05
学校を学園に変更
今年の魔力測定検査をする場所はルーレンス侯爵家に決まった。
はぁルーレンス侯爵家か面倒いな。
距離もさる事ながら一番の問題は祖父母のアンブロス公爵家のライバル関係にある家だ。
まあライバル関係といえどただ単に相手方のルーレンス侯爵が祖父のアンブロス公爵に学園時代に祖父に散々イタズラなどをされ揶揄われたそうだ。
それを未だに根に持ち事あるごとに勝負を挑む様になったそうな。
はぁ…本当にカルロ爺様は面倒な事をしてくれる。
そして俺と同い年の孫が優秀なそうで優劣を付けたいのだろう。
何故俺がそんな面倒な事に巻き込まれなければならないのか。
憂鬱な気持ちで窓の外を眺める。
俺の気持ちを表している様に空は曇天だ。
黄昏ていると妹のニーナが部屋にやって来た。
「兄さま。何しているの?」
「うん?ただ単に外を眺めていただけだよ」
笑顔で答える。
「暇でしたら絵本をまた読んで下さいませゆか?」
少し噛んだのが恥ずかしいのか頬を赤らめる。
そんなニーナの頭に手を置き軽く撫でると気持ち良さそうに目を細める。
「いいよ。何を読んで欲しいのかな?」
「えっとね…これです!」
差し出して来た本のタイトルは【伝説の大賢者と勇者達】だ。
◆◇◆
この世界には勇者召喚や聖剣に認められ勇者となる者がいるらしい。
そして大賢者とは伝説にいるとされる魔法使いの最上位の存在だ。
大賢者
↓
賢者
↓
大魔導師
↓
魔導師
↓
魔術師
↓
上級魔法師
↓
中級魔法師
↓
下級魔法師
↓
魔法師見習い
とこんな風に9段階に位が分かれている。
勿論大賢者が最上位だ。
現在この大陸で確認されている魔法使いの最上位は大魔導師でその数は僅か9名しか存在しない。
大賢者はお伽話の世界ではないかと言われるぐらい過去に存在したとは言われている。
そして賢者は今から約200年前に亡くなったのが最後にその位に届いた者はいない。
何故200年前にいたかと言うと記録と当時生きていた人物が実在するからだ。
内包魔力が多いと寿命が延びる事が確認されている。
そして現在の大魔導師の1人が213歳なのでその為だ。
他にも長命な種族がいる為に賢者の存在は確認されているが最上位の大賢者はそんな長命な種族達も見た事も無いとのことだ。
一応古い文献に大賢者は実在したとあるが、それはいかんせん古すぎて文献が保存魔法がかかっていたがそれでも多少劣化していた為に、辛うじて大賢者の文字が読めた為に半信半疑だ。
そして我が国シュリンガル王国にも大魔導師が1人在籍している。
大魔導師にもなると国に縛られる事はない存在の為に放浪したりする者もいる為に全員の所在は判明はしていない。
そして我が国の大魔導師はエルフ族でシュリンガル王立学園の創設者の1人でもある。
現在はシュリンガル王立学園の理事長を務めてはいるが実質は学園長が運営しており名を貸している状態だ。
■■■
「本当にニーナは【大賢者と勇者達】の物語が好きだね」
「うん、好き!」
その笑顔がとても微笑ましくついまた頭を撫でてしまう。
普段は気怠いベルホルトだがあの部屋爆破事件以降家族との仲は急速に仲良くなり大事に思う様になった。
前世のベルホルトは家族との仲は冷え切っていた。なのでこんな気持ちを抱く事になるとは思いもしなかったが、案外良いものだなと最近は思っている。
「じゃあ読むな。昔々今から遠い昔」
昔多いよなぁ
「この大陸は滅亡の危機に陥っていました。魔族と呼ばれる凶悪な種族の王が次々と国を滅ぼしそこに住む住人を奴隷にしていきました。
各国は連合を組み大規模な会戦に臨みましたが足並みが揃わずただの烏合な集に過ぎない連合軍は一騎当千の魔族達に敗れました。
そこで1人の老人に知恵を貸してもらいにいきました。
この老人こそ大賢者カシコーイです。
そしてカシコーイは勇者召喚の事を話その方法を有料で教えました」
何かこれ所々ツッコミ要素があるよな。
「各国の王は挙って大賢者に対価を支払いその方法を教えて貰いました。
そして各々異世界から勇者を呼び寄せ勇者隊を結成しました。
大賢者によると才能はあるが召喚された当初はあまり強くないとの事でした。
これには聞いた各国の王達が文句を言いましたが大賢者が鉄拳制裁すると黙りました。
むしろ怯えて従順になりました。
大賢者によると鍛えれば鍛えた分以上に強くなるとの事なので各国は一年間鍛える事にしてその間は、何とか自分達で魔王軍の猛攻を防ぐ事にしました。
魔族は強力な種族ですが数が少ないので当初は問題なく防げていましたが彼らはこちらが勇者召喚をしたみたいに異世界からモンスターを解き放ち連合軍に嗾しかけました。
モンスターは数も多く強力な個体もおり苦戦しましたが何とか勇者達の育成が間に合いました。
その後は勇者隊の度重なる活躍を持って遂に魔王軍を追い詰めました。
ですが流石の勇者隊も魔王には勝てませんでした。
そこで各国の王達はまたもや大賢者に助力を求めました。
大賢者は莫大な対価と引き換えにその依頼を快く引き受け魔王諸共勇者隊を超級魔法で吹き飛ばしました。
これによって出来た穴に地下水が流れ込み今のカシコーイ湖畔が出来ました」
はぁ滅茶苦茶だな。この話
「吹き飛ばされた勇者隊は辛うじて生きており回復すると大賢者に復讐を敢行しましたが、返り討ちにあい隷属魔法で召使いにされました。
もう一方の魔王は大賢者に恐怖し大賢者が寿命で亡くなるまで何処かに引き篭もりそれ以来姿を見た者は居ないので死んだのではと言われています。
大賢者は勇者隊や各国の王達を扱き使い悠々自適に暮らしました。
こうして大陸の危機は防げたのです。
その後大賢者に仕えた勇者隊の面々は大賢者の依頼にクリアした者は元の世界に返して貰いました。
最後まで反抗的な勇者は大賢者の創り出す新たな魔法の的にされながら往生しましたとさ。
各国の王達は月に一度大賢者に貢物をする事を条件に国の存続を許可されました。
数十年が経ち代替わりした王が大賢者に逆らいその国は地図から消えました。
こうして大賢者のお陰で大陸の争いは無くなり人々は平和に暮らしました。
ですが大賢者が亡くなると各国は再び争い始め現在に至るまで統一国は出来ず。争いの日々は続きました。
その後も魔王は居ませんが魔族の襲来が度々ある度に勇者が召喚されて対処に当たりました。
その後大賢者は現れませんでしたがそれに次ぐ賢者が現れ優秀な魔法使いを弟子に取り数々の魔法を無料で伝授していき現在の便利な魔法の数々がそれだと言われております。
再び魔王の襲来はあるのでしょうか?
その時に再び大賢者様は現れてくれるのでしょうか?
自称大賢者一のファン。
ウサン・ファン・クーサイ著」
ふぅ何これ?何方かと言うと魔王より大賢者の方が横暴じゃない?
いや魔王の方が沢山の国を滅ぼしているから魔王の方が悪いのか?
「ありがとう。兄さま」
ニーナに礼を言われ頭を撫でやる。
コンコン
「ん?何だ?」
この俺の幸せな時間を邪魔する奴は
「失礼します」
ドアを開けて入ってきたのは今年10歳の設定のラミエルだ。
「お食事の準備が出来ましたので御迎えに上がりました」
言われて窓の外を見ると太陽が真上に登っていた。
今日は休息日で午前の勉強と午後の訓練はないのでノンビリしていたが少しノンビリし過ぎたかな。
「わかった。ニーナ行こうか」
「はい、兄さま」
ニーナと手を繋ぎ食堂に向かう。
後ろをラミエルとニーナの侍従が付き従う。
食堂には既に父以外が揃っていた。
「母様、父様が居られないですが?」
「ディルクの部下が来て急ぎの用が入ったらしくて二、三日帰ってこれないそうよ」
本当に困ったわね、と頰を膨らまして言うアンネリース。
本当に仲がよろしいこと事で。
「ベル、この後隠れんぼでもしない?」
姉のクレアが遊びの提案をして来たので別にこの後する事がないので了承する。
「わかった。参加する」
「わ、私も参加するね」
グレースも参加するようだ。
「私も!私も参加する!」
ニーナも元気に手を上げ意思表示する。
「よし、全員参加ね!」
他には誰が参加するか聞くとホランとブラン姉弟とトットル、サリ、ハンクの5人が参加するそうだ。
彼らは街で出会った子供達で平民だが仲良くしている。
まあ、うちの家族に平民と蔑む人は居ないけどな
まあ、中にはそんな貴族も居るらしいがまだ会った事もないし会いたいとも思わない。
だって面倒くさいもの。
そうこうして居るうちに昼食が運ばれてくる。
今日はトマトソースパスタの様だ。
このトマトソースとモチモチのパスタの相性は抜群で俺の好物の1つだ。
何でもうちの料理長は元宮廷副料理長であるらしい。
何故そんな人材が……と一時期思ったがまあ、美味しい料理が食べられるなら何でも良いやと思い気にしなくなった。
何かあればその時に考えれば良いし。
♢
その後トマトソースパスタを美味しく頂き中庭に出る。
すると既にそこには5人の姿が会った。
「やあ、みんなもう来てたんだ?」
「うん、今さっき来た所」
ボランが答えてくれた。
「今3人は運動着に着替えて居るから待っててね」
3人はスカートを履いて居たので動きやすいズボンに今履き替えて居る。
•••
3人を待っている間6人の近況などを聞いていた。
ホランとブランの2人は父の仕事の手伝いをしてつい最近も売り上げに貢献した様だ。
2人の父は商人でこの街でも有力な商会の会頭の1人だ。
トットルの父は鍛治師でこの街一番の名工だ。
トットルもそんな父に憧れ将来は跡を継ぐのが夢らしい。
サリの両親は街で飲食店を経営しておりサリも時々給仕の手伝いをしている。
最後のハンクの両親は格闘家で両方ともチャンピオンである。
その影響かハンクも7歳にしては大きく逞しい。
そんな6人と暫く談笑していると着替え終わったクレア達がやって来た。
「待たせたわね!さぁ始めましょう!最初は誰が鬼をする?」
「なら、僕が最初の鬼役をするよ」
名乗り出たのはトットルだ。
「わかったわ!じゃあ60秒目を瞑って数えてね」
皆思い思いの場所に隠れる。
俺は寝るのに良さそうな木を見つけ登り枝を組み合わせ下には木の葉で、俺の姿を隠す。
その後出来た簡易のベットに横になりゆったりと寛ぐ。
「18.17……………3.2.1.よし行くよ!」
トットルがどうやら数え終わった様だ。
トットルは早速茂みの中を探し始めた。
間も無くハンスが見つかった。
身体が他のものより大きいためか背中が茂みから見えていたのですぐに見つかった。
「ハンス見つけた!」
「ふぅ見つかったか」
見つかったハンスはそんなに残念そうではない。
自分の体格からして一番最初に見つかるかと思っていたのだ。
「じゃあ、待っといて。すぐに他のみんなもう見つけるからさ」
「わかった」
意気揚々とトットルは他の者達を探し始めた。
サリは木の後ろに、ホランは椅子の下に、
グレースは果樹園の中でそれぞれ発見された。
ニーナは体の小ささを活かして狭い軒下に、ブランは木の茂みに、クレアは同じ場所にジッとしとくのが耐えられなかったのか、違う場所へ移動中に見つかった。
「残るはベル様のみか」
ここは子供でもちゃんと親達が様付けしなさいと言われ子供たちも理解しているので愛称で呼んでも必ず様をつける。
暫く探しても見つからず諦めかけた時に木の上から規則正しい寝息が聞こえて来たので、上に登るとベルホルトが寝ていた。
「ベル様、ベル様。起きて!見つけたよ」
トットルに揺すられ起きたベルは
「……ん?…見つかったか………何番目?」
「ベル様は最後だよ」
2人は木を降りた。
「うーん、肩が凝ったな。やっぱり木の上で寝る物じゃないな」
「当たり前よ!ベル!」
前方から姉クレアが少し呆れ気味にそう答えた。
♦︎
その後代わる代わる鬼役を交代しながら夕方近くまで9人で遊んだ。
母アンネリースの許可を得て夕食に5人を誘い。
5人も快く了承しその晩の夕食は大層賑やかだった。
5人は家の使用人が送り4人は浴槽で今日の疲れを癒す。
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「ふぅ……良い湯だなぁ」
「ベルなんか年寄りくさい言い方ね」
「そうかな?」
「ニーナは別にそうは思いませよ。兄さま」
「わ、私も別に気にしてないよ」
「だってさ、クレア姉」
「もう、私に味方はいないわけ!」
「まあ、良いわ。それにしても父様どんな用事なのかしらね?」
「さぁ、でも呼び出されるくらいだから何か重要な事じゃない?」
「そりゃそうだけど…」
「クレア姉さま。気落ちしないで」
「だ、大丈夫よ。ありがとうニーナ」
クレアはニーナの頭を撫でる。
◆
その後4人はメイドに身体を洗われ浴室から出る。
「じゃあ、おやすみ」
「うん、おやすみ」
「ええ、おやすみ」
「はぁーい、おやすみなさい」
4人はそれぞれの部屋に向かう。
その後を侍従が付き添う。
部屋に入りベルホルトはラミエルに「何か、重大な事があったのか?」
「多分昨今のモンスターの増加に合わせての事だと思いますが、詳しいことは依然判明しておりません」
ラミエルはまだ天界に帰れてない。
あの女神の事だ。あと数年はいや、下手したら数十年は旅行で戻って来ないだろう。
一応女神の後を熾天使達が担っているが忙しくとてもラミエルに構ってられなくて天界の門を開ける暇がない。
そのため未だにこうしてベルホルトの側仕えをしている。
だが天使だけありそのスペックは高いので何かと重用している。
本人も求められたら断れない性なのかよく働いてくれる。
もともと天使達は神達の小間使いの為に生み出された為に家事スキルは万能だ。
その為今もこうしてせっせと甲斐甲斐しくベルホルトを寝巻きに着替えさせている。
ミーネも最近はラミエルに任せる仕事量を増やしている。
着替えが終わりラミエルは一礼して部屋を出て行く。
「ふぅ、そろそろ寝るかな」
こうして1日は終わった。




