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愛する姉上様3

【レッスン室】


レッスン室に猫は入れないんだ。


グランドピアノの蓋は軽くて、猫が飛び乗ったりしたら危ないからね。


姉上の事だから「あら~」なんて言っている間に挟まれかねない。


手を怪我したりしたら、大変だ。


でも…「ピアニストだから、包丁は持たないの」なんて言わないよ。


料理もするし、掃除だってする。


「お洗濯は、洗濯機がやってくれるから~そんなに大変じゃないわ~」って家事は全部やる。


僕も手伝うけどね。


そろそろ始めるようだ。


邪魔をしてはいけないから、外に出よう。


アマデウスも、目が離せないしね。


「あら、星ちゃん。聞いてて良いのよ」


葵ちゃんは、そう言ってくれたけど、遠慮した。


葵ちゃんとの時は、時々聞かせて貰う事も有るけど、他の人の時はそうはいかない。


プロだから…邪魔をしてはいけないんだ。


もう既に2人とも物凄いオーラだ…



【オルフェウス学院】


この学校、元はオルフェウス音楽院だったところに普通科が設立されたので、普通科でも音楽教育が盛んなんだ。


普通科は小学校から有り、高校からはどちらか選べるようになっている。


姉上がこの学校に居たのは、小学校まで。


その後は、ザルツブルクやワルシャワに留学していた。


僕は、高校も普通科に通っているんだ。


どうして音楽院に行かないのか?と随分言われたけど、プロになれるのはほんの一握り…


姉上は宇宙 にたった一つの太陽だけど、僕は沢山有る星。


ヴァイオリンもチェロもピアノも弾くけど、これ、って言える物が無いんだ。


父が指揮者なので、棒振りの真似事ぐらいはするけどね。


「キャッ、城咲星君よ」


「どこどこ?」


「ほら、あそこ」


みんなが興味有るのは、僕ではなくて、城咲陽の弟の城咲星。


「キャーステキ」


「今こっち見た」


うるさいから、音楽院の方に行こう。


音楽院の生徒達は、そっとしておいてくれるんだ。


姉上が講師になってからは、尚更ね。



【裏庭】


「約束のお弁当、はい」


「ありがとう…家、洋食屋さんだったよね?」


「ああ、何ですか?その目は…ちゃんと自分で作りましたよ。お父さんに頼んだりしてませんからね」


それにしても…量が多いな…


〈星が卵焼きを口に運ぶと〉


「ど、どうですか?」


「待って、今から食べるところ」


「お口に合うと良いんだけど…」


「ああ、美味しい。甘いのより、こっちの方が好きだな」


「本当ですか?迷ったんだけど、甘い方にしなくて良かった。まあ、いつも店を手伝ってるし、料理ぐらいね。私が本気出せばこんなもんよ」


また、何かブツブツ言い出したぞ…


量が多いと心配したけど、美味しいので完食。


「あ!星何食ってるんだ?俺にもくれ」


「遅い」


「橘さんは、お弁当作ってくれる人居ないんですか?」


「残念ながら…って、2人は、もうそういう関係なのかぁ?!」


「違うって」


「違います」


「ハモってるし」


そういうって、どういうだよ?



「私、この春入学したばかりで、周りは皆んな下から上がって来た子ばっかりだし、まだ友達居なくて」


「そうなんだ…俺も高校からだよ。普通科だけどな。まあ2年にもなれば、友達の1人や2人居るけど」


「ピアノが大好きで、小さい頃から習ってて、ピアノ科に入ったけど、皆んな凄い人ばっかりで、私なんかーって…」


「私なんか、って思うの、良くないと思うよ」


「ああ、そうだよ、俺もそう思う」


「だって、どうやったって、城咲先生みたいに弾けないもん。私才能無いのかなぁ」


「あらあら、才能じゃないのよ。わたくしだって、努力してるんですよ~」


「うわっ、し、城咲陽さん」


〈後ろにひっくり返る健人〉


「い、いつの間に…痛てて」


「大丈夫~?」


「だ、大丈夫です」


「弟のお友達ね、今度うちに遊びにいらっしゃいね~」


「は、はい!」


〈微笑む陽〉


「星君。今日は寄り道しないでお家に帰るのよ。それじゃ、行くわね~」


「行っちゃった…初めて会ったけど…綺麗な人だなぁ…」


「学校で会うの、嫌だな…」



【ピアノ科のレッスン室】


〈扉の前、晴香が入ろうとすると、他の生徒がドン!と晴香にぶつかる〉


「あっ」


「退いてくれる?この部屋私が使うから」


「えー?だって、私が先に」


〈晴香にぶつかる様にして、中に入る女子生徒〉


「ああ、ちょっと、一条さん…酷いー」


「あらあら、朝美さん。こっちにいらっしゃい」


【第1ピアノ教室】


「え?ここ使って良いんですか?」


「時間空いてるから、見てあげます」


「わっ、ありがとうございます!」


〈ピアノの前に座る陽と晴香。楽譜を開く。曲はショパンのエチュードOp10-6〉


「皆んな親が音楽家だったり、凄い人ばっかりで…さっきの一条みやびさんのお母さんも声楽家だし…私のうちは洋食屋で、音楽とは全然関係無くて…」


「音楽家の居ない家から音楽家が出るなんて、良く有る事よ」


「一条さんには、負けたくないです」


「じゃあ、始めましょうか」


「はい!お願いします」


〈晴香はピアノを弾き始める〉


「ここから、もう一度」


〈同じ所を何度も繰り返し弾かされる〉


「もう一度」


「はい」


(普段は優しいけど、レッスンは厳しいのよね…でも、有難い)


「もう一度、ここからね、自分の音を良く聞いて」



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