよ風が僕を通り抜けたら、なおいっそうである。
この公園は広々とした芝生に点々と木が植えてあり、ブランコやすべり台など定番の遊具が設置されている。
僕、青木ヒュウガは幼い頃からこの公園をよく訪れている。今も一人で足を運んでは一番奥にある一本の桜の木の下で読書をする、ということをほぼ毎日のようにしている。
そう言っても夕方に一時間ほどいるだけだけど。
今日も早速公園に入り、いつもの桜の木に向かって歩いていった。遊具の前を颯爽と通り抜け、桜の木の陰に入ると、半ば前のめりになって幹をつかんだ。
いつも本を読んでばかりいる僕にとっては、この場所に来るまでに相当な体力を消費してしまう。やっぱり体を動かすことをすべきかなぁ……。
ふと顔を上げると、ほんのりピンクの桜の花が視界に広がった。見た感じ、五分咲きっぽい。「まだまだこれから」と言うかのように、木が風でユサユサと揺れる。
「わぁ……桜、綺麗だなぁ……!」
僕は思わず、心の声を口にしてしまった。慌てて下を向く。
誰もいないのに喋るとか……! 独り言って変な目で見られるから気をつけてたのに……! やらかした……。
光の速さで僕が落ち込んだのと同時に「やっぱり綺麗だよね!」という声が上から聞こえてきた。
僕は「ん?」と呟きながら顔を上げた。
その瞬間、全身に衝撃が走った。僕の頭から少し高い枝の上から顔を出している女の子がいたのだ。
彼女は、僕と目が合うとスルスルと木から降りた。
大和撫子を思わせるような黒髪パッツンのロングヘアに、白のワンピースとスニーカー。顔を見るかぎり日本人っぽい。年も近そうだった。
どういう展開なんだろうか……。
SF小説や普通の小説にもなかなかない展開すぎて、反応に困る。
僕が戸惑っているのがモロ顔に出ていたせいか、彼女はハッとした顔をする。「驚かせちゃってごめんね!」と、彼女に申し訳なさそうに言われた。
「あぁ……いや、その……全然大丈夫です……」
「なら良かった! ……わ、私、高い所好きだから、よく上の方まで登るの! 今、とっても風が気持ちよくって!! 君も登らない?」
なんか恥ずかしくて、彼女を見ることができなかった。僕は勇気を出して見てみると、彼女はキラキラと目を輝かせていた。
「あ……でも僕、高い所ダメなんでやめときます……」
「あらーそうなのー? 眺めもいいのになぁー」
彼女に少し残念そうに言われた。くるくる変わる表情に明るい声。まさに、クラスにいたら中心になるタイプだ。
「まぁ、座って座って! 運動したあとは休憩するものでしょ? 」
いつのまにか木の幹にもたれて座っていた彼女は、左手で木の根元を叩いた。僕は言われるがままに彼女の左に座る。
「ところで、君は何しにここに来たの? 読書? 」
「…………ッ! そ、そうだけど……」
「おっ? 半分勘だったけどまさかの図星?? やったねー!」
彼女から、右手のピースサインが僕の前に突き出された。
……なんでわかるんだろう。顔に出てるのか? もし、そうだとしたも、会って間もない僕のことなんて、知らないはずなのに……。
「毎日来てるの? それともたまに来るくらい? 」
「あ、えと……毎日来てるよ。夕方に少し……だけどね」
「そっかそっかー。それはすごいことだねぇ」
……すごいことなのか?
僕はよくわからなかった。ふと彼女の方を見てみると、何やら難しい顔をしていた。話しかけられる様子ではなかったので、僕はしばらくボーッとしていることにした。
「……ないよね。だいぶたってるし」
彼女の声が唐突に聞こえた。かなり小さかったから少ししか聞こえなかった。
ない? だいぶ立ってる? え? ずっと座っているのに?
僕がそんなよくわからないことを考えていると、突然、彼女は立ち上がった。僕は反射的に彼女を見ると自然と目が合った。
「ごめん、もうそろそろ行かなくちゃ! またね! 」
彼女はニコッと笑うと、僕に背を向け走り出した。
「え、あ、ん……?」という言葉にならない言葉を口にしながら時計に目を移した。よく見ると、この公園に来てから一時間が経っていた。
もうそろそろ帰らないとな。
そう思いながら彼女のいた方を見ると、もう彼女の姿は見えなくなっていた。僕は少し、変な感じがした。
……きっと気のせいだろう。時間の流れが早く感じるとかその程度だ。
僕は立ち上がり、公園を後にした。
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