〜創造主の秘めたる想い〜
ーー幼かった頃に。
お伽話や童話の中で何度も繰り返されていた言葉を、朧げながら記憶の中から思い出す。
『異世界』
確かそんな言葉。
“そこ”はこことは全く別の世界で、つまりお伽話や童話の中の世界を指す言葉なのだと言う。
誰かが創った世界。誰かに創られた世界。
ただ子供の頃というのは、今にして考えてみればかなり純粋な発想と無垢な願いを持っていたものだ。
すなわちーー本当にそんな世界があったらいいな、と。
だが擬似世界とも言うべき世界に、生命など存在するはずがない。
まして、ありもしない作り物の世界に行きたいなどと思った時点で、十中八九【馬鹿】のレッテルを貼られるのがオチである。
そもそも『異世界』とは創造の世界。初めから存在などしていないのだから……
ーーだが、もし。
この世界とは別の、全く異なる世界ーーお伽話や童話のような『異世界』が本当に存在するとしたら?
人間も魔族も精霊もいて……自分達の住んでいる場所が、第三者の手によって創られた世界なのだという事を、誰一人として自覚する事なく、何も知らずに日々暮らしていたとしたら?
彼ら自身が、彼らの住む世界が、そしてそこに息づく全ての生命でさえも、創られた偽物であるとも知らずに生きている。
それはある意味、何よりも残酷で誰よりも哀しい運命だと言えよう。
ただもし本当にあるのだとしたら、きっと今なら複雑な気持ちになるだろう。
創られた命。
何を以って、何を想う?
だがいつしか。
長い年月が経つにつれ、幼かった頃に抱いた夢や記憶の断片は徐々に薄れていった。
『異世界』という言葉すら、もう耳にすることはなく。
そして……