200文字話集『羽生河四ノ二』
第二弾は、多少加齢臭が強いかなと思います。
羽生河四ノ二
収録
01.コンビネーションサラダ
02.一十一才
03.無限肉eat
04.セクシャルハラスメント類
05.センサイなセンサイ
06.エレキング出現現象について
07.納涼がのーりおに聞こえる機能性難聴または心因性難聴あるいはヒステリー性難聴
08.暴走老人
09.ムカデ
10.最後のフライト
01.コンビネーションサラダ
コンビネーションサラダを作ります。
作ったら『これから食べるぞ!』という風を装ってください。顔も『これから食べる顔』にしてください。手にもフォークなどを持つと良いでしょう。
その時に、コンビネーションサラダにマイクを近づけてください。
・・・、
「きた?」
「来る。もう来る」
「マジ?最初誰行く?」
「俺が行く」
「ジェットストリームアタック成功するかな」
「するさ、俺に続け」
「わかった」
「頑張る」
聞こえましたか?
02.一十一才
「元気ですね~」
私はアナウンサー。今日の仕事は111歳の老人のインタビューだ。
「はい、元気です」
111歳の老人は言った。
「元気の秘訣は何ですかあ~」
正直私にはその老人が111歳なんて信じられなかった。
「一日一食一汁一菜ですかねえ」
老人はそう言って笑った。開いた口の中を見ると歯が上下全部に付いていた。入れ歯や差し歯などではない。全部老人の自前だった。
「将来の夢は何ですか?」
「まあ、死ぬ事ですかねえ」
03.無限肉eat
長く宇宙を旅をする際、食糧問題がネックになる。
食料の育成とは、植物を栽培し、動物を育て、動物を食べる。どの場合でもこれがサイクルであり全てだが、宇宙空間においては、そのサイクルがやがて崩れ出してしまう。
そこで私は無限に食べれる動物を造った。
それは発売と同時に売れた。
しかし、
すぐに返品が相次いだ。
理由を聞くと、
動物の最後の悲鳴を消して。
とのことだ。
宇宙のロマンの前にはありがたみなど不要になるらしい。
04.セクシャルハラスメント類
「セクハラです!」
私が課長に対してそう叫んだ瞬間、
ドンっ!
という音がして、気がつくと私は床に倒れていた。
「な、何をしてっ」
課長の声。
するとまた、
ドンっ!
という音がして私の視界の中に課長が倒れこんできた。課長は意識が無いようだった。
「ごめんなあ」
声がした。
「君にセクハラで訴えられて、マスコミとか来て、会社の業務が滞ったら俺達困るんだ」
「・・・」
「だから、二人で無理心中したってことにするわ」
「・・・」
05.センサイなセンサイ
其の者はこの世に生まれてから、千年生きてきた。
千年。
千年といえば、とても長い時間である。
其の者は千年、一人で生きてきた。
その日、其の者が住んでいる山に若者が一人訪れた。
若者は其の者の前にひざまずいて、
「私を弟子にしてください」
そう言った。
「何故か?」
其の者は言った。
「千年も生きたその秘術を私も学びたく・・・」
若者がそう述べた瞬間、
「千年じゃねえし!千二年だし!」
其の者は叫んだ。
辺りに怒号が響いた。
06.エレキング出現現象について
その日温泉で私は、上がってからおいしいおいしいやばいビールを飲むために、サウナに40分入ると決めた。
「いざ、尋常に勝負!」
私はサウナに突撃した。
8分ワンセットを五回。
休憩は水風呂ではなく露天風呂。
rule of lifeで。
しかし、日ごろ二十分程度しか入っていないサウナに急に倍分入るというのは酷な事だったようだ。
四回目の休憩の際、露天風呂にエレキングが居た。
まあ、私はエレキング好きだからよかったけど。
07.納涼がのーりおに聞こえる機能性難聴または心因性難聴あるいはヒステリー性難聴
僕は林ノリオ。
昔階段から落ちた事があって、それ以降『納涼』という言葉が『のーりお』って聞こえるようになった。
普段は困らないけど、でも毎年、晩夏なると困る事が発生する。
街中で納涼祭りの話をするのだ。
当然、僕にはそれが全部『のーりお』に聞こえてしまうので、
「うわあああ!」
ってなる。
でも、
こないだ車にはねられてからは『のーりお』ではなく今度は『闘莉王』に変わった。
『闘莉王』だったらいいかと僕は安心した。
08.暴走老人
最近、老人が暴走する。
所謂『暴走老人』というやつだ。
「がうがうがー」
居た。
その老人は明らかに暴走していた。エヴァみたいに。
他にも、
「きょー」
と叫んで暴走している老人も居た。口から血とかを吹いていた。エヴァみたいだった。
「オー、アメージーング!」
それを見て私の近くに居た『権太坂』とか『新日鉄釜石』とか書かれたシャツを着ている外国人の方々が写真を撮っていた。
ので、
私も一緒に写真を撮った。
何枚も撮った。
09.ムカデ
夏ホラー2015に参加した際、参加表明がちょうど600だった。
だから、それに伴う何かを書いたほうがいいのでは?という強迫観念に襲われた。
それで私は必死に考えて、ムカデの事を思いついた。
六百足。
ムカデ。
ね?
私はずっとムカデの事を考えた。
朝も昼も夜もムカデ。
ずっとムカデ。
その影響か、足の多い夢をよく見た。
でも、
結局ムカデの話は書けなかった。
だから、
今でもムカデは頭にある。
それに、
時々耳からも出てくる。
10.最後のフライト
今日は私にとって最後のフライト。
「お疲れ様」
機長が言った。
「ご存知でしたか」
驚いた。
「僕も今日が最後でね」
機長が言った。
「それは、お疲れ様です」
「それは君へのセリフだろ」
「・・・」
きっと以前に『乱気流/タービュランス』みたいのに私が巻き込まれたことを彼は言ってくれているんだろう。
「着いたら飲みに行かないか?」
機長は前を向いたまま言った。
「喜んで」
私も前を向いたまま答えた。
空の色はとても綺麗だった。
※ちなみにタイトル、並びに空白は文字数には含みません。
ちなみに、ムカデは漢字で書くと百足です。六百足ではないんで、テストとかでそうやって書いてペケになっても当方は、文句等は一切受け付けませんので、あしからずよろしくお願いいたします。