表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/22

愛する姉上様8

【デパート】


僕は、デパートに着くとサービスカウンターに急いだ。


「あ、星君。ちょっと買い過ぎちゃったわ」


「どれ?」


「こちらでございます。お持ちになれますか?大丈夫でしょうか?」


「ちょっとって…」


両手に持ちきれないほど有るぞ…なんとか持てたけど…


「星君のお洋服も買ったわよ」


って、満面の笑みだけど…


「あ、まだ買いたい物が有ったわ」


へ?もう無理…これ以上持つ手は無いよ…口にくわえないと持てませんからっ。


「それ、今日必要なの?」


「そうね~また今度にするわ」


「で?車じゃないの?」


「あら、そうだった、車で来てたんだわ」


これだよ…


「じゃあ、駐車場に運んで、また買い物?」


「今度で良いわよ。今日は帰りましょう」


「了解」


「あ、少しぐらい持てるのに~」


「良い。これぐらいなら僕が持つよ」


【車】


帰り道ブラームスの第3シンフォニーがかかってる。


車を運転しながら嬉しそうだけどね。


それにしても姉上の天然ぶりには…


まあ、この程度で驚いてたらね…ハハ…


これで車を運転するんだから…コワイ。



【陽の部屋】


〈ベッドにテディベアが有る〉


僕は、姉上の部屋まで荷物を運んだ。


「有り難う。はいこれ、星君の」


「僕の…こんなに沢山?」


「見てたら、みんな欲しくなっちゃったの~」


「有り難う」


って着替えようとしてるし…


僕は、慌てて部屋を出た。


いくら姉弟でも弟の前で着替えるなよな。


いつまでも子供だと思ってるんだからなあ…


【星の部屋】


〈ベッドにテディベア〉


袋から、出してみた…


夏物のスーツとジャケットに、ワイシャツとネクタイ…靴まで有るぞ…


よくサイズわかったな…今度のリサイタルに着て行くか。


うーん…スーツより、ジャケットだな。


【レッスン室】


〈ピアノを弾く陽。曲はショパンのアンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ。静かに部屋に入る星〉


僕の一番好きな曲だ…


久しぶりに聞くな…


〈曲が終わる。余韻。振り返る陽。微笑んで〉


「好きでしょう?」


「うん。一番好き」


「留学してた時、星ちゃんに聞かせてたのよ~」


「???」


「テディベアの星ちゃん」


「あはは、熊さんに僕の名前つけてたのか」


「そうよ」


「良いなあ、いつも聞いてたんだ」


〈微笑む陽〉


いつも一緒に居られたんだね、あのテディ。



【星の部屋】


〈ベッドのテディベアを取る星〉


僕の名前をつけてピアノ聞かせてたって?


それで、お土産がこの子か…


そう言えば、小さい頃いつも一緒だった熊さんがボロボロになって、お寺に納めたんだった。


あの時は、随分泣いたっけな…


【陽の部屋】


〈テディベアを抱いて昔を思い出す陽〉


(小さい頃いつも熊さんを持っていたわね~)


【幼い頃、城咲家の庭】


〈花壇の花を見ている8才の陽〉


「お姉しゃま、どこ?お姉しゃまー」


「ここよ~」


〈熊さんの手を持って歩いて来る3才の星。熊さんを引きずっては、引っ張り上げて歩く〉


「お姉しゃま、お花見てたでしゅか?」


「お姉しゃま、じゃなくて、お姉ちゃまでしょ」


「お姉ちゃま」


「あらあら、熊さん引きずったら汚れちゃうわ」


〈サッサッと汚れを払う陽〉


【レッスン室】


「熊さんもピアノ聞くでしゅ」


「良いわよ」


〈微笑んでからピアノを弾き始める陽。曲は、ショパンの子犬のワルツ。熊さんを抱っこしてる星〉


「熊さんも、良い子にしてるんでしゅよ」


【現在、陽の部屋】


「フフフ…大きくなったわね~」


【キッチン】


〈日曜日の朝〉


何だか良い匂いがするぞ。


「星く〜ん。クロワッサンが焼けたわよ〜」


「美味しそうだね」


僕、クロワッサン好きなんだよな。


【リビング】


僕が猫達と遊んでいると、姉上が顔を出した。


「出かけて来るわね~」


僕は、アマデウスを抱いて玄関までついて行った。


「暑くなってきたから、髪を切ろうと思って」


「え?あんまり切らないでね」


「わからないわよ、バッサリ切るかも」


「えー、やめてよ」


ずっと長くしてたのに…あ、行っちゃった。


「皆んなでお留守番だな」


「ニャー」


【美容室】


「今日は、どういたしましょうか」


「そうね~」


「いつも通りでよろしいですか?」


「お任せします」


【城咲家のキッチン】


猫達にご飯をあげた。


ニコロは、自分のご飯を、適当に食べておいて、フレデリックのご飯を取って食べている。


「コラコラ、それはお兄ちゃんのだろ」


冷蔵庫の中を見ると、鳥と茄子が有る…


茄子のチーズ焼きと…鳥は、ハーブで焼くかな…


ローズマリーまだ有るかな?


【庭】


庭に出てみると、まだ少し有った。


ローズマリーは、気まぐれに花を咲かせたりするからね。


6月とは言えまだそれ程暑くないからな、今年は。


「ごめんね、少しだけちょうだいね」


気まぐれなローズマリーを入手 。


【キッチン】


後は、マカロニサラダと、野菜たっぷりのスープでも作るか。


鳥をハーブで焼いていると、足の周りに猫達。


しばらくすると、3人(3匹)で玄関に向かった。


帰って来たな。



玄関の方で声がする。


「ニャー、ニャー」


「ただいま~迎えに来てくれたのね~、良い子にしてた?」


「ニャー」


「星君も、良い子にしてた?」


「ニャ?」


猫達と一緒に、キッチンに来た。


「美味しそう~良い香りね~」


髪は、それ程切らなかったみたいだ。


ホッ…


「星君の好きなチーズケーキ買って来たの、後で食べましょう」


「うん」


「あなた達のお土産は、これよ~」


姉上がオモチャを出すと、皆んなそれぞれ思い思いの場所に持って行った。


アマデウスは、自分の身体より大きなオモチャを引きずって行く。


持ったままキャットタワーに登れなくで必死になっている姿が可愛い。


食事をしている時は静かにしていた猫達が、チーズケーキの匂いで、そばに来た。


「お前達は、ダメだぞ」


人間の食べ物は猫には味が濃いので、食べさせると長生きしないから、猫には猫用の物しか食べさせないようにしているんだ。


【レッスン室】


〈ピアノを弾く陽。曲はショパンのバラード第1番。ソファに座って聞く星〉


この時間が一番好きだ…


来月のリサイタル、何弾くんだろう?


あまり、そういう事は聞かないんだ。


聞かなくても自然とわかったり、姉上が話してくれたりするから、僕の方からは聞かない。


当日プログラムを見るまで知らない、なんて事も有るよ。


僕は音楽家じゃないし、姉上はプロだから、音楽の事には口を出したくないんだ。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ