表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

8/8

第8話:命の星より(最終章)

旅の果てに、光の列車はたどり着いた。

そこは、黄泉の国でも、未来の門でもなかった。


“その先”――

魂たちが、すべての想いを手放したあとにたどり着く、もうひとつの場所。


名前はない。けれど、人はそこをこう呼んだ。


命のソウルスター


命の記憶が集まる場所。

悲しみも、涙も、喜びも、すべてが“光”として還っていく場所。



◆ 命の記憶は、光になる


命の星には、無数の光が漂っていた。

それぞれが、ひとつの人生のかけら。


たった一言が言えなかった後悔。

手を握れなかった時間。

ありがとう、と伝えられなかった想い。


けれど、誰かの“祈り”が届くたびに――

それらの光が、やさしく輝きを取り戻していく。


「あなたの命は、確かにあった」

「その人生は、誰かを支えていた」


命に、価値の重さなどいらない。

生きたこと、それだけがすでに“光”なのだと、

この場所が教えてくれる。



◆ 子どもたちの祈り


地上では、いまも誰かが祈っている。


「天国のおじいちゃんへ」

「会いたいよ、お母さん」

「空の上でも元気でいてね」


その祈りは、夜空を渡って命の星へ届く。

小さな言葉、小さな涙が、確かにここに降り注ぐ。


祈りを受け取った魂は、そっと微笑む。


「まだ、忘れられていない」

「まだ、つながっている」


それだけで、魂は救われていく。



◆ 星の図書館


命の星の中心には、「星の図書館」があった。

そこには、すべての命の物語が収められている。


人だけでなく、動物も、木も、花も、

この星で生きていたあらゆる命の記録。


1ページ、また1ページ。

誰かの人生が、たしかにあった証として残っている。


そして、その本は誰かの夢の中で開かれ、

未来を生きる人へ“やさしさのかけら”として届いていく。



◆ 命は、めぐる


旅を終えた魂たちは、やがてまた光の種になる。

次の星へ、次の命へ――


どこかの赤ちゃんの笑顔に宿り、

偶然すれ違う誰かの瞳にひそみ、

風になり、雨になり、あたたかな光となる。


命は、終わらない。

想いが続く限り、形を変えて、何度でもめぐっていく。



◆ そして、あなたへ


この物語を、ここまで読んでくださったあなたへ。


あなたが誰かを想ったとき、

あなたが涙を流したとき、

あなたが誰かにやさしくしたとき――


きっと、あなたの中にも光の列車が走っていました。


もう会えないと思っていた人と、

もう触れられないと思っていた想いと、

あなたは、ちゃんと、出会い直していたのです。



◆ 最後のメッセージ


死は終わりではなく、

命の音楽の一区切り。


やさしさは、姿を変えて、

どんな星でも通じ合う“永遠の言葉”。



― 完 ―


『光の列車 ―黄泉の国行き―』 終着駅にて


『光の列車 ―黄泉の国行き―』を、最後までお読みいただき、本当にありがとうございました。


この物語は、

「死後の世界にも、やさしさがあってほしい」

「亡くなった人たちが、悲しみのまま終わるのではなく、癒されてほしい」

そんな想いから生まれました。


特攻で命を落とした青年、

原爆で家族と別れた少女、

地下鉄事件で子どもを遺して旅立った母親、

地震や津波、事件、孤独死――

さまざまな“かたち”で人生の幕を下ろした人たちが、

“光の列車”というやさしい空間の中で、自分を赦し、誰かと再会し、未来を選んでいく。


そんな旅を、あなたが一緒に見守ってくださったことに、心から感謝しています。



わたしたちは、日々のなかで「命の重さ」や「死」と向き合う場面に、突然立たされることがあります。

そのとき、すぐに正解を出せる人なんて、きっといません。


けれど――

この物語を読んだあとで、

少しだけ誰かに優しくなれたり、

もう一歩、前に進む勇気が湧いてきたり、

夜空の星を見て、大切な人を思い出せたなら。


この作品は、それだけで十分報われます。



見えなくても、

声が届かなくても、

想いは、きっと残っている。


あなたが生きている今この瞬間も、

誰かの光が、そっと背中を押してくれているかもしれません。



この物語が、あなたの心にそっと寄り添い、

日々のどこかで灯となれたなら、これ以上の喜びはありません。


いつかまた、別の物語でお会いできますように。


最後までお付き合いくださり、本当にありがとうございました。


―― 心をこめて


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ