第2章: 藤村という厄介者
「第2章: 藤村という厄介者」では、静かに一人で過ごしたい林が、藤村というおしゃべりで感情豊かなクラスメイトに振り回される様子を描きます。特に藤村が西村に告白して振られた後、彼女が林に抱く感情の変化と、林が巻き込まれつつも少しずつ彼女を理解し始める様子に注目してください。二人のやり取りは少しコメディタッチに描かれていますが、その裏には心の成長や葛藤が隠されています。この章では、読者の皆さんに笑いと共感をお届けできればと思います。
林が図書館に向かって静かに歩いていると、突然、涙混じりの慌ただしい声が彼を呼び止めた。
「ま、待って!」
林は思わず足を止めた。嫌な予感がした。振り返ると、藤村が泣き腫らした目で、今にも崩れそうな様子で立っていた。
「君、教室の後ろの席にいる、あの一人ぼっちの林くんだよね?...見てた?さっきのこと。」
心の中で林は必死に叫んだ。「見てないって言え!面倒なことになる前に!」
「え?何も見てないけど...」
もちろん、林は全部見ていた。だが、関わることは自分の静かな日常を壊すだけだ。そう、絶対に言わないほうがいい。
「西村くん、ひどいよ...。私、告白したのに、すぐに断られたの!理由も言ってくれなかったし、本当に冷たくて...私、何がいけなかったのかな...?」藤村は泣きながら話し続け、完全に感情を吐き出していた。
その間、林は彼女をちらりと見た。藤村は自分とほぼ同じくらいの身長で、少し低いかもしれない。160センチくらいか。彼女の体は細いが、どこか繊細なカーブがあり、運動神経が良いわけではなさそうだが、手入れは行き届いている。茶色の髪が廊下の風に揺れ、大きな涙で潤んだ目が、意外にも印象的だった。
「な、なんでこんなことに気づいてるんだよ、俺!...とにかく、ここから逃げないと!」
「と、とにかく、僕、図書館に行かなきゃならないんだ。」
「じゃあ、私も行く!」
林はため息をつく暇もなく、藤村が勝手に横に並んで歩き出した。
「え?ちょっと、ついてくるのかよ...マジかよ!」
道中、藤村は止まることなく西村への不満や自分の心情を語り続けた。林は何とかしてその嵐のような言葉から逃げ出したかったが、どうにもならない。
「誰か...助けてくれ...」
図書館に到着したとき、林はようやく一息つけるかと思った。
「図書館では静かにしないといけないよ、ルールだから。」
林は真面目な顔でそう言ったが、藤村はそのニュアンスを全く理解していないようだった。
「林くん、よくここに来るの?読書が好きなの?」
「うん...」林はライトノベルを一冊手に取ったが、彼女の存在を無視することはできなかった。
「私も本が大好きなの!今、『テン・ピース』と『Re
』を読んでるんだけど、すごく面白いよね!読んだことある?」
「知ってるよ...」林はそっけなく答えたが、それでも彼女を遠ざけることができない。
なんでこの子、まだいるんだよ...
「ねえ、せっかくだし、タピオカでも飲みに行かない?一人じゃ寂しいし...お願い、付き合ってくれない?」
林は心の中で全力で「断れ!」と叫んでいた。しかし、口から出た言葉は正反対だった。
「...わかったよ。」
何で承諾しちゃったんだ、俺!?
そして、二人はタピオカの店に向かった。途中、藤村は学校の話やクラスのことなど、あらゆる話題を次から次へと繰り出していた。
「ねえ、林くんってどうやっていつもテストで1位になるの?それって、超能力とか?」
「いや、ただ勉強して、授業に集中してるだけだよ。」
林は会話を終わらせるために、極力短く答えたが、藤村はますます興奮した。
「すごい!私なんていつも授業についていけなくてさ...」
藤村がタピオカを飲み始めたその瞬間、彼女の目が大きく見開かれた。
「藤村さん、大丈夫?」
「つ、冷たっ...!頭がキーンってなる...!」
林は思わず吹き出しそうになったが、必死でこらえた。
「もう少しゆっくり飲んだほうがいいんじゃない?」
藤村は恥ずかしそうに笑ったが、すぐに真面目な表情に戻った。そして、目を伏せながら、ほとんど囁くように、こう言った。
「林くん...私って、やっぱりおかしいのかな?どうして西村くんに振られたのかな...?」
林は彼女の顔を見て、一瞬言葉に詰まった。少し乱れた髪、赤くなった頬、夕日に照らされて輝く瞳。それでも彼は口を開いた。
「いや、君には何も悪いところなんてないよ。むしろ...その、君は...きれいだよ。西村が見る目ないだけだ。」
言ってしまってから、林は自分が何を口にしたのかに気づき、顔が真っ赤になった。
なんで俺、こんなこと言っちゃったんだ!?
藤村は笑顔を浮かべ、涙を拭いながら、優しく微笑んだ。
「ありがとう、林くん。少し元気が出たよ。」
夕焼けのオレンジ色が、彼女の笑顔を一層引き立てていた。林は一瞬、彼女のその姿に見とれてしまった。
「じゃあ、今日はここで。またね。」藤村は微笑んで手を振り、その背後に広がる夕焼けが、彼女の輝きをさらに増していた。
「あ、うん...」
林は、一人で静かに過ごしたいと強く願っていたのに、なぜか少しだけ温かい気持ちになっている自分に気づいた。
「でも、もうこんなことが二度と起きないでほしい。」
そう思いながら、林は帰ろうとした。しかし、背後からまたあの声が響いた。
「林くん!明日もまた一緒に話そうね!」
いや、いやいやいや!もう勘弁してくれー!なんで俺がこんな目に遭うんだ!?
林は頭を抱え、心の中で絶望の叫びを上げたのだった。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます!林と藤村の間に起こった一連の出来事、いかがでしたでしょうか?藤村の明るく無邪気な一面と、彼女の心の中にある傷が少しずつ見えてきたのではないでしょうか。それに対して、林の内心での葛藤や、どうにかして逃げたいという思いがコミカルに描かれています。二人の関係がこれからどのように発展していくのか、ぜひ次の章も楽しみにしていてください。次回もどうぞお見逃しなく!