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愛する姉上様5

【晴香の家のキッチン】


「お父さん直伝のソースをかけて、と」


〈お弁当を作る晴香〉


「出来た…って、ヤダ、ついハートにしちゃった」


〈オムライスのソースがハート〉


「晴香、遅刻するわよ」


「あ、はーい」


【オルフェウス学院裏庭】


〈ガーデンテーブルに座っている星。葵が来てそばに立って話している。木のかげ足を止める晴香〉


「居た」


〈2人の様子を見ている〉


「どうしたのよ」


「あ、花園さん」


「それ、星ちゃんにでしょ?」


「あ、いや、そうなんですけど」


「好きなのね」


「ちょっとステキだなーって思ってたんだけど…でもあんな出会い方で第一印象最悪だったし…あ、いえ、でも、好きだなんて、そんなー」


「そうやって色々考えるのは、好きって事よ」


「だって、星さんはお坊っちゃまだし、私なんかとても」


「それ、言わない方が良いわよ。彼ね、小さい頃からそう言われるのが嫌いだったから」


「そうなんですか…」


「ほら、早く行かないと、お昼休み終わっちゃうわよ」


〈そう言うと晴香を前に押し出した〉


「わわっ」



【ガーデンテーブル】


〈涼太に促されてお弁当を渡す晴香〉


「有難う。もう少しでカフェに行くところだった」


「間に合って良かったわね」


〈蓋を開ける。オムライスメインに、ウインナー、プチトマト、インゲンなどが入っている〉


「可愛いお弁当、ハートにしちゃって」


「あ、アハ、アハハ」


(岡崎先生ったら、言わないでー)


「私も、ここで食べよう」


「こっちもまた乙女チックなお弁当ね…花園君のは、誰が作ってくれたの?」


「自分で作ったんです」


「あらま」


〈校舎からピアノが聞こえてくる。曲はショパンの幻想即興曲。見上げる星〉


「陽ちゃんね」


「どうしてわかるんですか?」


「そりゃ、生徒とは明らかに違うし」


「あ、そっか、そうですよね」


「この曲、城咲姉弟には、ちょっとしたエピソードが有るのでしたー」


「え?、どんな、どんな?」


〈身を乗り出す晴香 星の横顔見る涼太〉



「星ちゃんが幼稚園の年長さんで、陽ちゃんが六年生だったかしらね…」


〈お弁当を食べる星と涼太〉


「伊藤先生の演奏会に行ったのよ」


「伊藤先生って、あの世界的ピアニストの?」


「そう。それでこの曲を聞いた星ちゃんが言ったの」


「な、何て?」


「この曲は、この先生の演奏が一番好き、って」


「あの日の事は、今でも鮮明に覚えてるよ。最初の一音を聞いた瞬間、雷に打たれみたいに、身体中に電流が走って動けなかった」


「まるで、一目惚れした時みたいですね」


「星ちゃんの初恋かしらね」


「ああ、これ、美味しい」


「星さんごまかしてます?」


「陽ちゃん、相当ショックだったみたいよ。いつもは、お姉様のピアノが一番好き、って言われてたから」


〈お弁当を食べる星 。横顔見詰める晴香〉


「それから留学を決めたのよ」


「そうだったんですね」


「伊藤先生は、陽ちゃんの憧れのピアニストでもあるんだけどねー」


〈校舎から聞こえるピアノ。見上げる晴香〉


「私も、あんな風に弾けるようになりたーい」


(私のピアノも…好きって…いつか言ってくれるかな…?)



【音楽院ピアノ科の廊下】


〈涼太が教室を覗きながら歩く〉


「あ、居た居た。晴香ちゃん」


「あ、花園さん。私を探してたんですか?」


「9月に、学内のヴァイオリンコンクールが有るんだけど」


「はい。ピアノは10月です」


「出るの?」


「はい!」


「それじゃ、自分の練習で一杯かしら?」


「???」


「ベートーヴェンのソナタ、ピアノパートお願いしたいんだけど」


「私、月光を弾くつもりなんですけど」


「同じベートーヴェンなら、大丈夫でしょ?」


「え?」


「だ・か・ら・ピアノパートを弾いてほしいのよ」


「え?私?私なんかより、もっと上手い人沢山居るのに、私で良いんですか?」


「その「私なんか」って言うの、いい加減にやめなさいよ。最近音が綺麗になってきてるし」


「本当ですかあ?!」


「一つ教えてあげましょうか」


「はい」


「小学校の時にね「お姉様のピアノ、どこが好き?」って聞いたのね。そしたら星ちゃん「一つ一つの音がキラキラしてる」って」


「どうしたら、あんな音が出せるのかしら…?同じピアノ弾いても、全然音が違うのよねー」



〈晴香と涼太が話していると、1人の女子生徒がツカツカとやって来る〉


「あら、朝美さんじゃないの。こんな所で男子とお喋りなんて、余裕ね」


「ゲッ、一条さん」


「秋のコンクール出るんですってね。あなただけには負ける気がしないわ」


「私だって、頑張るんだから」


「最近城咲星さんと親しくしているみたいだけど、あんまり調子に乗らない事ね」


〈そう言うと自分の取り巻きの所へ戻って、もう一度晴香を見た〉


「一条さんて言うのね…時々星ちゃんの周りをウロウロしてるの見かけるけど、あの子も彼の事好きみたいね」


「えっ?!そうなんですか?って、私はまだそんなんじゃ…そりゃ、うちのお店で見かけた時から、素敵だなーって思ってたけど…あー、私ったら、何でいつも、心の声がみんな出ちゃうのー?」


「ブッブツ言ってないで、弦楽科の方に行きましょうか」


「あ、はい」


【弦楽科の教室】


〈2人が入ると、葵と陽が居る〉


「パートナーが決まりました」


「あら、2人で?」


「はい」


「え?私、まだ返事してないし」


「やってご覧なさい。良いお勉強になりますよ~」


「城咲先生がそう仰るなら」


「それじゃ、ちょっと聞いてみようかな」


「それじゃあ、わたくしは行きますね~。葵ちゃん。朝美さんの事お願いね~」


〈そう言うと陽は教室を出て行った〉


「じゃ、始めましょう。最初からね」


〈曲はベートーヴェンのヴァイオリンソナタ第6番〉



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