圧倒的、力
18話です
どうする、相手は二体、こっちは三人、単純に人数で考えればこっちの方が有利だが……。
フラムは危険だ。あいつは戦い慣れしてないし、最悪死んでしまうかもしれない。そんな危険なことはさせられない。悪く思うな、フラム。
《草のバベル》
フラムの周りにバベルの塔が創られていく。
以前のリーフパルテノンの強化版だ、簡単に壊されたりはしないだろう。
「な、なにこれ!?ねぇ祐介!出してよ!僕が戦わなくちゃいけないんだ!お願いだよ!」
フラムはガタガタと震えながらもバベルの塔を叩きながら言う。だが出すわけにはいかない。
「でたかったら自分で出ろ!それが出来ないならそのままじっとしてろ!」
フラムはうつむく。マーティが近寄る。
「なかなか厳しいんじゃないか?祐介。」
「それはどっちの意味でだ?フラムのことか?それとも敵のことか?」
「どっちもだ」
「フラムのことならそれでいい、いくら俺が嫌われようと、あいつが生きていてくれたらそれで。
それにあんな奴らよりも強い奴と俺たちは戦っただろう?」
「成長したな、祐介。最初に会った時とは大違いだ。」
そんな話をしている間にも、フギンとムニンは戦闘態勢に入っていた。こちらも剣を握りしめる。
「いくぞ!」
俺はフギン、マーティはムニンと戦う。まずはフギンを身動き出来ないようにし、ムニンと戦う作戦だ。
「鈍い、そんな速さで私を捕まえられると思ったか?」
フギンは鳥の見かけ通りに、かなりの高スピードで動き回る。が、
「俺はそんな次元じゃない奴と戦ってきたんだよ。そいつに比べたらお前は「止まってる」のと同じようなもんだぜ!」
精神を集中させる。目で見るな。視覚に頼るな。己の感覚のみを信じろ。
「そこだぁ!」
俺は空間を切る。そしてそこにはフギンが現れた。
「なぜだ、なぜわかった!?」
「甘いんだよ、何もかもが」
最初にフギンに気づかれないようにお茶っ葉をフギンの周りに纏わりつくのをイメージしておいた。人間の五感というものは何か一つを遮断すると他の感覚が研ぎ澄まされる。だから俺は目を瞑り、嗅覚を研ぎ澄ませた。それに、俺はずっとこのお茶っ葉と旅をしてきた。わからないはずがない。
「同様してんのが丸分かりだぜ!くらえ、抹茶の槍!」
風を切り裂いて俺の抹茶の槍はフギンを貫く。
「ぐ……くそっ!」
フギンは地に落ちる。チャンスは今だ。
「リーフパルテノン!!!」
フギンの周りにリーフパルテノンが建てられた
よし、一先ず一体はなんとかなった。
マーティの方を見る。マーティも自分の体でムニンの動きを止めていた。
「ナイスタイミングだ!マーティ、もう少し我慢してろよ! リーフパルテノン!!!」
ムニンの周りにもリーフパルテノンが創られていく。
「やばい、吐きそうだ」
そういってマーティは柱の隙間からするりと抜けだす。器用な奴だ。
「フギン」 「なに?」 「こいつら強い」 「そうだね」 「今こそ」 「「一つに」」
フギンとムニンの体が光りだしたかと思うと、二体は煙のようになりリーフパルテノンから抜け、その煙同士が混ぜ合わさる。
「バカな、そんなことがあっていいのか?」
煙が晴れたかと思うとそこには一体の鳥の魔物がいた。
「私には名前もない、記憶もない、感情もない、あるのは、明確な、殺意。お前らを、殺せという、殺意。」
全身が震える。こいつは危険だ。
「マーティ、二人がかりでいくぞ!」
「任された!!」
ーーーーーーーーーーーーーー
目の前には、信じられない光景が広がっていた。
立っているのは、大きな鳥の魔物。
倒れているのは、祐介とマーティ。
どうしてこうなった?誰のせいだ?僕のせい?僕の力が無いせい?なぜ僕に力がない?僕に力が無いのはだれのせい?僕のせい?僕が生まれた理由は?何のためにここにいる?僕は何をしにこの世界に生まれた?僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が
「ああああああああああああああああああ!!!」
バベルの塔が吹き飛ばされる。
「な、なんだ……!?何があった……」
俺は顔を起こす。そこに立っていたのはフラム。
だがその力はこの場にいる者の中で一番だろう。
「ありえん、このパワーは!?」
「ふざけるな!私が、私が一番強いのだああああああ!!!」
そういって名も無き鳥はフラムに飛びかかる。が、
《緑の羽》
フラムの体から緑色の綺麗な羽が生える。
「ここにいる精霊たちよ、僕に力を……」
フラムがそう言うと、洞窟に浮かんでいた光るフワフワと浮かんでいた物がフラムの体に入り込む。
より一層フラムのパワーが増す。
「くそおおおおおおおおおおおおおお!!!」
「邪魔だ」
信じられない光景が目に入る。
立っていたのはフラム
倒れているのは、大きな鳥の魔物。
何が起きたのかはわからなかったが、この状況を見るにフラムが倒したのだろう。
フラムから力が抜け、崩れ落ちるところを受け止める。
「大丈夫か!?フラム!」
「うん……ってなんで鳥の魔物が倒れてるの!?」
「覚えてないのか?お前が倒したんだよ」
「ぼ、僕が……?」
「あぁ、さぁ試練の証を取ってこい。」
「う、うん!」
多少動揺しながらもフラムは嬉しそうに試練の証を取ってきた。
「さぁ、ここから出るぞ。」
そうして無事試練の証を手に入れた俺たちは、洞窟を脱出した。この時の俺たちは幸せだっただろう。
あの光景を見るまでは
19話で会いましょう