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ちいさな春と缶コーヒー

作者: たろちょす


【台本ついて】

・仲間内で楽しむのは勿論、配信サイトで公演したりしていただいても問題ありません。使用報告は義務ではありませんが、ツイッターのDM等で教えていただけると泣いて喜びます、何卒、拝聴させていただければと思います(→ Twitter:@taro_w_taro)


・台本上映の際は、営利、非営利を問わず、作者名と台本名、台本のURLの明記をお願い致します。


・台本に関する著作権は放棄してません。が、盗作や自作発言等、著しいものでなければ大丈夫です。

ちいさな春と缶コーヒー


「私さ、缶コーヒーって飲んだことないんだよね。」

他愛ない日常から、ふたりの時間は交差する。

未来も、過去も。そこにはあって、ここにはない。


日常から始まる、紡ぐ言の葉。

今日も、缶コーヒーは冷えている。


【登場人物】


ちさ:誘った女性

春秋:誘われた男性


~役表~


ちさ:

春秋:




~開幕~


   公園のベンチにて


ちさ:私さ、缶コーヒーって飲んだことないんだよね。


春秋:へぇー。


ちさ:へぇーって、それだけ? なんかもっとないの?


春秋:なにが?


ちさ:かなしいなぁ。……ってそんな私に興味ないか。


春秋:興味ないわけじゃないんだけど。なんでいきなり?


ちさ:んやさ、私缶コーヒーって飲んだことないんだよね。


春秋:それは聞いた。


ちさ:本格的に入れたコーヒーしか飲んだことないから。


春秋:実家、喫茶店だもんな。

   

ちさ:うん。


春秋:……。


ちさ:……。


ちさ:んもう、話続かないなぁ。もう帰ってちゃおうかな~。


春秋:いやだめ。それじゃあ俺が暇になる。


ちさ:なら会話続ける努力して。


春秋:わかった。


ちさ:わかったところで続きなんだけど、さっきのは自慢じゃない。 


春秋:なんなの?


ちさ:飲む必要がなかっただけ。


春秋:実家でコーヒー飲めるもんな。


ちさ:そう。


春秋:じゃぁなんで缶コーヒーなんて。


ちさ:なんとなく?


春秋:そういうちさも、会話続ける気ないだろ。


ちさ:バレたか。


春秋:なぜこの会話をしようと思った。


ちさ:缶コーヒー奢ってくれたりしないかなぁーって。


春秋:ただのタカリじゃないか。


ちさ:そういうこと。


春秋:自分で買えばいいのに。


ちさ:だってお金ないし。


春秋:大変そうだなフリーランス。


ちさ:安泰そうだね会社員。


春秋:まったく。奢ってやってもいいけど、俺に得あるの?


ちさ:あるよ~、私に貸しを作れる。


春秋:別にいらない。


ちさ:そんなこというなよ。


春秋:ていうか、ちさが自分の話するの珍しいよな。


ちさ:そうかな?


春秋:そうだよ。


ちさ:まぁなんていうか、もっと春秋に私のこと知ってほしいって思っちゃったからかな。


春秋:……ほう。


ちさ:だめ?


春秋:別にいいけど……。


ちさ:けど、なに?


春秋:ちさ、なんか変わったな。


ちさ:まぁ知ってもらうためにね、努力しようかなって。


春秋:俺に知ってもらってどうすんの?


ちさ:……それくらい気づけよ。


春秋:鈍感系男子じゃだめか。


ちさ:男子ってほど男子じゃないでしょ。


春秋:そうだったわ。鈍感系おじさんか。


ちさ:おじさんってほどおじさんでもないけどね。


春秋:いやもうおっさんよ。


ちさ:じゃあ私もおばさんか。


春秋:ちさは見た目女の子だから全然おばさんじゃないよ。


ちさ:ん……、なんか春秋も変わったね。


春秋:俺はおじさんになったからな。


ちさ:……。


春秋:……。否定してくれないのかよ。


ちさ:おじさんがいいまである。


春秋:そうなの?……じゃあいいや。


ちさ:満更でもなさそうだね。


春秋:まぁね。


ちさ:じゃあおじさんには特別に教えてあげようかな。


春秋:なに?


ちさ:私さ、もうすぐこの世からいなくなるんだ。


春秋:……は?


ちさ:私さ、もうすぐこの世からいなくなるんだ。


春秋:……この流れで冗談言うか?


ちさ:あ~告白的な流れだったかぁ。


春秋:そうだけど、そうじゃないだろ。


ちさ:はっはっは~。


春秋:はぁ……で本当はなんだよ。


ちさ:え?本当の話だけど?


春秋:……。


ちさ:なんか言えよ~。


春秋:いや……、頭真っ白で。


ちさ:まぁそうだよね~。いきなりこんな事言われても困るよね~。


春秋:そう簡単に信じられないんだが。


ちさ:真実だよ。


春秋:……。病気……?


ちさ:うん。


春秋:なんの。


ちさ:ありきたりなやつ、脳におっきな腫瘍があるんだって。


春秋:手術とかでなんとかなんないの?


ちさ:もうならないんだって。


春秋:……。なんでそんなにあっさりしてんだよ。


ちさ:んーなんかね、春秋に会う前いっぱい覚悟したからかな。


春秋:……。


ちさ:……、変な空気にしちゃったね。ごめんね。


春秋:そういう問題じゃないだろ。


ちさ:どういう問題?


春秋:好きなやつに告白されて、そいつがもうすぐ死ぬって言われて、平常心でいられるわけないだろ。


ちさ:……今さらっと好きって言われた?


春秋:そうだっつってんだろ。


ちさ:そっか……そっかぁ……。うれしいなぁ。


春秋:俺、今日会おうって言われてめちゃくちゃ嬉しかったんだぞ。


ちさ:なにそれかわいい。


春秋:あほ。


ちさ:アホって言うほうがアホなんだよ。


春秋:ばか。


ちさ:……。ばかかぁ……あはは。たしかにそうかもね。


春秋:……。俺これからどうしたらいい。


ちさ:どうって、なにを?


春秋:ちさのためにこれからどうしたらいい?


ちさ:……。どうもしなくていいよ。


春秋:だめ。俺がしたいから言って。


ちさ:結構男らしいとこもあるんだね。


春秋:……。うるせぇ。


ちさ:じゃあ私と結婚して。


春秋:いいよ。


ちさ:え?……。まさかそう来るとは思わなかった。


春秋:ちさが言ったんだろ。


ちさ:そうだね。


春秋:いつする? 明日?


ちさ:その言いかた、冗談に聞こえるからね?


春秋:本気だ。


ちさ:まぁそれは冗談として、缶コーヒー奢ってよ。


春秋:……。俺は本気でちさと結婚したいと思ってる。


ちさ:私のことな~んにも知らないのに?


春秋:ちさはコーヒーが好きで、もうすぐこの世からいなくなる。それと……。


ちさ:それと?


春秋:……俺のことが好き。


ちさ:そうだね。


春秋:それだけ知ってれば、いい。


ちさ:……。うん。


春秋:だめか?


ちさ:いい……。それだけでいい。


春秋:……。明日婚姻届、出しに行こう。


ちさ:私、一軒家に住みたい。おっきいもふもふのわんちゃんと、まんまるのにゃんこも飼いたいなぁ。


春秋:俺はヘビ飼たい。


ちさ:それは無理。


春秋:知ってる。


ちさ:うん。そうだね。


春秋:……まずは一個、叶えさせて。


ちさ:なに?


春秋:ほら、缶コーヒー。


ちさ:……ありがと。




~終幕~

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