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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

「鬼面」

作者: 城間 蒼志
掲載日:2025/12/04

人は、誰かと暮らし始めるとき、「寄り添う」という言葉を無意識に信じる。相手の弱さも過去も、まるごと受け入れられるはずだと。しかし、寄り添いとはいつも相互ではない。寄り添われる側は、寄り添う者の影を簡単に踏みつける。あるいは、静かに搾取する。

 本作『鬼面』は、結婚という社会的な幸福の外側で起きている“言葉にならない暴力”を描いた物語である。殴ることも、怒鳴ることもない。けれど、毎日の否定、沈黙の圧、奪われた選択肢。そうした見えない暴力が、人の尊厳をどれほど削ぎ落とし、人格を変質させていくかを、主人公・透の視点から丁寧に追っていく。

 心理的暴力は、加害者の“意図”ではなく、被害者の“状態”に痕跡を残す。だからこそ証拠は曖昧で、周囲も気づきにくい。けれど、崩壊は確かに積み上がり、やがて当人の心身は致命的に傷ついていく。本作では、透が音もなく壊れていく過程と、彼を救おうとする友人・誠の存在を軸に、人間の関係性の脆弱さと救済の可能性を描いた。

 “鬼面”とは悪人の比喩ではない。無自覚に相手の尊厳を見失ったとき、人は誰でもその面を被る。透の妻・梨花は、あくまでも「悪意のある人間」ではない。だが、彼女は透の内側にある弱さを見つけた瞬間、その弱さを支えられず、恐怖と支配の方向へ進んでしまう。

 この物語を通じて、読者がふと誰かの表情の裏に潜む「声なき悲鳴」に気づけるようになれば、本作を書いた意味は十分である。

「鬼面」

 

一 冬の光の中で

妻に初めて牙を向けられた日のことを、僕はきっと一生忘れないと思う。

 だが、この話はそこから始めるべきではないのだろう。

物語としても、そして記憶としても。

人は、いきなり牙をむいたりはしない。

あるいは、最初からそうだったのに、僕が見ないふりをしていただけなのかもしれない。


 あの日々を思い返すと、いつも最初に浮かぶのは、東京の冬の光だ。

 ビルの谷間をすり抜けてくる白っぽい光。乾いた風。

吐く息の冷たさ。

現場帰りの作業靴で濡れたアスファルトを踏んだときの、あの心細い音。

 四十を過ぎて、やっと自分の人生が安定しはじめたと思っていた頃のことだ。

僕は、都内の建設会社で現場監督をしていた。

 朝は誰よりも早く事務所に入り、夜は最後に戸締まりをして帰る。

二十代、三十代で無茶をしてきたツケは膝や腰に溜まっていたけれど、仕事そのものは嫌いじゃなかった。

図面と現場と職人たちの声を、ひとつの完成形にまとめていく感覚に、まだ少しは誇りみたいなものを抱いていた。


 そんなある冬の夜、僕は梨花と出会った。


二 出会い

その日は、珍しく大学時代の友人・誠に誘われて、新宿の小さなワインバーに顔を出していた。

 現場続きでスーツなんて年に数えるほどしか着ないのに、その日はなんとなくネクタイまで締めて行った。

今思えば、それがすでに何かの兆しだったのかもしれない。


「透、遅いぞ。主役のくせに」


 カウンター席の端で、誠がグラスを振りながら笑った。

 彼は大学の頃から変わらない。

人懐っこい笑顔と、少しだけ斜めから物事を見る目と、他人の事情を勝手に引き受けてしまう癖。


「主役ってなんだよ」


「紹介したいやつがいてさ。ほら」


 誠が顎で示した先に、彼女はいた。


 黒髪をひとつに束ねた、細いシルエット。

 白いワイシャツに紺のカーディガン。 

職場帰りらしく、膝の上に小さなトートバッグを抱えて座っていた。

 派手さはない。ただ、最初に目に入ったのは、その笑顔だった。

柔らかい、少しはにかんだような笑顔。

店内の黄色い照明よりも、その笑顔のほうが明るく見えた。


「初めまして。高城梨花と言います」


 そう言って、彼女は丁寧に頭を下げた。

 声もまた、笑顔と同じように柔らかかった。少し高めだけれど耳に刺さらない、丸い声だと思った。


「神谷透です。誠とは、大学からの腐れ縁で」


「腐れ縁って、自分で言うなよ」


 誠が割って入り、三人分のグラスにワインが注がれる。

 最初は当たり障りのない話だった。

仕事のこと、通勤電車の混み具合、最近観た映画。

 梨花はよく笑い、よく相づちを打った。 人の話を聞くとき、まっすぐ目を見る。

けれどその視線に、いやらしさや圧はなか

った。

ただ、ちゃんとそこにいる、という感じだった。


「誠さん、学生の頃からずっとこうなんですね」


 仕事の愚痴を一通り話し終えたとき、梨花が僕にそう言った。

 僕は思わず笑った。


「こうって?」

「人の心配ばっかりして、自分のことを後回しにするところ」


「おいおい、初対面でバラすなって」


 誠が肩をすくめる。

 梨花はその様子を見て、声を立てて笑った。

 その笑い声を聞いた瞬間、胸の奥の何かがわずかに動いた気がした。

 ──ああ、この人となら、落ち着いて話ができるかもしれない。

 そう思った。


三 交際の始まり

その夜、店を出たあと、誠はさっさとタクシーを捕まえてしまった。


「じゃ、あとは若い二人で。俺、明日も仕事だから」

「お前だって同い年だろ」


 そう言いかけたときには、もうドアは閉まっていた。

 残された僕と梨花は、しばらく並んで新宿の雑踏を歩いた。

 冬の空気は冷たかったが、彼女の横顔はどこか楽しそうだった。


「誠さんって、ずるいですね」


「うん。昔からずるいよ。人の人生を勝手に動かすところがある」


「でも、今日は感謝してます。こうして、お話できて」


 信号待ちの横断歩道で、彼女がふとこちらを見上げた。

 さっき店内で見せた笑顔より、少しだけ素の表情に近い。

 その視線を、僕はまともに受け止めてしまった。


「……また、食事でもどうですか」


 気づいたときには、そう口にしていた。

 梨花は目を丸くし、次の瞬間ふわりと笑った。


「はい。ぜひ」


 その一言が、すべての始まりだった。


 それからの交際は、驚くほど穏やかだった。

 仕事帰りに待ち合わせてご飯を食べる。

休日に映画を観に行く。

ときどき、彼女の好きな雑貨屋をのぞいて歩く。

 僕のような年齢の男に似合わない、静かでささやかな恋だったと思う。


「透さんって、怒ることあるんですか?」


 ある日、彼女が不思議そうに聞いた。


「怒るよ。現場で職人が安全帯つけてなかったら、大声も出す」


「でも、私には怒らなさそう」


「……怒る理由が見当たらないな」


 そう言うと、梨花は少しうつむいて笑った。


「そういうところ、好きです」


 その言葉を、僕は真に受けた。

 自分の優しさのようなものを、肯定された気がして。

 その優しさが、やがて自分を追い詰める鎖になることなど、考えもしなかった。


四 結婚と、静かな日々

交際は一年ほど続き、周囲も自然と二人をそういう目で見るようになっていた。

 誠は相変わらず、飲みに行けばからかってくる。


「で、いつ籍入れんの?」


「そういうのは、タイミングってものがある」


「いや、お前に必要なのは背中を蹴ってくれる誰かだよ」


 その「誰か」が誠自身であることに、彼は気づいているのかいないのか。


 結局、プロポーズの言葉はとても不器用なものになった。

 夜景がきれいなレストランでも、洒落た演出も何もなかった。


「一緒に、暮らしてくれないか」


 それだけ。

 梨花はほんの一瞬だけ目を見開き、それからゆっくりと頷いた。


「はい。こちらこそ、よろしくお願いします」


 結婚式は小さな式場で、身内とごく親しい友人だけを呼んで行った。

 白無垢ではなく、シンプルなウェディングドレスを選んだ梨花は、驚くほど綺麗だった。

 誠は披露宴の乾杯で、空気を読まないスピーチをした。

「こいつは不器用で、要領も悪くて、仕事ばっかりの男です。でも、嘘だけはつかない。そこだけは保証します」


 会場が笑いに包まれたとき、梨花は横で小さく拍手をしていた。

 僕はその手を握りながら、この日々が長く続いていくと疑っていなかった。


 新居は、都内の少し郊外寄りの賃貸マンションにした。

 二人で家具を選び、カーテンの色を決め、食器を揃えた。

 仕事帰りに灯りのついた窓が見えるだけで、胸の奥が温かくなった。


「おかえりなさい。お疲れさま」


 ドアを開けるたび、梨花はそう言って出迎えてくれた。

 エプロン姿で立つ彼女は、まさに「家庭」という言葉のイメージそのものだった。


「今日ね、失敗しちゃって。卵焼きが、ちょっと焦げた」


「焦げても卵焼きだろ」


「フォローが昭和です」


 そんな他愛もない会話が、僕にはたまらなく愛おしかった。


 今思えば、この頃の梨花は、少なくとも外側だけを見れば、優しい妻だった。

 僕の仕事の愚痴を聞き、疲れた顔をすると温かいお茶を出してくれた。

 ときどき、僕が言葉を選べないまま沈黙していても、無理に問い詰めたりはしなかった。


「透さんは、そのままでいいですよ」


 彼女はよくそう言った。

 その「そのまま」が、どこまで許されているものなのか、僕は考えなかった。考えようともしなかった。


 人は、自分が信じたい像だけを見てしまう。

 あの頃の僕は、彼女の笑顔の裏側にあるものを、見ることもできたし、見ないこともできた。

 そして、見ないほうを選んだ。


 それが、最初の失敗だったのだと思う。


五 違和感の影

 結婚生活は、しばらくのあいだ平穏だった。

 誰に見せても恥ずかしくない家庭だったし、僕自身、幸福という言葉をようやく使ってもいいのではないかと思い始めていた。

だが、その年の秋頃からだ。

 仕事の現場が立て続けに問題を起こし、僕の中に初めて「しがみつくような疲労」がまとわりつき始めた。


 職人が怪我をし、工程が止まり、見積もりがずれ込み、発注が遅れ、上司に叱責され、現場は終わらない。

 毎日が遅く、帰宅は深夜。

 帰っても味がしない。飯を噛んでいる感じがしない。

 風呂に入る気力すらない。


「透さん、仕事……大変なの?」


 梨花が台所から顔を出した。

 薄明かりに浮かぶその横顔は、以前と変わらず優しかった。


「ああ。ちょっと……立て込んでて」

「そうなんだ。無理しないでね」


 言葉は優しかった。

 しかし、そのとき、ほんのわずかに眉が動いた気がした。

 心配ではなく、何かを計算しているような……そんな一瞬。

 僕は疲れているせいだと思って、その違和感を飲み込んだ。


 仕事はさらに悪化した。

 ある大型案件で図面上のミスが見つかり、修正に追われ、責任の矢印が僕に向けられた。


「神谷さん、ちゃんと確認してたの?」


「俺ひとりのミスじゃないです。チーム全体で──」


「言い訳はいいから」

上司に言われたその一言が、胸の奥に刺さった。

 同時に、心臓の裏側を誰かがつまんだような妙な痛みが走った。


 家に帰っても、梨花にそれは言えなかった。


「今日は遅かったね」


「ああ……まあ、ちょっと」


 言葉が出なかった。

 口にすると、全部が崩れてしまいそうだった。


「ご飯、温めなおすね」


「いや、いい。なんか……食欲ない」


 梨花がほんの一瞬だけ目を伏せた。

 その沈黙は、前より少しだけ長かった。


 翌朝、鏡を見ると、顔色が土のようにくすんでいた。

 目の下には濃い影。

 シャワーのお湯が肩に落ちても、熱いとも冷たいとも感じない。


 会社に行く途中、電車の中で胸が重くなった。

 まるで心臓の周りに鉛が巻かれているようだった。

 呼吸が浅く、小刻みに震える。

 他人に触れられるのが怖い。

 車内のアナウンスが頭に入らない。


(あれ……なんだ……これ……)


 降りるべき駅で身体が動かなくなった。

 気づけば、見知らぬ駅のホームでしばらく座り込んでいた。

 誰にも触れられていないのに、肩が痛くなるほど強く身を縮めていた。


 ようやく仕事場に着いたとき、すでに午前十時を回っていた。

 上司に頭を下げたが、言葉がうまく出なかった。


 その夜も遅かった。

 家に帰り、靴を脱いだ瞬間、足が震えた。


「透さん?」


 リビングの明かりがつき、梨花がこちらを見た。


「……ごめん。ちょっと……座らせて」


 床に座り込んだ僕を、梨花は覗き込んだ。

 その目は以前より冷静で、どこか距離を置いたようにも見えた。


「仕事、そんなに大変なの?」


「大変……というか……身体が、動かない」


「ふうん……」


 その「ふうん」に温度がなかった。

 冷たくはない。だが決して温かくもない。


「病院……行ったほうがいいのかな」


 自分で言って驚いた。

 仕事人間の僕が、そんな弱音を吐くとは思っていなかった。


 梨花はゆっくり立ち上がると、食器棚の方へ歩きながら言った。

「そうだね。行けば? 私にはよくわからないし」


 言葉は柔らかかった。

 けれど、その柔らかさが妙に薄く、触れたら破れそうな膜のように感じた。


 その日を境に、僕の心は急速に沈んでいった。

 何かに引きずり込まれるように、じわじわと暗い場所へ。

 そしてその暗がりの中で、梨花の影だけが少し濃くなった。


 まだ、この時点では、彼女が“鬼面”になるとは思っていなかった。


 ただ、どこかで薄く鳴っている不協和音に、


僕は気づかないふりをした。

 それが、まさかあんな地獄の前触れだったとは想像もせずに。


六 沈む音

心療内科に行くと決めたのは、翌週のことだった。

 朝、目を開けても世界が灰色にしか見えず、布団から起き上がるだけで全身が鉛のように重かった。

呼吸が浅く、胸が詰まる。何もしていないのに、ものすごく疲れていた。


 梨花は、朝食の皿をテーブルに並べながら言った。


「病院、今日行くの?」


「ああ……行こうと思う」


「そう。早くしたほうがいいよ」

彼女の声には抑揚がなかった。

 以前のような優しい表情が消え、どこか冷静な他人の顔になっていた。

 僕の具合が悪いことへの心配ではなく、

“厄介ごとが増えた”と処理しているような、妙な温度だった。


「一緒に来てくれる?」


 思わず口に出てしまった。

 自分でも驚くほどかすれた声だった。


 梨花は皿を並べる手を止め、こちらを見ずに答えた。


「……いいよ。どうせ仕事も休むんでしょ」


 その言葉に、胸の奥のどこかが小さくひび割れた。


 心療内科は、駅前のビルの四階にあった。

 待合室には同じように疲れた顔の男女が静かに座っていた。

 名前を呼ばれて診察室に入ると、医師は四十代くらいの穏やかな男性だった。


「最近、眠れていますか?」


「……あまり」


「ご飯は?」


「食べても味がしません」


「仕事は?」


「行ける日と……行けない日があります」


 医師は静かに頷き、少し間を置いてから言った。

「神谷さん、これはうつ状態の典型的な症状です。

 無理をすれば、急に倒れる可能性もありますよ」


 僕はうなずいた。

 その言葉はどこか遠くで響いているようだった。


 だが、梨花の反応は違った。


「先生、それって“気の持ちよう”で治るものなんですか?」


 医師が少し困った顔をした。


「気の持ちよう……というより、脳の疲れなので──」


「でも、気持ちが弱っているだけなら、休めば治りますよね?」


 梨花の声は冷静で、どこか苛立ちが混じっていた。

 その瞬間、僕の背中に冷たい汗が流れた。


「奥さん……うつは、本人の努力や根性では治りません」


 医師が丁寧に説明する間、梨花は一度も僕を見なかった。


 診察が終わると、エレベーターの前で彼女はため息をついた。


「ねえ透さん。

 “うつ”とか、あまり大げさに考えないほうがいいよ」


 大げさ?

 その言葉を聞いた瞬間、胸の奥の痛みが鋭くなった。


「大げさって……」


「映画とか観て笑ってるんだから、そこまでひどくないでしょ?」


 言われて気づいた。

 数日前、現実から逃げるように深夜にスマホで映画を流していた。

 ただぼんやり眺めていただけなのに。


「映画なんて……ただ気を紛らわせたくて……」


「そういうのもさ。甘えてるだけに見えるんだよね」


 甘えてる──

 その一言が、刃物みたいに心臓に刺さった。


「甘えてる……のか?」


「私には、そう見える」


 梨花の声は、完全に他人の声になっていた。

 そこには、あの日の優しい笑顔も、僕を受け入れてくれた柔らかさもなかった。

 ただ、冷たい事務的な線だけが浮かんでいた。


 その日から、梨花の言葉には必ず小さな“棘”が刺さるようになった。


「今日も休むの?」

「それ、本当に必要なの?」

「働けないなら、せめて家のことくらいやってよ」

「何でそんなに弱いの?」

優しさの皮を被った批判は、日ごとにその皮を失っていった。


 食卓に座っていても、味がしなかった。

 彼女の声が、遠くから機械のように聞こえる日もあった。


(なんでだ……なんでこんな言い方……)


 そう思うたびに、心の奥の何かが、少しずつ折れていくのが分かった。


 そしてある晩、梨花の口から

 初めて“決定的な言葉”が飛び出した。


「ねえ透さん……

 こんなこと言いたくないけどさ……

 あなたといると、苦しいよ」


 その言葉は、僕のなかの最後の綱を、静かに断ち切った。


七 崩れていく場所

 梨花の言葉は、日を追うごとに鋭さを増した。

 最初は小さな針だったのに、いつの間にか鉄の杭になっていた。


「また休むの?」

「私ばっかり働いて、なんで透さんは家にいるの?」

「普通の人は、そんなことで壊れたりしないよ」

「弱いっていうか……幼く見えてくる」


 僕は反論できなかった。

 声が出なかった。

 身体が動かなかった。

 「ごめん」と謝ることしかできなかった。


 謝ったところで、何も変わらないのに。


 食欲はほとんどなく、味噌汁を啜っても、ただの温度しか感じなかった。

 夜は眠れず、朝は起きられず、昼になってようやく薄暗い天井を眺める。


 梨花は言った。


「ねぇ……何もしないで寝てる人を、どうやって尊敬しろっていうの?」


 僕は布団の中で、ゆっくり息を吸った。

 肺が痛かった。

 吸い込む空気が、針のように刺さった。


 ある日のことだ。

 梨花はキッチンに立ったまま、手も動かさずにこう言った。


「透さん、私……

 あなたが死ぬほど辛いなんて、どうでもいいんだよね」


 その言葉で、頭の奥に真っ白な音が走った。

 怒りでも、悲しみでもない。

 ただ、音だ。


「あ……ああ……」


 声にもならない声が口から漏れた。


「……何それ? 返事になってないよ」


 梨花はまったく動揺していなかった。

 テレビをつけると、ワイドショーの芸能ニュースを見始めた。


 僕はその場に座り込んだ。

 呼吸がうまくできなかった。

 胸が焼けるように痛く、指先が痺れていた。


 その夜、梨花はさらに言葉を重ねた。


「ねぇ透さん……

 思うけどさ……

 死ぬほど辛いなら、いっそ──」


 彼女はその先を言わなかった。

 けれど、その言葉の“形”だけが

 はっきり僕の耳の奥に残った。


(……死んでほしい?)


 声にはならなかった。

 でも意味だけは、あまりにも鮮明だった。


 そこから先は、よく覚えていない。

 ただ、心が空洞になり、何も感じなくなった。

しばらくして、僕はふらりと立ち上がった。

 中身の抜けた身体が勝手に動いているようだった。


 首に巻けそうな紐を探し、物干しロープが目に入った瞬間、ああ、これで終わるんだと思った。


 自殺をしようとした、というより──

もう考える力も残っていなかった。


(終わる……そしたら……楽になるのかな)


 椅子を引き寄せ、ロープを梁に結び、輪を作り、首に当てた。


 その瞬間だった。


 急に、喉の奥がギュッと締まり、呼吸が奪われた。

(苦しい……苦しい……!)


 空気を求めて喉を鳴らしたが、肺に入ってこない。

 頭に血が上り、視界がぐにゃりと歪んだ。


 死ぬほどの苦しさに、身体が本能的にもがいた。

 足が椅子を蹴り、腕が勝手に暴れ、ロープから抜け落ちた。


 床に倒れこみ、肺に空気が流れ込んだ瞬間──生きたい、という感情がわずかに灯った。


(……なんて……ばかな……)


 涙が勝手に出た。

 鼻水も止まらない。

 喉は焼けたように痛い。


 生きるのが辛いのに、死ぬのはもっと辛かった。


 その夜、僕は初めて、「このままでは殺される」と、はっきり思った。


八 監獄以下

診断書を握りしめた透の心とは裏腹に、日常は急降下していった。

 梨花は怒鳴らなかった。

ただ、扉を閉じた。糸を切ったように全てを遮断した。


「透さん、しばらく働けないんだよね?」


 僕は頷くしかなかった。


「じゃあお金は私が管理するから。心配いらないでしょ?」


 心配いらない──その言葉は優しいのに硬かった。

 翌日、財布は消えていた。クレジットカードも、キャッシュカードも、通帳も。

 机の引き出しには、ただ空気だけが詰まっていた。


(……確認しなきゃ)


「梨花、カードは?」


「あれ、私が持ってるけど?」


「じゃ、口座の残高だけでも教えて──」


「あなたが使う必要ある? どうせ稼げないのに」


 瞬間、手足の先が冷えた。言葉が凍って落ちた。

食卓には皿が一枚だけ並ぶ日が増えた。

 僕の前には何もない。味噌汁の匂いだけが薄く漂う。

 腹が鳴った。恥ずかしい音だった。

 だが梨花は気づいても動かなかった。


 数日後、体重計の針は急速に下がった。数字が自分でも怖かった。

 身体を起こすたび、骨と皮が擦れるような感覚。

 頬は削がれ、呼吸は細り、鏡の自分は知らない男だった。


(これじゃ……監獄以下だ。処刑だ)


 そう思ったとき、初めて空腹が恐怖になった。

 食べたい、じゃない。生きるために食べなければならない。

 でも、何も与えられなかった。

「透さんってさ、映画観てるんでしょ?」

「気を紛らわせたくて──」


「その時間で求人でも探したら?」


 笑って言ったのに、笑っていなかった。

 ただ否定だけが積み上がる。

 スマホ画面の灯りが目に刺さった。

 それすら奪ってしまいたい、という気配が部屋の空気に混じった。


 僕は“生きるための縄”から、また少し手を離した。


誠とのメッセージ


 衰弱が限界に近づいた晩、誠に短いメッセージを送った。


『ヤバい。食べられてない。外も出られない』

既読はすぐ。返事はさらに早かった。


 誠『今どこにいる?』


『家だよ』


『住所は〇〇な。俺向かう』


『やめろ。〇〇の住所はここに書けない』


『じゃ、とりあえず生きろ。それだけ守れ』


 誠の言葉は、いつも単純で核心だった。


(生きろ……か)


 簡単だ。あまりにも簡単な言葉なのに、

僕にはそれが最後の設計図のように思えた。



九 白い静寂

梨花はさらに距離を置いた。存在を薄めた。

僕の話題を遮断し、制度や申請の話もまともに聞かない。


 有給も、傷病手当の話も、家計の計画も、

言葉の形までは届いているのに、彼女の心の“受信機”は壊れていた。


透「今の生活、本当に持つよ。制度も申請できる。だから──」


梨花「“病は気から”って言うでしょ?」


 部屋がまた静かになる。


「じゃあ気持ちが弱い俺が悪いっていうの?」

「……そうじゃないけど」


 そうだ。理由を想像できないのだ。

 知識不足でも、不安でも、もうそんな理由ではなく、単に彼女は、僕の苦しみを正確に想像する機能を持っていない。


 僕はある日、スマホのAI検索に縋った。

 画面に落ちてくる言葉は、僕の失った認知機能を代替してくれた。


『モラルハラスメントの可能性があります。第三者へ相談を』


「相談……第三者……」


 本能的に誠の名が浮かんだ。彼だけじゃない。もっと外側の誰か。


(俺は……解決策を持ってない。ただ誰かの言葉を必要としている)


 初めて自覚した。

 僕はもう、自分の人生をコントロールできない場所まで落ちていた。

 だから読者には早く気づいてほしい。

 僕はこの闇を、ただ悪役のせいで終わらせたくなかった。


 ──だから、お前(梨花)を“鬼面”として書く。

 それが僕の唯一の再設計だった。


十 豹変の加速

 倒れたあの夜から、わずか二週間。

 たった十四日で、人はここまで削げるのかと自分でも驚く。

 体重は七キロ落ちた。指輪より軽い数字なのに、命より重かった。


 食事は本当に与えられなかった。

 冷蔵庫には食材がある。米も卵も味噌もある。

 ふつうの家庭なら一ヶ月は持つ量。

 だが僕の口には一粒も届かなかった。


 朝、肺に入れた息はすぐ消費され、階段を上がるだけで視界が暗くなる。胸が暴れ、鼓動が喉元まで跳ね上がる。

 まるで体内の酸素残量が常にギリギリで、アラームだけが鳴っている状態。


「透さん、まだ起きてんの? 仕事も出来ないのに」


 寝ぼけた声ではない。冴えた声でもない。

 ただ刺すためだけに調整された平板な音。


「求人見てる?」


「 見てるよ。けど頭が働かなくて──」


「それ、逃げてるだけじゃん」


 返す言葉が遅れた。遅れるほど梨花は踏み込んでくる。


「ねぇ透さん。あなた、生きてる意味ある?」


(あぁ…いま確実に殺しにきてる)


 精神的な比喩じゃない。言葉の暴力そのものが質量を持って飛んできている。

 止められない。避けられない。耳を塞いでも内側で振動する。


 スマホはその後も手元にあった。

会社の連絡用だからと表向きは許されていた。

でも梨花はそれを見るたび、鋭く視線を落とした。

 スクロールする親指すら責めの対象になる。

「映画、観てるんだよね?」


「いや…ただ流してるだけで」


「その光、ムカつく」


 回線の灯りが敵だった。情報回路を持つ僕さえ敵だった。


 僕は初めて、社会制度の残像を思い出した。

 有給休暇、傷病手当、わずかな預貯金…

 あるじゃないか。救命ボートはまだあった。

 でも妻の言葉はボートごと海底へ蹴り落とす勢いで続く。


「銀行の口座番号って、覚えてる?」


 その問いかけで僕は凍った。


(なんでそんなこと聞くんだ? いや、聞くな…! 口座を使わせないため? それとも奪う確認か?)


 思考回路が噛み合わない。断線の火花すら飛ばない。

 白い画面みたいな沈黙だけが残る。


「覚えてるわけないだろ…もう…」


 言ってしまったあと、すぐ後悔した。声に力が乗った。弱い力だったのに、押し返したことで梨花の“不安のスイッチ”を押したのだ。


 その日から、彼女は演技の仮面すら外さなくなった。


選択肢は日に日に消えていく。

妻の言葉は冷静でも同情でもなく、ただ削る機能だけが研ぎ澄まされていた。

反論は潰される。説明は拾われない。

それは対話ではなく、交渉不能のチェックボックスだけが並ぶ日々だった。

だが削られていたのは僕の弱さではなく、僕の名前そのものだった。

そして僕はやっと知る。鬼面とは表情ではなく、更新不能の仕様書。

ならば僕の選択は殴れない拳ではなく、書くための拳であるべきだった。


十一 限界のカウントダウン

「透さん、もうやめてよ。私ほんと苦しいの!」


 泣き声が飛び散った。大粒の涙。上等な演技。

 だが、診察室で医師が言った言葉を透の脳は覚えていた。


『謝罪に誠意がない場合、それは“相手を操作するための涙”です』


 あの涙だ。命乞いと支配欲が一つの表情筋で共存している。


泣き止んだ瞬間、目は極端に冷えている。


「ねえ透さん。ほんと悪かったと思ってるの。許して?」

「……」

「許して?」

「……」

「言いなよ。許してって言わせて?」

「……」

「ねえ? ねえ?」


 呼吸より速い連続攻撃。

 間が怖くて返事をするまで続く圧力。


 僕は気づいた。

泣いている妻ではなく、泣かせたい妻。

 意味じゃない。操縦だ。操作だ。経済隔離と精神隔離の連動攻撃。


「俺を泣かせたいのか?」


「違う違う! 私だってつらいの!」


「違う。泣かせたいんだろう? ここは俺の罰場か?」

「なんなのその言い方!」


 その怒りには文脈はなかった。

 ロジックはない。ただスイッチだけ。


「もうメシいらないんでしょ?」


(違う。“いらない”じゃない。“吐けない”。)


 僕の喉は既に拒絶していた。食事は救命ボート。だけど無理に押し込まれた言葉と食事は逆接続されて“死の保証”のように絡みついてくる。


「これじゃ監獄以下だ…いや処刑だ…」


 声はかすれた。でも感覚は正しかった。



十二 非常口の名前

気づけば有給残高と傷病手当はまだ申請可能だった。

 家計の破綻危機は無かった。でも僕自身の生命残高はギリギリだった。


(導線が必要だ…逃げ導線だ…非常口だ…)


 現場監督として数千の安全導線を引いてきた僕が、自分の安全導線を一本も引けない。

 喉から手が出るという比喩すら、この時だけは正確だと思った。


 スマホAIに再び問う。


『モラハラ被害の初期症状は「孤絶」「栄養不足」「自己否定」「逃避行動の否定」です。信頼できる第三者へ連絡を』


 即座に誠の名前が浮かんだ。

 住所は思い出せない。でも友情は思い出せた。


(誠…殴れない拳より強い言葉をくれ)


 僕の命は、今まさに他人の言葉の一撃で決まってしまいそうな状態だった。


十三 絡まった回線(誠との再会)


 限界の白さがまだ頭に残っていた。

 だが、闇は待ってくれなかった。時間はいつも透より先に進み、死より速く差し押さえに来る。


 映画の光は止めた。求人情報も開けなかった。梨花は僕の“焦り”そのものを糾弾し、僕が検索しようとするほど不安を増幅させ、追い込む速度を上げてくる。


「透さん、なんか通知来てるよ?」


 スマホ画面を覗き込む視線。

 目の奥の温度は読めない。表情だけは笑っていた。

 だが、笑顔の輪郭だけで、それが捕食の笑みかどうかは十分わかった。


「会社から?」


「うん。……あなた、出ないの?」


「出れると思うか?」


「仕事なんだから出なよ」


 噛み合わない。噛む位置が違う。

 互いの心の出力先が別次元の端子に繋がっていた。


 僕は震える指で画面下部の検索バーを開いた。

 「モラハラ 症状 夫 被害」

 そう打った瞬間、画面が一瞬だけ白く光る。

 次の瞬間、落雷みたいに言葉が落ちた。


『モラルハラスメント:精神的暴力による支配行為。本人の自覚が欠如し、治療は長期心理療法が中心。まずは信頼できる第三者に相談し距離を確保してください』


 全身が震えた。病名よりも、その回答自体が救急車のサイレンに聞こえた。


 妻の言葉が杭になるたび削がれた僕は、

 そこで初めて、自分以外の誰かの名前が“非常口”になる と理解した。


「誠だ……」


 口にした瞬間、喉が熱かった。


 梨花はこちらを見る。

「誠さん?」


「ああ。俺の命の導線はもうあいつの名前しかない」


「は?」


 声じゃなく音。それでも届いていた。

 届いた上で、理解されていないという事実も届いていた。


「ねえ透さん、私が全部悪いみたいじゃん」


「違う。全部悪いんだ」


「だから何なのその言い方!」

言ってはいけない言動は人間の最低条件のはずなのに。

 僕を追い詰めるのは環境じゃない。人間の回線の切り方だ。

「ねえ? ほんと意味わかんないんだけど」


 僕は答えない。答えられない。

 答えるとまた導線が逆接続されてしまうと気づいたからだ。


 体内の熱を測った。37.4℃。微熱。

 でもこれは熱じゃない。残りの命の電圧の数字だった。


透の独白

(殴れない拳より、強い言葉が必要だ。

 俺は今、言葉だけで殺されてる。

 逆制裁が必要だ。

 責任転嫁の回路を、断ち切る物語が必要だ。

 これが生き直すための叩き台なんだ)


 僕は即座に誠へ送った。


『今すぐ会いたい。場所は公園前の橋。これが最後の導線になるかもしれない』


 返信は二秒。


『OK。すぐ着く』


 その二文字が、いまの僕を生かし直すための電源投入の合図 だった。


十四 友人の正しい声

 僕は誠と、公園前の白い橋の下で再会した。

 潮風ではない、都会の冬風だけが、落ち葉を硬く鳴らしていた。


「透、最近どうだ?」


 誠の声はまっすぐだった。

 僕は曖昧に笑い、言葉の代わりに肩をすくめた。

「仕事は、しばらく休んでる」

「メシは?」


「……まぁ、食べたり食べなかったり」


 嘘だった。食べられていなかった。空気だけ啜っていた。

 だが僕の口は、梨花を守るように話を整えた。


「梨花がさ、全部管理してくれてて。助かってる」


 誠の眉が震えた。

 その震えは図面じゃない。感情のプレートがひび割れる音だった。


「管理って…どこまでだ?」


「カードとか通帳とか…まぁ預けてるだけ。別に普通だろ?」

「普通じゃねぇよ…!」


 初めて誠が声を荒げた。

 僕は、その瞬間、自分でも驚くほどビクついた。

 職人の怒声は平気なのに、妻の否定を通した怒りは何より怖かった。


「怒るなよ誠。梨花は悪くない。俺が弱ってるから──」


「透…それが洗脳なんだよ…!」


 誠の目尻が濡れた。

 飲みの席でも泣かない男が、声を震わせていた。


「俺が紹介したばっかりに…俺のせいで…」


 彼はぽろりと涙を落とした。

 その涙は僕を責める涙じゃない。僕を起動し直す涙だった。


「違う、誠のせいじゃない」


「いや…俺の紹介が…お前の非常口を塞いだんだ…」


 彼の涙が、僕の胸に滴った。

 滴ったのは塩分か? いや、尊厳回路の通電液だ。

その日、僕は初めて、自分の過失の本当の名前に触れた。


「誰をかばっているんだ? 俺は誰に依存させられている?」


 心の奥で、絡まったケーブルを一本掴んだ感覚があった。


「透。相談員に話せ。第三者を入れろ。お前だけじゃもう無理だ」


「でも梨花が──」


「“でも”じゃねぇ。お前の“でも”が命を削ってんだよ!」


 誠の涙が止まり、言葉は発火し、光より熱かった。


 僕はやっと気づいた。

 守っていたのは梨花の尊厳じゃない。梨花の権力に飼われた僕の沈黙だった。


 改善は梨花のためじゃない。僕の命のためだ。

 ――そう認識した瞬間、視界の白さが一枚、薄く剥がれた。


誠「透、俺はお前を責めたいんじゃねぇ。回線繋ぎたいんだ。お前を“生き直す側”に」


透「……わかった。話す」


 その承諾は小さかった。

 でもその“小ささ”こそ、僕の命の電圧を上げる最初の単位だった。


 僕は誠とともに、病院の相談室へ向かった。

 そこでは彼の涙はもう謝罪ではなく、洗脳解除の導火線として生きていた。


十五 外側の声

 病院の相談室は白かった。

救命処置のための白ではなく、事実を書き留めるための白だった。

 椅子に座るだけで骨がきしむ。頬は落ち、声は擦れる。だが、もう誠以外の影はこの部屋に入れない。

相談員は五十代の女性だった。

優しいが、誠よりわずかに速く核心に触れる人だった。


「神谷さん。いま困っていることを、言える範囲でいいので」


 僕は震える手を膝に押しつけた。逃げ道を描く指が、やっとペンを握れた。


「……お金が、ないんです。いや、あるのに…使えない。全部取り上げられてて」


「誰に?」


「妻です」


「食事は?」


「もう…四日、何も口に入ってません」

相談員がわずかに息を止めた。

 その沈黙は同情のためではない。危機の重さを計算しているための一秒だった。


「それは立派なDV環境です。精神的支配と経済的隔離。身体の危険まで出ている」


「……でも僕が弱いから──」


「弱いからではありません。制度で守られるべき状態のときに、支配されている。そこが問題の本丸です」


 その言葉が肺の奥まで入った。初めて空気が甘かった。


「有給はありますね?」


「はい。一ヶ月分は」


「傷病手当の申請もできます。制度的には生活は持つ。でも“あなた”が持たない」


 僕の喉が震えた。


「わたし、夫婦ってのは…ギブアンドテイク…信頼と許しだと思ってたんです」


「その通りです。だからこそ、“奪う側”の言動は治療ではなく隔離と境界線が先です」


誠がそこで口を開いた。


「俺の紹介でケーブル絡ませたみたいで、すみません…」


 誠の涙はもう零れていなかった。だが声は泣いていた。

 その声に濡れた温度は、僕の洗脳を溶かす“霧雨”だった。


透「誠、お前は悪くない。

 悪いのは導線じゃない。導線を切らせない支配だ」


相談員「ここからの安全は、あなたが線を引いて確保しないといけない。暴力から離れてください」


 僕は頷いた。

 それは制度理解の頷きではなく、自分の尊厳を書き留める署名のようだった。


十六 解除の速度


 帰宅後、僕は再びAI検索バーを開いた。誠ではなく外世界に問う。


『モラハラ被害 対処法 相談先』


 回答は雷のように速かった。


『市区町村の配偶者暴力相談支援センター / 医療機関の相談窓口 / 信頼できる友人 / 法的支援(弁護士)』


 その瞬間、僕の頭の中で外側の声の重みが一気に増した。

 妻の言葉は薄い。だがAIの言葉は太い。質量が違う。


 僕は震える親指で誠に相談先リストを転送した。


透「誠。このリンクだけは見てくれ。命の仕様書だ」


誠「おう。ちゃんと受け取る」


透「俺は…もう東京の自分の中だけで戦わない。外側の世界の言葉で動く」


誠「それでいい」


 友情の返答は短かった。だが僕の胸の奥の電圧は確かに上がっていた。


十七 青白い拒絶

 弁護士との初面談の日、僕は病院のロビーにいた。

 民法だの慰謝料だの、そんな言葉が遠雷みたいに聞こえるのに、理解の火花はまだ散っていた。


「神谷さん。精神的苦痛の立証は十分可能です。慰謝料請求も……折半分とは別に」


 僕は椅子に座ったまま、ただ一瞬、頷いた。

 だがその頷きは、自分の尊厳に署名する覚悟の確認印だった。

しかし、病院の駐車場へ向かう途中、梨花が急に姿を見せた。

 いつの間に戻ってきたのか。気配は薄く、だが刃物より近かった。


「透さん。弁護士なんて必要ないよね?」


 その瞬間、僕の足は止まった。

「あるよ」


「……は?」


「ある。必要だから、ここに立ってるんだろ」


 梨花がゆっくりと振り返った。

 その動作は、演技の涙でも癇癪の怒りでもなかった。

 “無感情な装置”がこちらの存在を測定し直しただけのように、ひどく冷たかった。

そして僕の胸を凍らせたのは、その目だった。


 まるで、生気を吸い取られた夜の水面みたいな黒目。

 光を反射しない。何も宿さない。底がない。

 怒ってもいない。泣いてもいない。憎んでもいない。

 ただ、透を存在として認識していない。


 それは鬼の面より重い無表情だった。


 誠が僕の横に立ち、息を呑んだ。


誠「透……お前の妻、いま俺を見てすらいないぞ」


 僕は震える声で言った。


透「……あれが、梨花の素顔だ」

僕はさらに言葉を重ねた。

 冬の空気より白く、医療の白より濃い白。


透「虚無な瞳=他人の死を想像できない回路だ。

 俺はあの目に何度か殺されかけた。

 理由を与えると免罪が生まれる。

 でも免責はない。だから制裁だけ負わせる。

 彼女は俺を“人間として”ではなく“所有物として”すら見ていない」


 梨花の目は、相変わらず焦点を結ばない。

 ただの黒だ。濁った黒じゃない。空洞の黒だ。


 僕はそこで、初めて怒りの本当の意味を理解した。

 環境のせいじゃない。知識不足でもない。

 彼女は僕の尊厳を認識する“視線”自体を持っていなかっただけだ。

僕は、そこから先を会話にしなかった。

 対話できる相手ではないと確定した瞬間だったからだ。


十八 冬の牙、東京の喉

 東京の冬は、優しい顔をしない。

 人混みは色を失い、電車は鉄の匂いで満ちている。

 僕の身体はその空気さえ処理できない状態まで沈んでいた。


 誠は僕を支援センターの面談室まで導いた。

 僕の足取りはゆっくりだったのに、心の方は走っていた。逃げ場を求めて、息が叫びを上げていた。


「配偶者暴力相談支援センターの方と連携を取ります。いま一番危険なのは“あなたの受信機能が壊れた精神に攻撃が続いていること”です」

相談員の言葉が、やっと僕の胸に直接差し込まれた。

 光ではなく導線、温度ではなく実体のある救助。


 だが、その数日後、梨花の追撃はさらに激しくなる。


「透さん、私ほんとつらいの、わかって?」


 泣いている梨花ではなく、泣かせたい梨花。

 その瞳は、いまだ光を反射しない。


 僕の中で、その目の名はすでに決まっていた。


(虚無な瞳……鬼より怖い目……)


 彼女が僕の体重計と診断書を握り、生活費も口座もカードも奪った頃、僕はすでに生きているだけで死にかけの状態だった。


「あなたは仕事に追い込まれたのではない。名指しの尊厳破壊に追い込まれてる」


 相談員の声が再び響く。


 僕は震える親指で誠に呟くように言った。


『俺の命の仕様は、誰かの“外側の声”でしか救えない所まで来てる』


 返信は即。


『じゃあ外側の声を増やす。回復まで止まらん』


 その返答が、僕の中に灯った命の再起動だった。


十九 奪われた設計図


 支援センターの連携は、驚くほど速かった。僕の命の電圧が落ち切る前に、大人たちの声は現実的な安全導線を引いていく。


 相談員・看護師・弁護士──そのチームは、僕がかつて現場で組んできた工程会議よりも静かに、しかし確実に噛み合っていた。


「神谷さん、ご家族やご友人で“連絡できる方”は他に?」


 僕は少し迷った。だが誠が横で囁いた。


「逃げるんじゃねぇぞ透。“選ぶんだ”」


 選ぶ。

 ああ、僕は今、自分の未来の図面をやっと描き直しているのだ。

僕は支援センターに、誠以外の名前を預けた。


・弟の和輝(静かだが計画的で読書家)

・仕事の先輩・真壁誠一(過去に数度助けてもらった頼れる存在)


 その署名を、震える指で記した。


(これが俺の、最後の救命仕様書だ)


 自分で書くと、やっと自分で信じられた。


二十 白から黒へ


 数日後、僕は梨花の不条理な問いかけの意味を“理解できない自分”をようやく否定できるようになっていた。


 有給残高の申請書類。

 傷病手当の申請書。

 区役所の保護制度案内書。

 弁護士の名刺。


 それらは机の上のただの紙切れではなく……

 僕が取り戻した“自分用の工程図”そのものだった。


 だが、問題は制度ではない。


 制度は持つ。家計も持つ。世界も持つ。

 ……だが妻の攻撃は持たなかった。


 僕は、それを認識した上でさらに検索した。


『モラハラ 加害者 自覚欠如 特徴』


 表示された文章にはこう続いていた。


『強い見捨てられ不安が支配衝動と責め行動に変質することがあります。まずは被害者側の境界線確保と、安全距離が最優先です』


「距離の確保」が「離婚」や「制裁」よりも先に必要なのだと、僕はようやく理解した。


 だがその瞬間──ロビーの出口から、梨花がまたぬっと現れた。


 あの目で。


 人を見ていないのに、人を壊せる目で。


(虚無な瞳は、反省よりも先に……受信機能すら無かった。)


 それが「鬼面」より怖い“白黒解除不能の存在性喪失”だと、僕は知った。


二十一 回復の陰で

僕はもう笑顔を返せる日もあった。歩ける距離も伸びていた。薬も制度も受け入れ、脳のノイズもきちんと流れていく。


 だが梨花は、僕が回復すればするほど不安をぶつける方向を変えただけだった。


「透さん……そんな弱いままじゃ私が困るんだって!」


「スマホずっと見てるんでしょ?」


「求人探しても無意味じゃん。だって仕事できないじゃん」


 透の回復は、彼女には

 解放=恐怖=支配の崩壊=危機

 というように逆接続されてしまう。


 だから意味じゃない。回路だ。

 さらに進化する加害者は、最初から“改善機能付きの悪役”なんて仕様書には載っていなかった。


二十二 預ける名前、舵を切る指

僕はある日、自分の中の空腹に向き合った。


(味噌汁の匂いが、苦しかった頃の死の匂いと繋がっていたから、ずっと怖かったんだ。でも今の味噌汁は…優しい匂いなんだ)


 制度が許す生活よりも先に、自分が自分を維持するためのボーダー線が必要だった。


 僕は誠に言った。


「東京ではなく、人の目ではなく、“殴れない拳より言葉の治安”が僕を救う」


 誠は返した。


「ならば“海を越えた導線=沖縄=再起動装置”だってある」


 その僕の中のケーブルはやっと未来の端子へ繋がり直し、生命の電圧が少し上がった。


「逃げるんじゃない。離脱するんだ。自分を守る側に立つために」


 それが僕の決めた、唯一の戦術だった。


 ──そして僕は、妻をただの悪役ではなく、人間の改善仕様の無い“牙の人”として描いた。

 それが最初から作品の使命だったからだ。


二十三 法廷の冬風

 東京家庭裁判所の建物に入った瞬間、空気が変わった。

 冬の匂いと蛍光灯の光が混ざり、消毒液でも海でもない無機質な白に満ちている。窓の外の風は枯れ木を鳴らし、静けさすら刃になりそうな場所だった。


 だが、今日の僕は震えるだけの人間じゃなかった。

 震えながら、線を引く側の人間だった。


 開廷のベルが鳴る。低く短い電子音。乾いた合図。

 法廷に入ると、木製のベンチがひんやり硬い。座ると骨がきしむが、不安よりも先に怒りを計測する冷気が肌の上を走った。


 裁判官は淡々とこちらを見る。

 しかし視線は 梨花の虚無な瞳とは違った。

 僕という存在をちゃんと測り、言葉を差し向けるための視線だった。

「透さん、主張をどうぞ」

僕は息を吸い、短く言った。


「妻の攻撃は“夫婦のやり取り”じゃない。

 “人格の尊厳破壊”です。僕は生きるために離れただけです」


 法廷が少しだけ沈黙した。

 だがその沈黙には解釈の余白があった。


二十四 証言台の影

次は証言の時間だった。

 僕は間違いなくここ三年で一番真面目な設計図を書いたのに、その設計図自体を妻に否定された。

 それがこの裁判の本質だった。


 証言台に座る。不安でも同情でもない。事実確認席に座る。

弁護士(代理)「相手の行為は外傷をともなわないDV、言葉と態度による精神的暴力の反復です」


 裁判官が問う。


「具体的な頻度は?」


弁護士「ほぼ毎日。人格否定は一日数十回、

泣き落とし演技は週数回、経済隔離は継続状態です」


 僕はそこで追加で発言した。


透「彼女は言葉だけじゃない。

 回復制度の話を“悪意のある所有物管理”として僕から剥ぎ取った。

 僕の脳を“使えない人間”として自己定義させた。

 それが本当の洗脳です」


 誠が傍聴席で拳を握っていた。

 だが拳は出ない。出すと逆に僕が加害者になる。


誠「あの頃の透の目は、濁っていたわけじゃない。

 光を処理できないほど弱っていたんだ」


 その誠の一言で、僕の視界がまた少し開いた。


二十五 妻の番

梨花は奥の席で立ち上がった。

 涙を落とす。だが目の奥は空だった。


「透さん…ごめんなさい…ほんと反省してるの…!」


 法廷には“造花の涙”が落ちる音だけが鳴った。

 その目は白く、瞳孔の黒さだけが妙に浮いている。


 僕は透の内側で呟いた。


(泣いているんじゃない。泣かせたいんだ。この人は)


 裁判官は淡々と判断を下す。


「神谷梨花さん。あなたの言動は配偶者に対する“心理的暴力の反復による婚姻関係の破綻”と認識します」


 その言葉を聞いた瞬間、僕の中で冷気が通電した。

 怒りでもなく絶望でもなく、確証の電流。


二十六 結末の導線

判決はこう続いた。

「婚姻関係は破綻と認定。

 離婚成立。

 財産分与は折半。

 加えて慰謝料請求の権利は保持」


 折半後、僕には初めて自由の余白が生まれた。

 制度が守ってくれた有給と傷病手当よりも先に、僕自身の尊厳がやっと認識された。


透「……先生……これで……僕は……生き直せます」


裁判官「それは法律の“許可”ではなく、あなた自身の“選択”です」


 選択。

 僕はここで再び署名をした。

 東京の名前ではなく、新しい人生の導線へ繋がる署名。

妻を悪役にしたわけじゃない。

 最初から“加害の機能しかない梯子ハシゴの人”だった。

 その機能が僕の未来を削り落とし続けただけだった。


 その日、僕はベンチから立ち上がり、初めて東京の空気を自分のために吸い込むことができた。


(まだ喉が震える。でもこの喉は、もう誰かを免責するための喉じゃない。

 自分を救い直すための喉だ)


二十七 海を越える非常口

 離婚の判決から一か月。

 透は羽田のロビーで、風と立っていた。


 ガラスの向こうの滑走路は曇り、光はぼんやり滲む。

 だがその光はもう、自分を責める白ではない。外側へ繋ぐための白だった。


「片道でいいのか?」


 誠は短く問うた。

 相手の顔は悲しみで曇っていた。だがその表情筋は、誰かを殴るためではなく、透を測定するための陰影だ。


「ああ。逃げじゃない。舵の切り替えだ」


 震える声じゃない。だが喉は震えていた。

 病院の非常口から、空港の非常口へ。


「了解。じゃ俺は見届け人だ」


 誠はそれだけ言って、拳を開いた。手のひらで空気を押さえ、泣きそうな笑みを浮かべただけだった。

飛行機のドアが閉まる。吸気風が吹き、僕の胸を薄く撫でる。

 耳裏で乱れていたノイズは、翼音に紛れてくれなかった。だが、それは透自身のノイズだった。


 窓の下で沖縄の海が光っている。

 その青は、誰にも奪われていない。まだ遠い。でも迎えに来てる色だった。


 梶間医院の階

那覇空港に降りた瞬間、潮風が肺に入った。

 まるで僕のからっぽの胸を、勝手に採寸しに来る空気。冷静なのに馴れ馴れしくない。優しいのに許可を求めてこない。


「疲れてんの?」


 空港出口で立っていたのは仲本章吾(45)。

 鋼みたいな目をしているのに、人の形をちゃんと見ている目だった。

「うつ、って測ってもらいに来ました」


「ならここが暫時ざんじの回復棟。お前の基礎は折れてない。ただ曲がってただけだ。組む位置、変えろ」


 その言葉で、僕の肺が初めて息の位置を思い出した。


 そのまま病院へ運ばれた。

 仲本が連絡を回したのは、過去の医師の後輩・梶間優斗(50)だった。


 問診票を眺める視線。

 その視線は理解過多でも虚無でもなく、“受信の余白”がちゃんとある視線だった。


「有給、あるね?」


 医師は診断より速く制度に触れた。


「はい。でも、会社にこれ以上迷惑かけたくなくて」


「迷惑じゃない。制度はあなたをここに座らせるための基礎に過ぎない。重要なのは“ここから生き直すあなた自身の設計”だ」


 僕は頷いた。これまでの「頷き」と違っていた。

 その承諾には、取り戻した自立の微電流があった。


 潮のベンチ

退院後、僕は海辺のベンチに座っていた。

 都会のベンチはいつも冷えていたが、沖縄のベンチはただ温度があるだけじゃない。再測定のための場所だった。


 体重は戻らない。気力もまだ編集中へんしゅうちゅうだ。

 だが、誠と先輩・仲本、医師・梶間の言葉は、僕の脳裏のケーブルを一気にほどいた。


「それで、これからどうするつもりなの?」


 誠は病院の帰路で問う。


(僕にはもう…誰にも免罪の理由づけをさせたくなかった)


透「僕の人生、罰場ばつばじゃない。“工事中”なんですよ」


誠「なら“完成”じゃねぇ。“稼働かどう”まで描け」


 僕は薄く笑って、泣いた。

 完


 人はときに、過去や環境のせいにしたくなるものです。

しかし私は、暴力や支配を “理由” で許したくありませんでした。


モラルハラスメントには、本人の自覚がほとんどありません。

だから反省も改善も起こりにくく、被害者だけが壊れていく。

この構造を知ってほしくて、私はあえて加害者の過去を描きませんでした。


たとえ幼少期に傷があったとしても、誰かを破壊してよい理由にはならない。

もし被害者が命を絶ってしまったら、「仕方ない」で済むはずがないのです。


人間には、してはならない言動があります。

その線を越えた瞬間、それは暴力です。

どうかこの物語が、“気づけば早く抜け出せたかもしれない闇”を誰かに知らせる灯りとなりますように。


── 城田蒼志


この物語を書き終えたとき、私は「言葉とは、人を救う刃にも、傷つける刃にもなるのだ」と改めて実感した。主人公・透は、物語の序盤では決して弱い人間ではない。むしろ責任感が強く、誠実で、他者のために働き続けてきた男だ。だからこそ、彼の崩壊は静かで、周囲には伝わりにくい。いや、本人すら気づけない。

 家庭内での心理的暴力は、外からは見えない。しかし、見えないという理由で存在しないわけではない。本作では、あえて殴る・怒鳴るといった分かりやすい暴力を排し、「日常の会話の少しの歪み」「沈黙の距離」「小さな否定の積み重ね」が、人間の尊厳をどれほど脅かすかに焦点を置いた。

 梨花は悪役ではない。彼女自身も不安と恐怖を抱え、他者の弱さを受け止める器を持ち合わせていなかっただけだ。人は追い詰められると、優しさや共感よりも「自分を守るための攻撃性」が先に立つ。梨花の“虚無な瞳”は、悪意の象徴ではなく、「想像力の欠落」という現実的な問題の象徴である。

 そして、透を救ったのは制度でも医療でもなく、“他者の言葉”だった。友人・誠の涙、相談員の静かな助言、外部の声。人は、たった一人の視線や言葉によって、ここまで救われることがある。逆にいえば、一人の言葉でここまで壊れることもあるということだ。

 本作が誰かの心の奥に、小さな灯りをともすことを願っている。もしあなたの周りに“声を失いかけている誰か”がいるなら、その沈黙の向こうにある痛みに気づいてほしい。

 そして、透のように、自分の人生を再び選び直せる未来が、あなたにも、あなたの大切な人にも訪れることを心から祈っている。

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