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ちっさいおじさんに出逢うと、本当に幸せになれるのか?  作者: ハナミヅキ
第4章 黄色い春
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「エェーンッ、えっ!」


優衣は、自分の泣く声で目が覚めた。


「今のも、夢!? まじリアルだよーっ」


瞳からは涙がこぼれ、流れる涙で枕もびしょ濡れになっている。

夢から覚めても、悲しみが消えない。

布団に顔を埋め、もう感情のまま泣き続ける……。

夢が徐々に離れていくと、優衣は少しずつ落ち着きを取り戻した。

暗がりの中、手探りで携帯を探し時間を確認する。


「5時15分かぁ」


いつもならまだ眠れると喜ぶところだが、とても穏やかな眠りには就けそうにない。どんよりとした重い頭で起き上がり、おじさんのところに向かう。


うっすらと陽が差し込んでいるサンルーム。おじさんは、ふかふかのベッドでスヤスヤと眠っている。


「もーっ、呑気なおじさんだなぁ」

独り言をブツブツと呟きながら、階段を下りていく。


「はぁ〜っ、戦争なんてまじ最悪だし……。目覚め悪っ」


キッチンの方からは、現実的な物音が聞こえてくる。母親が、お弁当作りに掛かっているようだ。

匂いに誘われるかのように入っていく……。


「おはよ」


「あら、優衣! どうしたの?」


「なんか、変な夢見ちゃって……」


「変な夢?」


「私の夫が戦死しちゃう夢」


「優衣の夫が戦死? プッ、嫌だぁ、彼氏も居ないのに」


(グサッ!)


忙しそうに卵焼きを巻きながら、思いっきり笑う母親。微妙に傷付きながら、優衣はウィンナーをつまみ食いする。


「でも、それって、優衣の前世かもね」


「まさかぁ」


「ところで、優衣のご主人って誰だったの?」


「それは……」


「わかった! 大谷君でしょ」


(図星ーーっ!???)


「な、何言ってんの! そんな訳ないじゃん」


「あら、残念。運命感じてたんだけど」


「もーっ、変なこと言わないでよ」


「まぁ、今日から3年生。全力で頑張って下さい!」


母親が、優衣をまっすぐに見る。


「そうだ。クラス替えどうなったかなぁ〜」


プレッシャーを交わすようにキッチンを出ていき、

重い夢を引きずったまま、

優衣はかなり早めに家を出る。


「優衣ーっ!」


校舎に入ると、朝練を終えた瑞希が走り寄ってきた。


「優衣っ、奇跡だよ! またまた同じクラス」


「嘘でしょ⁉︎」


「信じられないけど、私達って相当強い縁で結ばれてるみたい」


「やった、やったぁ」


抱き合って喜ぶ2人。


「そうそう、それからね。すごーく残念なんだけど、大谷とは離れちゃったよ」


瑞希が、優衣の顔をまじまじと見る。


「あっ、そうなんだぁ」


動揺を隠しながら、あっさりと反応してみせる。


「しかも、沙也香と同じA組! あっ、深沢は私達と同じB組なんだけどね」


「へぇ〜、よかったじゃん!」


ハハッと笑いながら、多少パニックになる優衣。


「無理しちゃって……、はいっ」


呆れた顔で、クラス名簿のプリントを手渡す瑞希。優衣も、一応目を通してみる。


(本当だ。大谷と離れちゃってる……)


「それにしても、A組の女子って厳つい(いかつい)メンバー揃ってない?」


改めてプリントを見直していた瑞希が、顔をしかめた。


「確かに……。瑞希でも、引いちゃう人とか居るんだぁ」


「当たり前でしょ! 相当の悪だし」


「へぇ〜っ……」


気持ちの整理もつかないまま、ホームルームが始まる。

新しい教室、よそよそしいクラスメート。優衣はしみじみと、不自然なその風景を眺めてみた……。

大谷が居ない教室は、何かがいっぱい足りない。


昼休み、教室前の廊下で大谷とすれ違った。


「よっ、早川優衣!」


「あっ、大谷」


売店に向かう生徒達が、2人を横切っていく。


「もしかして、またB組?」


「ま、まぁね。大谷はAでしょ」


「おーっ。早川優衣が居ない教室は、静かで平和だぜ」


(相変わらず無神経なヤツ! まじでムカつくっ)


「こっちこそ! 頭の良さそうな人が揃ってるからね〜。あっ、それから、進路が決まるまではバイトにも行かないから、しばらくは大谷の顔を見ない穏やかな日が続くわぁ〜」


「まじで!」


空元気で強がる優衣を、真剣な眼差しで見つめる大谷。

大谷に真っすぐ見つめられると、優衣は悲しくなる……。夢の中の大谷と重なり、愛しくてたまらなくなる……。隠さなければならないこの想いで、胸が苦しくなる……。


「そっか……」


珍しく、淋しそうに呟く大谷。


(何、この反応?)


意外な展開に、戸惑う優衣。

見ないようにしてきた自分の気持ちが、いっぱいになって溢れてくる。

感情の流れを止めていたプライドが、呆気なく崩れていく……。


(私、やっぱり、大谷のことが好き……)


突然、まわりがざわめき始め、A組の教室前の廊下に人が集まってきた。


「えっ、なーに?」


感傷から覚め、背伸びをしながらその方向を覗き込む優衣。


「あいつら、美山のことが気に入らないらしいぜ」


余裕で眺めながら、大谷が説明する。

やがて優衣の視界にも、その光景がハッキリと見えてきた。瑞希も引いていたあのA組の厳つい女子5〜6人が、沙也香1人を囲んでいる。


(えっ! 沙也香、いじめられてんの?)


優衣がその状況に気付いた瞬間、傍に居た大谷は、その中心になっている女に向かって歩きだした。


「くだらないことしてんじゃねーよ!」


そう言って、不機嫌そうに教室に戻っていく。

大谷の勢いに圧倒された女達は、沙也香に捨て台詞を浴びせながら、あっという間に散っていった。


沙也香が目の前でいじめられているというのに、何もできなかった自分への苛立ちからか……。

大谷にしっかりと守られている沙也香への嫉妬からなのか……。

優衣の心は、もうどうしようもないくらいに重苦しくなっていた。

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