慈愛の光
仮面の勇者外伝、慈愛の光。
リゼの話です。
これを読めば仮面の勇者第9話以降がさらに楽しめるでしょう。
それでは、冒険の始まりです。
慈愛の光
私にさす光は、どこだろう
:氷の教会 1
寒い、暗い、痛い
パパ、ママ、どこにいるの?
あの家、明るいな
暖炉、あったかそうだな
ここはどこなの? 私は……どこ?
「おいガキ、邪魔だぞ」
だれ? やめて、来ないで、怖いよ
「がははは、怖がってるぞ、お前ら! 来てみろよ!」
大人の人が、2、3人も来てる……怖いよ
「そのガキ、髪も目もいい色してやがる、結構高値で売れそうだ」
痩せた男が言う
「ん? おい待て、そのガキ、金硬病じゃねえか?」
背の小さい男が言う
きんこうびょう?
「はっ、使い物になんねぇか……。なら、俺たちで使っちまうか」
そう言って太った男が近寄ってくる
「おい、待てよ」
だれ? あの人? 仮面をつけてる……
「子ども1人に大人4人か……お前たち、恥ずかしくないのか?」
「あ? テメェ、舐めてんのか!」
男たちの1人が殴りかかる、しかし拳は躱され仮面の人は男を転ばせ、手刀で気絶させる
「よくも!」
今度は残りの内2人が左右から殴りかかるがやはり避けられ、お互いの拳が顔に当たり2人は気絶する
「はぁ、まったく、使えねえ奴らだな」
そう言い太った男はナイフを出して仮面の男に斬りかかった
しかし男が何回ナイフを振ろうと仮面の男に当たることは無かった
そして仮面の男は男の腹に蹴りを入れ、太った男は悶絶する
「さぁ選択しろ、悪事をやめ罪を償うか、ここで俺に殺されるか」
仮面の男は太った男からナイフを取り上げる
「あ、あ、し、死にたくないー!」
男はそう言って逃げる、仮面の人は男を追い縄で縛る
「もう時期ここに警備隊が来る。残念だったな犯罪者」
あ、あの人近づいてくる、助けてくれたのかな?
「大丈夫か嬢ちゃん、できれば名前を教えて欲しいんだが……あ、俺の名前はシーニィ。シーニィ・ブラッドだ」
名前……
「私は、リゼ・ヘルフィです。えっと、ありがとう……ござい……ました……」
あれ、なんか、疲れて、あぁ、眠い
「ん? おいリゼ!? 大丈夫か!?」
あぁ、人の手が、あったかい
2
「あれ? ここ、どこ?」
目を覚ますと、白いベッドの上にいた、仮面の人、シーニィさんはいなくなってた。
今、私は綺麗な部屋にいる。暖炉があってあったかくてあったかいご飯がある
「おや? 起きたのかい、よかったよかった」
修道女の格好をしたタバコをふかした女の人が来た
「アタシはリンファ、ただのしがない修道女さ。アンタ、昨日のこと覚えてるかい?」
私は首を縦に振った
「えっと、パパとママがいなくなって、探してたら、変な人たちに会って。仮面をつけた人が助けてくれて……」
あれ? あの人はどこに行ったんだろう
「そこまで覚えてんなら大丈夫か…ところでアンタ、今いくつだい?」
いくつ? 何歳かってことかな?
「6歳です」
リンファさんはタバコの煙を吹いて小さな声で言った
「あと4年か………ラウィリア……」
ラウィリア? たしか、ママもラウィリアって名前だったはず……
「アンタ、昨日奴隷商人の大人たちに囲まれててね、アタシが通った時仮面の男とその子ども売りが戦っててさ」
そう言ってリンファさんは近づいてきて私の頭を撫でる
「アンタが倒れちまったから、アタシがいるこの教会に連れて来たってワケさ。仮面の男は今、表で洗濯モン干してると思うから、そろそろ戻っくると思うよ」
あの仮面の人、たしか名前は……シーニィさん
その時、どたどたと激しい音を立てて部屋の中に仮面をつけた人が入って来た
「おお! 起きたか嬢ちゃん!」
真っ黒な仮面をつけた、左目から口の位置まで伸びた大きな傷
「シーニィさん」
そう言うとシーニィさんは息を吐き、安堵した様子だった
「よかったぁぁぁああ。嬢ちゃん、痛いとこねぇか? なんかあったら俺に言ってくれよ!」
「あ、は、はい」
シーニィさんは歯を出して微笑んでいた
3
あれから数日、私はこの教会でお世話になった
家事を手伝ったり、神様にお祈りをしたり
この教会は破壊神コロウア様を信仰している場所だった。この教会は街から少し離れていて、修道女が1人でリンファさんだけらしい
「ははは、この国の修道女なんてろくなヤツがいないさ、私も同様にね。だから、修道女なんて1人でいいのさ」
リンファさんはそう言っていた
そんなある日
「シーニィさん、リンファさん、どうしたの?」
夜に2人に呼ばれた
「リゼ、アンタに大事な話がある。少し、きついことになるかもしれない。覚悟して聞きな」
リンファさんはタバコを吸っていない、今は真面目な時間だ
「嬢ちゃん、俺は、嬢ちゃんの味方だからよ、どんな結果出しても、俺は嬢ちゃんの味方だぜ」
シーニィさんは何を言ってるんだろう? 私の事だろうけど、一体なんのことだろ
「リゼ、お前は金硬病と言う病気でな、これは、治さなければ10歳前後で死んでしまう病なんだ」
10歳で?
「安心しな嬢ちゃん、治す方法はある。あるんだけどよ……ちょっと厳しいんだ」
きびしい?
「まぁだから、覚悟が必要なんだ。リゼ、アンタ、旅に行く覚悟はあるかい? 旅に行けば、もうここに戻って来られないかもしれない、それでも行く覚悟が、アンタにあるかい?」
旅に行く覚悟
「でも、ママとパパがいないの、2人ともいなくなっちゃったから探さなきゃ…」
ママもパパも、どこに行っちゃたのかわからないのに
「……リゼ、アンタのパパとママは……死んでしまったよ」
「しん……だ? どういうこと?」
「なぁリンファ、いいのか?」
リンファは目を閉じて手を握りしめた
「あぁ、アタシの、修道女の仕事は嘘をついて誤魔化すことじゃない、正しいことを教えて、命の尊さを教えることだ」
シーニィは少し考えて立ち上がった
「そうだな」
そのままシーニィは部屋から出ていく
私はママとパパが死んでしまったこと、どうして死んだか、命の儚さ、命の大切さを、リンファさんに教えてもらった
そして私は、その日は一日中泣いた
4
「あの子の、リゼの母親は、唯一カルナイ教で聖女の称号を持ったヤツだった」
俺とリンファはリゼと話した部屋から出て話している
「アタシは……リゼの母親、ラウィリアとは親友だった。アタシはカルナイ教で唯一の聖女の称号を持っていたし、同じ唯一だから、仲が良かったんだ」
カルナイ教とコロウア教の聖女が仲良しか……いい事だな
「まぁしかし知っての通り、ここ、氷の国シルファンではカルナイ教が酷く嫌われている。だから、コロウア教の狂信者にラウィリアは殺された…」
聞いた通りだな………
「そんでもって、父親が癌で病死…親戚はいない…。まぁ、両親が死んだってのをリゼに伝えたのは、正しいと思うぜ、俺はな」
にしても、コロウア教の狂信者ってもしかして…アイツか?
「シーニィ、お前が考えている通り、ラウィリアを殺したのはミリィド・リーフィード、コロウア教聖女候補だ」
たしかミリィドってまだ20歳くらいか…まぁ狂信者だし、殺す可能性はあるか
「金硬病、治す方法は確かにある、治しに行くのも簡単…でもよ、ミリィドの追手が来たらどうする?リゼの病を治したとしても、命狙われてちゃやべぇだろ」
俺だって、リゼをずっと守れるわけじゃねぇ
「ああ、確かに、ミリィドはリゼの命を狙ってる。しかし、ミリィドはこの国、シルファンから外に手を出せない。だから、あの子を外国に逃すんだ」
シルファンの法律は外国では通用しない、確かに、この国から逃せば可能性はある…けど…
「行ける国は岩の国デッグドッズか自然の国エリフェルだけ」
だが、エリフェルは人間嫌いで有名だ、ならデッグドッズに行かせるのが吉か
「アタシはデッグドッズに行かせるのが良いと思うが、港が遠すぎる」
デッグドッズ行きの船が出る港に行くには、ここから馬車で1週間ほどかかる
「その間にミリィドが襲ってくる可能性は大きいな」
ミリィド…ここで殺しちまえば…いや、それはダメだ
「明日、リゼに旅に出る気はあるか聞く、もし嫌だと言われても、連れていく。いいな?シーニィ」
「あぁ、これはリゼのためでもある」
そんでもって、キョーダイのためでもある
:凍てつく旅立ち 1
「私、行く。旅に出る」
次の日の朝、リゼが自分からそう言って来た
「わかったよリゼ、出発は明後日だ、シーニィと一緒に準備しな」
「え?俺も一緒にかよー、めんどー」
「文句言わないでさっさと行きな!」
「へいへーい」
そう言ってリゼとシーニィは出かけていった。
さてと、アタシも準備しないとね
2
「嬢ちゃん、何が欲しいよ」
シーニィさんがそう聞いてくる
「えっと、えっと、旅って何が必要なの?」
そう聞くとシーニィさんはうーんと言って考えている
「食いモンと、いろんな必需品、あと武器だな」
ぶき?
「よし、リゼにはこれとこれだな!」
そう言ってシーニィさんは短剣と魔法使いが使うような杖を買ってきた
「この杖、大きい」
私の身長よりも大きいサイズの杖だった、短剣も子どもの手だから大きく感じる
「嬢ちゃん、短剣は、多分嬢ちゃんはあんま使えねえと思う。だからよ、いつか誰かにプレゼントするってのもありかもな」
そう言ってシーニィさんは私の肩を優しく叩いた
それから、旅に必要なものを買って、旅立ちの日が来た
3
「アタシたちは氷の国シルファンから出て岩の国デッグドッズに行ったあと、海を通り雷の国クレリチアに行く。そこで金硬病を治す」
金硬病、リンファさんからどんな病気か聞いたけど、どんどん体が宝石のように硬くなっていって、いつしか宝石になってしまうという病である
しかしその宝石を加工、換金する事はシルファンでは違法、だからこの病は恐れられ、嫌われている
私は左手の手の甲が宝石になっている、10歳になる頃には体の7割が宝石になってしまうらしい
だが、クレリチアと自然の国エリフェルではこの病を治すことができる。クレリチア以外でも、クレリチアのある大陸の国、炎の国ガウィタチン、光の国ハルファウルでも治すことができるし、エリフェルのある大陸にある他の国でも治す事はできる
だが、この国、氷の国シルファンと岩の国デッグドッズでは治すことができない
「この病は特定の雷魔法を使うことで治療ができる、だが、岩魔法以外が使えないデッグドッズの者たちでは治療ができない」
そしてこの国は半鎖国状態……他国から技術を学ぶ事はないのだ…
「まぁ考えていても仕方ないさ、リゼ、旅に出る準備はできてるかい?」
不安…だけど、楽しそう
「はい、できてます!」
さぁ、冒険の始まりです!
:魔法を覚えましょう! 1
「リゼ、アンタ、魔法は使えるかい?」
「え、いいえ、使えません…」
魔法か…大人の人がよく使ってるやつかな
「よし、じゃあシーニィ、教えてやんな」
「え!?俺かよぉ〜」
そう言ってシーニィさんは馬車を止めて降りる
「よし、まずは嬢ちゃんの適正から見ていこうか」
そう言ってシーニィさんは白色の玉を出して私の前に出した
「なるほどな、嬢ちゃんは光の適性がめっちゃ高いな、こりゃ賢者サマより高ぇかも…」
賢者サマ?誰のことだろう
「まぁ、一通り覚えておけばなんとかなるだろうよ」
そう言ってシーニィさんは魔法の打ち方とかを教えてくれた、適正?っていうのがなくても打つ事はできるみたいです
「まぁ杖を使えば狙いを定めたりとか、魔法が安定したりとか、いろいろ利点があっから、持っておくといいぜ!」
へぇ、そうなんですか
「まぁ嬢ちゃんも、いつか誰かに魔法を教える時が来るかもな」
誰かに…魔法を教える…楽しそうかも…
「はい、いつか、そんなことができたら嬉しいですね」
教えるという事は、先生という立場になりそうで、楽しそうです
2
「よーし嬢ちゃん、次はスキルについてだ」
スキル?
「スキルっつうのはな、魔法の派生で、ちょっとした技術みたいなモンだ」
技術、という事は覚えるのが難しそう…
「なるほど、どんなものがあるんですか?」
「一般的に使われてるスキルは10個くらいしかない、後は自分で作るしかないな」
そんなに少ないんだ
「まぁ役職ごとに分けると、嬢ちゃんはヒーラー向きだし、強化スキルとかいいかもな」
強化スキル…魔法使いさんとかが使ってそう
「まずは、覚えてみるとこからだな」
それから魔法の特訓を港に着くまで頑張った
:狩りをしましょう! 1
国から出て2日後
「よしリゼ、狩りをしよう」
リンファさんがそう言ってきた
「まずは見てるだけでいい、しかしいずれ必要になる、だから見ときな」
そう言いリンファさんはナイフを取り出して遠くにいる猪を見る
「狩りってのはこうするのさ」
瞬きをした瞬間、リンファさんは消え、1秒足らずで猪を狩ってきた
「見えたかい?リゼ」
「え、あ、いえ、見えませんでした…」
「そうか、早すぎたね、悪かった。次は遅めにやるよ」
そう言ってリンファさんは私の頭を撫でた
2
次の日、リンファさんはまた狩りのやり方を教えてくれた
「食事は国から出る前に買っておいたが、干し肉などの保存食しかない上に美味じゃない。そういう時は、こうやって旅先で生き物を殺し肉をもらうのさ」
そう言ってリンファさんはナイフを研いでいた
「さて、来たな」
リンファさんはそう言いナイフを森の方に投げた
その時、森からドサ!と聞こえ、見て見ると、鹿が倒れていた
「リゼ、今度は見てたか?」
「え、いや、えっと……どうやったんですか?」
「サーチの魔法を使って周囲の動物を探し、ナイフを脳天めがけて投げるだけだ」
え、えぇぇぇーーーおかしいよー!
それに見てなかったのに、なんで当てられるの!
「リンファよぉ、昨日も思ったんだけどよ、今の嬢ちゃんには難しすぎんじゃあねぇか?」
そ、そうです!シーニィさん!まだ私には早いと思います!
「まぁ、まだ6つの子どもだし、そうか。アタシが悪かった、もう少し簡単にやれるように教えよう」
「は、はい!お願いします!」
3
そしてまた次の日
「魔弾を撃って倒す‥だ」
リンファさんはそう言って魔弾を撃ってウサギを仕留めた
魔弾というのは魔法のように火や水などの属性がつかない魔法の弾だ
ちなみに魔弾を撃つには才能が9割で努力しても30年以上かかるとか…
「さ、撃ってみろ」
えぇ
と、思っていると
「いや、だからよリンファ、そりゃ難すぎるだつう話だよ、俺だってできねぇんだぞ」
シーニィさんが後ろからそう言ってきた
「ハァ、ま、それもそうだな、今回も、アタシが悪…」
「やる」
「ああ、まぁそうだろうな……って、うん?やると言ったか?リゼ」
パパもママはもういない、リンファさんもシーニィさんもいつかいなくなってしまうかもしれない、なら
「私は…私は1人でも、生きていけるようになりたいんです!」
それを聞いたリンファさんは驚いていて、シーニィさんは笑っていた
「よーし嬢ちゃんよく言った!俺は魔弾なんてよくわかんねぇから応援することしかできねぇが、頑張れよ!」
シーニィさんはそう言い顔の前で拳を握りしめていた
「よし!頑張るぞー!」
私はそう意気込んだ
:別れの… 1
「リゼ、港に着いたぞ」
朝起きると、海と、港が見えていた
「…!リゼ、ここからはシーニィと行け」
え?リンファさん?どうして?
「リンファ、1人で大丈夫か?」
「ああ、だってアタシは、聖女様だぞ?」
え?どういうこと?
「よし、嬢ちゃん、ちょっと失礼するぞ」
そう言いシーニィさんは私を担ぎ上げた
「リンファ、勝てよ」
そう言いシーニィさんは私を連れて山を降り、港に着いた。
その頃、リンファの方では
「出てきな、いるんだろうミリィド」
森の奥から数人の兵士と共に、手を叩いた白いドレスの女が出てくる
「リンファさん、よく分かりましたね。一つ聞きたいんですが、何であの子どもを逃してるんですか?」
アタシはタバコに火をつけて、タバコを蒸す
「アタシはただ、親友との約束を果たしたいだけさ」
腰から折りたたみ式の槍を取り出し戦闘体制に入る
「愚かですね、昔はコロウア教の聖女として崇められていたのに………残念です」
ミリィドがパンパンと手を鳴らすと兵士たちが襲いかかってくる
負けるわけには、いかないんでね
2
「嬢ちゃん、あの船が…ってあれ?どの船だ?」
港には3つの船があった、どれも似たような見た目だ
「や、やべぇ、どうすりゃいいんだこれ!」
シーニィさんが考えてる…そうだ!
「あれって岩の国、炎の国、光の国に行く船ですよね、色で考えると、右から岩、光、炎だと思うんですが……」
シーニィさんはハッとして気付いたみたいだった。
シーニィさんは年代がどうとか時の流れがどうとか言っていた
「よし、じゃあデッグドッズ行きの船に……いや、光の国ハルファウルか」
ハルファウル?なぜ
「嬢ちゃん、ハルファウルに着いたらマリイネンって人のいる孤児院に行け、俺の名前出したら何とかしてくれっからさ」
シーニィさんが私を箱の中に入れる
「じゃあちょっと、リンファ助けてくるからよ」
そう言ってシーニィさんは行ってしまった
3
あれから、どれくらいの時間が経っただろう
私の入ってる箱は船に積まれたみたいだ、もうすぐで出発するらしい
少し覗いてみると、多くの人が倒れてる
その時、ドサッという音とともに、前に黒い影が覆い被さった
「あぁ、リゼ、ここにいたのかい、寒くなかったかい?」
あ、リンファさんだ、よかった、怪我、してないかな?
あれ?涙が出てきた、嬉しいからかな?
「リゼ、あんたに、また苦しい思いさせちまうけど、許してくれよ」
リンファさんが箱の中を覗き、微笑んだ
「リゼ、大っきくなったら恋をしな、いろんな世界が見れるから。」
リンファさんが立ち上がる、リンファさんは箱の中に手紙を入れた
「リゼ、ご飯を腹一杯食べな、元気が出るし、嬉しくなるから。」
リンファさんがナイフを取り出す
リンファさんの槍も一緒に、箱の中に入っている
「リゼ、自由に生きな、アンタは運命に縛られる小鳥じゃないんだから」
リンファさんが魔法を詠唱する
「リゼ、アタシも、アンタの家族も、みんな、リゼのことを、愛してるんだよ」
リンファさんは船を飛び降り、兵隊の元へ向かっていく
最後に見たリンファさんは、左腕と左足の足首から下がなく、お腹に風穴が空いていて、左目が潰れている、そんな姿だった。
でも、その姿は、おとぎ話の、光に照らされている勇者の様だった
:慈愛の光
「と、いう事があったんです」
僕とリゼがちょうど2人きりだったので、(ナノもいるにはいるが、聞いてない)リゼのシルファンとの繋がりを聞いたが
「なかなかに重たい」
大切な人が死んでしまう悲しみは知っている。痛いほど
「でも、アオイ様もシーニィさんと知り合いと知った時は、嬉しかったんですよ!」
まぁ、僕は最近知り合っただけだけどなぁ
「じゃあ、シルファンにいるお世話になった人って…」
「リンファさんです。向こうに着いたら、お墓参りしたいなって…まぁ、お墓があるか分かりませんがね」
うーん、難しいところだな、これは
「それにアオイ様はミリィド様に会ったことあると思いますよ」
え?あるかな?
「今回の異世界人の能力判定をしたの、ミリィド様ですから」
なるほど、あの人がミリィドか……あんま好きなタイプじゃないな
「アオイ様、私はもう覚悟を決めてるんです。あの国に行って、どうなっても、絶対に、皆様と一緒にいるって」
リゼ、目がガチだ
「大丈夫、危なくなったら僕が守るよ」
そう言った時、リゼは少し、怪訝そうな顔をして、一息置いて言った
「私、守られるだけじゃ嫌なんです!」
その顔は、笑っていて、ドヤ顔の様に見えた
慈愛の光 終
仮面の勇者外伝、第一弾、「慈愛の光」を読んでくださりありがとうございます。
少しネタバレをしますと、今回出てきたミリィドは現在、コロウア教の聖女を騙っています。
そこでミリィドは本当の聖女になる為に、リゼに…
ここからは、本編を読んでほしいですね。
さて、リゼの慈愛の光の次はマイラの話を投稿します。
それではまた次の話で会いましょう。