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創世のクレシア  作者: 奏愛
第2章
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〜転機から、疑問へ〜


「良かった。ちゃんと出してもらえ――」

「これは一体どういう事?」

間髪入れずスティアは青年に問い詰めた。

手を腰に当て、ずずぃっと顔を近付ける。

「どうして貴方がここにいるのよ?」

「俺が君を解放するって約束したからね」

「ええ、聞いたわ」

溜め息を吐きながら、肩をひょいと竦める。

「それで大体何でこんなに早く釈放なわけ?」

「それは俺達が何も悪い事をしてないからだろ?」

言ってにっこりと笑う。

「それはそうかもしれないけど……」

「そこは否定しないんだな」

「当たり前じゃない」

「なるほどな」

そう言って取り出したのは、スティアの荷物……

「……………………」

の、残り。

「これ君のだろ?」

「何で貴方が私の荷物を持っているのよ?」

「さっきの軍兵に渡されたんだ」

「さっきのって……」

見回すと、つい今しがたまでいた兵士の姿が見えない。

自分の職場へと戻ったのだろうか、いつの間にいなくなっていた。

「どうりで全部ないと思ったら……」

だが、今の彼女にはそんな事どうでもいい事だった。


「……で?」

受け取った荷物を手早く元の位置へ戻すと、青年の方へ向き直った。

「聞いた話じゃ、上層部の方に直訴されたらしいじゃない」

「そうみたいだな」

「貴方、何か知ってるんじゃないの?」

「別に何も?」

「貴方が直訴した、とか?」

「まさかっ……」

微笑を浮かべ、慌てた様子で手の平を左右に振り、否定する。

「一般市民の俺が、上層部に直訴なんて出来るはずないだろ?」

「そうかしら?」

ジト目で彼を見つめたのも束の間、一つ小さな息を吐くと口を開いた。

「そうね。貴方が何かを隠してるにしても、たかが剣士の分際で、そんな大それた事が出来るはずもないわね」

「え?」

青年が疑問の声を発した。

「今、何て?」

「え……?」

「今、俺の事何て言った?」

「何てって……たかが剣士ってーー」

「どういう事だ?」

まるで独り言のように呟いた後、彼は手をあごに当て、何やら考え始めてしまった。

「…………?」

スティアは何が何だか分からず首を傾げる。

今の言葉の何が引っかかるというのだろう。

特に変な事は言ってないはずなのだが……

「ちょっと……?」

彼女の呼び掛けに、青年はハッと我に返る。

「あ、ああ……すまない」

だか彼はとりわけ取り乱すこともなく、いつもの笑みを浮かべた。

「少し戸惑っただけだ。気にしないでくれ」

「……どうしたの?」

「いや……この世界ではあり得ない事が君の口から出たもんだから、少しばかり驚いたんだ」

「だから何だっていうのよ?」

青年の言っている事の意味が分からず、先程よりわずかだが口調が強くなるスティア。

そこには軽く苛立ちも入っていた。

自分の知らないところで物事が進んでいくのを、彼女はあまり好きではなかった。

そんな彼女に押されてか、青年は意を決してゆっくりと口を開いた。


「君は……君は本当にこの世界の住人なのか?」


「…………!!?」

意外な言葉だった。

いや。

もしかしたら彼女自身、無意識の内に予想していたのかもしれない。

朱鈴の森からここに至るまでの経緯を考えれば、少なくとも……嫌でも想像くらいはしてしまうだろう。

ーーここは元居た世界ではない、と。

驚きの表情を隠せないスティアに、彼は優しく微笑んだ。

「まぁ、こんな所で立ち話もなんだから、とりあえずどこかに場所を移そうか」

言って手を差し伸べてくる青年に、スティアはただ黙って頷くしかなかった。



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