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『ショパンへのオマージュ』“愛する姉上様”  作者: 大輝
第4章《デュオコンサート》
4/22

愛する姉上様4

【晴香の家】


「た、ただいま」


「どうしたの、お姉ちゃん。くたくたになって…?」


「城咲先生のレッスン…受けてた…の…」


弾けるようになるまで、終わらないのよ。


ニコニコしながら「もう一度弾いてご覧なさい」って…


何度繰り返したか…何十回?


【城咲家のキッチン】


今日は、ポトフ。


姉上は、さっき帰って来て、ピアノに向かっている。


ここだと聞こえなくて残念だけど、食事の後また弾くかも知れないからね。


とにかく今は、夕食の支度をしよう。


と、言っても、昨日から煮込んでおいたからすぐ出来るけどね。


「ニャー」


「ミュー」


「アーオン」


食いしん坊さん達が来たぞ。


アマデウスは、まだ離乳食。


カリカリのふやかした物を食べさせる。


ミルクは、哺乳瓶だ。


フレデリックもニコロも、皆んなそうやって育てたんだ。


「美味しそうな匂いね」


「猫達にご飯あげたら、支度するからね」


「わたくしがするわ」


「大丈夫かね?火傷しないでよ」


「失礼ね、お鍋からお皿に入れるだけでしょう?」(ニコニコ)


まあ、そうだけど…


本人は、平気そうにしてるけど、やっぱりピアニストの手だから、過剰に心配しちゃうんだよな。


【晴香の部屋】


「お姉ちゃん、起きろよ。遅刻するぞ」


「zzzZZZ」


「爆睡してるし」


【家の前】


「あーもう、何で早く起こしてくれないのよ」


〈バタバタと走って学校に向かう晴香〉


【普通科校舎玄関】


〈放課後〉


「おい、星。寄り道して帰ろうぜ」


「良いよ。どこ?」


「取り敢えず駅の向こう」


【北口アーケード】


どこに行こうかな?


CD見る?


健人、クラシック興味無いんだよな。


「ハンバーガーでも食うか」


【城咲家のレッスン室】


「どうですか?」


「もう少しだけ、あと紙一枚深くして頂きたいんですけど」


「わかりました」


わたくしが信頼する、調律師のフォルテさん。


ニックネームは、星君がつけたの。


【ハンバーガーショップ】


「来月、城咲先生と岡崎先生のコンサートだろ?」


「うん」


「俺も行ってみようかな?チケット取れるか?」


へー、健人がクラシックの演奏会に行きたいなんて…


これは、何としてもチケットお取りしましょう。


【コンサートホール】


〈ホールエントランスの椅子に座る、星、晴香、健人、涼太。 プログラムを見る晴香〉


「バッハ国際コンクール1位、モーツァルト国際コンクール1位、ショパン国際コンクール1位無しの2位…凄い…私、こんな凄い先生に教わってるんだ」


「岡崎先生だって、チャイコフスキー国際コンクール優勝してるのよ」〈涼太が言う〉


〈もうすぐデュオコンサートが始まる…スタッフの人が走って来た〉


「こちらでしたか。ちょっとお願いします」


〈スタッフに促されて舞台の袖に行く星〉


【舞台の袖】


〈陽と葵が控えている。調弦する葵。精神集中する陽。星が来る〉


「僕、お姉様のピアノ大好きだよ」


〈頷く陽〉


幼い頃からいつもそうだ…僕がこう言うと、姉上は安心して舞台に向かう。


ショパンコンクールの時もそうだった。


僕は本選だけ見に行く事が出来て…あの時は、控え室だったけれど。


僕が居ない時は、どうしてたんだろう?


そして、皆んなの所に戻った。


【通路】


「何だったんですか?」〈と晴香が聞く〉


「うん。ちょっとね」


「もう、始まるわよ」


「あ、花園さん待って」


〈涼太の後を追って会場に入る晴香。後ろから付いて行く星と健人、四人は席に座った〉


【客席】


「ああ、始まる…ドキドキしてきた」


〈晴香は、両手を重ねて胸にあてた〉



演奏会が始まった。


最初は姉上のソロで、モーツァルトのピアノソナタ第15番。


〈瞳をキラキラさせて見ている晴香〉


(凄い迫力…教室で聞くのと全然違う…一瞬で城咲陽ワールドにワープしちゃった)


それから、葵ちゃんのソロでバッハの無伴奏ヴァイオリンソナタ第1番。


そして、2人のデュオで、モーツァルトのピアノとヴァイオリンの為のソナタ21番と25番、26番、28番。


〈鳴り止まぬ拍手。アンコールは、クライスラーの美しきロスマリン〉


「ステキだったねー…まだ余韻が残ってる…」〈と晴香が言う〉


「私、鳥肌立ってる」


「俺、腹減った」


「もう、橘君」


「あ、じゃあ、うちに来ます?」


今日は姉上は、葵ちゃんと一緒に食事して帰るだろうし、そうするかな。


【洋食屋】


〈お母さんと一緒に料理を運ぶ晴香〉


「うおー、旨そ」〈と健人〉


「へー、晴香ちゃん手伝ってるんだ。偉いわね」


「忙しい時だけですよ。時間が有れば、ピアノに向かってないと」


〈厨房から晴香のお父さんが出て来る〉


「今日はご馳走するから、どんどん食べてね」


「有難うございます」



「城咲先生って、小学校卒業してすぐに留学したんですよね?」


「そうだよ」


「その時、星さんいくつでした?」


「7才だった」


「5つ上の6年先輩よね」


「うん」


〈黙々と食べる健人〉


「寂しくなかったですか?」


「休みには、僕も向こうに行っていたからね」


「強がってるけど、お姉様大好きの星ちゃんだもの、寂しかったに決まってるじゃない」


「居ない間、あの超天然に振り回されなくて、良かったよ」


「あはー、星さんて、意外と素直じゃないんですねー」


【城咲家の前】


〈星が帰るとレッスン室の明かりがついている。家の中に入りレッスン室に向かう星。静かに扉を開けて中に入る〉


【レッスン室】


〈ピアノを弾く陽。曲はショパンの英雄ポロネーズ変イ長調〉


コンサートの後も、自分のレッスンは欠かさない。


今日の事は、今日のうちにやっておく。


〈曲が終わる。余韻。静かに手を膝に置く陽。背中からそっとハグする星〉


「あらあら、どうしたの?甘えて」


(寂しかったよ、ずっと)



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