制した者は
喉が痛いのでのど飴なめてます。
美味しい
14話です
初めての感覚だった。
俺の抹茶の槍はクロノスの腹を深く突き刺していた。
「へえ……やるじゃん……」
クロノスの口から血が溢れる。それと同時に俺の体から力が抜けていった。人を刺すなんて今までの人生に一度もなかった。その事実が俺を支配していた。
「なんか、戸惑ってるみたいだけど」
クロノスは抹茶の槍を引き抜くと
「僕も一応魔族だから、こんな程度じゃ死なないんだよね。」
だめだ、こいつには勝てない。俺の本能がそう告げた。
「何ぼさっとしてんのよ!明らかに相手は深手を負っているのよ!今攻めないでいつ攻めるの!」
沙月は俺の頭を叩き、鼓舞する。これが彼女なりの親切なんだろう。
「あぁ、そうだな。」
仲間の様子を見ると、グリンは血が。
おそらく沙月に直してもらった傷が開いたのだろう。
マーティは先ほどの水の雪崩で消耗しきっていた。
「グリン、マーティ、休んでいてくれ。俺と沙月がクロノスを倒す。」
「はぁ?ふざけんじゃねぇぞ!祐介!俺はまだやれんだよ」
「私もだ、祐介。私はまだ戦える。」
「黙れ!!」
グリンとマーティは口から出そうになった言葉を飲み込む。
「悪い、でもお前らはもう十分頑張った。俺たちに任せてくれないか」
「……チッ!」
「……わかった」
「ねぇあんた、勝てる自信あんの?」
沙月がボソッと耳打ちする。
「沙月の口からそれがでるなんて驚いたな、びびってんの?」
「なっ!?あんたの方こそびびってんじゃないの!私はびびってなんかないから!」
その会話が俺たちの緊張をほどいてくれた。
やっぱり共に戦う人がいるというのは心強い。
「ねぇ、そろそろいかせてもらうよ」
クロノスは剣を抜く
「いくぞ、沙月」
《深緑の剣》
「さぁ始めようか……あぁそうだ。僕はもう時間の支配者は使えない、文字通り真剣勝負だ」
まず動いたのは俺とクロノス。2人がつばぜり合いになる。それを制したのはクロノスだった。
「やべっ……!!」
クロノスが剣を振り下ろす。しかしその剣は俺の体には当たらない。
「あんた、私がいなかったら死んでたわよ!」
「沙月がいたからやったんだよ……、最初に出会ったときみたいにね」
やはりクロノスには単純にぶつかりあっても勝てそうにない。奇をてらうしかないのだ。
「さて、どうすっかな……」
「まだだろう?君たちの力はこんなものではないはずだ。もっと見せておくれよ、その力を、この僕に」
クロノスの威圧感は最初に出会ったときよりも、遥かに強いものだった。立っているだけで皮膚が裂けそうになる。
「当たり前だ!まだまだいける!沙月、深緑の剣をもう一つ創る。受けとれ。」
「えぇ!?二つあってもどっちかしか使えないわよ!?」
「いいんだ、それだけでクロノスにプレッシャーを与えられる。沙月は守りに専念してもらっていい。」
「わかったわ!」
またクロノスと剣の攻め合いが始まる。ここまで戦えるのは沙月がいたからだ。俺だけだったら等に死んでいただろう
「やるね、君たち。いくら僕が深手を負ってるからってここまで戦えるとは思わなかったよ」
「はっ!余裕がいつまで続くかな!」
《茶の雹》
容赦ない霰がクロノスの頭上に降り注ぐ、が剣で全てをさばく。
「今がチャンスだ!いくそ、沙月!」
「任せなさい!」
クロノスの懐にいき剣で一太刀浴びせる。確かな感触、
しかし
「油断したね」
クロノスは霰をさばくと沙月に向かって剣を振り下ろす。
「逃げろ!」
「大丈夫、私にはフライパンが、」
「僕がそこまで頭が悪そうに見えるかい?」
クロノスはフライパンを沙月の手から剣で巻き上げる。フライパンが宙に舞い、落ちた瞬間、地面には綺麗な薔薇が咲いていた。そこに倒れていたのは沙月だった。
「てめぇぇぇぇぇ!!」
「甘かったね……ガハッ!!」
クロノスが血を吐く。
「思ったより傷が深いようだ……早い所決着をつけよう。」
「てめぇは許さねぇ、絶対にだ!」
二人はまたつばぜり合いになる。
さっきと違うのはクロノスが深手を負っていること、沙月がいないことだ。
俺は負ける訳にはいかない。俺には守るべきものがいる。
「はあぁぁぁぁぁぁぉぁ!!」
小細工なんてない。純粋な勝負。そしてつばぜり合いを制したのは俺だった。
「なっ……!!」
間髪入れずに俺はクロノスを斬りつける。
そして、クロノスは地に伏した。
「てめぇは殺す。」
もう躊躇なんてない。俺の頭は殺す事だけでいっぱいだった。
「まって……私は、まだ死んでない……」
「沙月!?生きてるのか!?」
「勝手に殺すな、バカ……」
クロノスの方を見る
「僕が女の子の命を奪うことなんてするわけないだろう……?」
「そいつはグリーンパルテノンにでも閉じ込めとけばいいわよ……」
「やったな!祐介!」
「ケッ!俺がいたらもっと早く終わってたぜ!」
「…………」
クロノスを倒した安堵感によって俺は涙が出てきた。
「よかった、本当に」
本当に良かった、誰も死ぬことがなくて、俺はそれだけでよかった。
「安心しているところ悪いですが」
「!?」
空を見ると仮面をつけた男が浮いていた。
「私の名はイデス、破壊の神、魔王配下四天王の一人です。」
「なぜ君がここにいる。ここは僕の治める地だ!」
「魔王様の命令ですよ、万が一貴方が勇者に負けそうになったら貴方ごと地獄に突き落とすというね。」
「な、なに!?」
《破壊》
「この地は後数十秒で壊滅するでしょう。にげられるといいですねぇ。」
イデスは二マッと笑うと姿を消した。
のど飴なくなりました
悲しい
15話で会いましょう