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創世のクレシア  作者: 奏愛
第3章
15/17

〜久しき友との和やかな時間[2]〜


王都。

全ての中心となる場所。

ここに大陸の名はない。

王都こそが大陸であり、1つの王国であるのだ。

大陸の名が付くのは、東西に位置する2つのみ。

東大陸ーールカナルカ大陸。

西大陸ーーラースナウナ大陸。

どちらからも王都までの道程(みちのり)はさほど距離はなく、1日もあれば東西の行き来も決して不可能ではない。

それ故、この王都を含めた東西をも統べる者はたった1人。


ラルス・ヴロダイン・グランデュア国王。


彼を頂点とする世界。

それで全て賄われていた。

それで全てが取り仕切られているはずだった。

彼の1人息子、第一王位継承者が行方不明となるまではーー



「……という事は、スティア様は魔法が使えるんですよねッ?」

「え、ええまぁ……そういう事になるわね」

漆黒の瞳をキラキラと輝かせながら身を乗り出し、ほんの数センチの距離まで近付くリリィに対して、

(な、何?なになに……この子は?)

思わずスティアはたじろぐ。

「凄いです!ソンケーですッ!」

1人テンションが上がるリリィ。

忘れているようだが、今は宵時。

普通の人なら既に夢の中にいる時間だ。

「あたしの周りに魔法使える人ってなかなかいなくて……だから凄い新鮮で!!!」

「そ、そう……」

もはや顔の引きつりさえ、眠気に勝っていた。

「でもリリィの占いだって、魔法みたいなもんだろ?」

と、ジェイドが言う。

「いえいえ!占いと魔法じゃあ根本的に違うんですよー」

「へぇ、そうなんだ」

「そうですよ!」

こほんと1つ咳払いをすると、リリィはおもむろに立ち上がった。

「簡単に説明すると、占いはその人の未来の出来事や運命を予知したり予言したりする、いわば潜在能力みたいなもので……魔法は自らの魔力や精神を以って、大地やモノに干渉したり精霊の力を借りたりする自発的能力ッ」

手を腰に当て、反対の手の指を立てて説明する姿は、彼女の幼さからは想像も出来ない。

「つまり!占いと魔法は、ぜーんぜん違うものなんですよぉ?」

「なるほどなぁ」

納得するジェイドの隣で、スティアは1人感心していた。

「詳しいのね」

珍しく素直に言葉にする。

あくまで理論上の話なのだが、知識としてそれらを知り、理解するにはそれ相応の時間と経験を要する。

見れば10代半ばに届くかどうかの少女が、その原理の相違を言葉で示しているのだ。

スティアも、彼女自身の能力の知識を全て網羅し理解している訳ではないが、ここは感嘆の息をもらしてもおかしくはない。

「そりゃそうですよぅ」

リリィが言う。

「みんな知ってて当たり前なんですから☆」

「え……」

「スティア様って変な事おっしゃるんですねー」

「あ……」

そうだった。

そう言えばつい数刻前にも、同じような事を説明されたのを思い出す。

と同時にスティアは眉間にしわを寄せた。

ーーならば、何故?

スティアの中に一つの疑問がよぎる。

彼は何故知らなかったのか(・・・・・・・・)

「そう言えばそうよね……」

「俺もついド忘れ♪」

ちらりと目線を彼の方に向けるも、ニコニコと相変わらずの笑みを浮かべているだけ。

彼女に合わせてくれていたのか、はたまた素なのか。

「…………」

とにもかくにも、変に疑われずに済んだのだ。

(掴めない男……)

そう心の中で呟くと、彼女は小さくため息を吐いた。






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