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その2~4

 テントンタンと小気味よい音を鳴らしながら月陽と一緒に階段を降りる。ん~やっぱ身長と体重がほしいかな、とそんなことを考えながら。

 現在の身長は140後半。中学の三年間で冬歌ねぇの170はには追いつきたい。いくらこの世界で容姿がモテる基準ではないとはいえ前世の記憶持ちとしてはやっぱりイケメンでありたいわけですよ。

 トンッと最後の段を一つ飛ばしで着地する。月陽が同じことをやりたそうにしていたので怪我をしないよう両手を広げて身体で受け止めてやる。が、勢いを殺せず尻餅をついて仰向けに倒れてしまった。ぐぬぬ、やっぱり身長(たっぱ)ほしいぞ!


「あ、おはよう夏樹にいさん」

「おう、おはよう春音(はるね)……え?」

「春音姉さん、おはよう」


 倒れた俺達に洗面所から出てきた春音(はるね)が声をかける。ちなみに春音は小学5年生で年下だ。いや! 今はそれよりも!


「春音! なんて格好で出歩いてるんだ! 服を着なさい服を!」


 俺は鼻から赤い液体を放出させながら上のたわわな果実は丸出しでライムグリーンのパンツのみの春音に注意をうながすのだった。


―――――――


「もう、夏樹にいさんうるさすぎ。ちょっと上に着るのを忘れただけじゃない」


 俺のお小言の後洗面所に戻り衣服を着てきた春音。だがしかしその衣装は上は薄手のケープを羽織っただけで風呂あがりのおっさんがタオルを首からかけているのとそう変わりがないし下は布地の少ない紐水着をあてただけでパンツが隠しきれてない。

 春音と相対した場合、まず目につくのがその年令に見合わぬ双丘だ。この年にしてバストサイズは高校生の冬歌ねぇと同等、カップサイズで上回るいわゆるロリ巨乳というやつだ。その双丘を隠すには今春音がつけている服と言っていいのかよくわからないものはいろいろと足りなすぎだ! 巨乳なんだからブラくらいしっかりつけてくれ!

 だが、俺の叫びが虚しくなるほどにこの世界では春音の格好が正常なのだ。

 以前うちの女性陣に前世の女性のような格好をしてくれと頼んだら「私達に男装しろっていうの?」とお小言を食らってしまったことがある。

 露出の高い格好が女らしい服装、変な穴が空いたりしていない前世のようなキチッとした衣装が男らしい格好なのだ。だから今の月陽のようにスカートを履いていたとしてもこの世界では正常な男の衣装なのである。


――――――――


 二人と一緒にリビングに入るとキッチンで片付けをしている女の子が目に入る。


「あ、おはよう、キーくん、春音、月陽」

「おはようございます、秋葉姉さん」

「秋葉おねえちゃん、おはよ~」

「遅れてごめん! 秋葉(あきは)ねぇ。それとおはよう。後片付け手伝うよ」


 制服姿で調理の後片付けをしているのは秋葉ねぇ。俺と同じ中学の3年生で(ねぇ)と呼んでいるとおり年上だ。ちなみに胸の話をしてはいけない。妹と比較して悲しいくらいにバランスが取れているとだけ言っておこう。

 あと、制服やスーツのたぐいはなぜか前世と同じで女性用のものでも変な魔改造を施されているといったことはない。おかげで安心して見ていられる。制服にエプロン姿で台所に立つ美少女は眼福です。


 ”キーくん”と言うのは俺の名前の”夏樹”の樹から取った愛称だ。それと対になるように秋葉ねぇには”ようねぇ”という呼び方がある。

 うちの家族の名前を並べると

冬歌(ふゆか)

秋葉(あきは)

夏樹(なつき)

春音(はるね)

月陽(つきひ)

 となるのだが、俺と秋葉ねぇの名前にだけ植物の要素を示す漢字が使われている。そこから”キーくん”、”ようねぇ”となるわけだ。正直バカップルみたいでかんべんして欲しいんだがふたりきりの時にはこの呼び方で呼ばないと返事もしてくれない。


 なんでこんな呼び方になっているのかというとまぁいろいろあるわけだ。

 秋葉ねぇはIQ200を超えるいわゆる天才少女というやつだ。だが同時にこの世界の動物への愛情が溢れすぎている一般的な男性を人間として認識できない異常者でもある。俺から見てもこいつら本当に同じ人間なのか疑問に思うときがあるしな。ちなみに月陽くらいの年齢の男は男の子というくくりでまだ人間と判別できるらしい。

 そんな異常者が人間の女性相手に興奮する異常者を感知できないはずがなかった。なんというか人間相手に興奮するだけで奇異の目で見られるというのは納得がいかないのだがこの世界では異常性癖なのだ。

 で、最初は異常者同士とはいっても俺の年齢が低かったこともあり男の子として大人の男よりはマシという程度の扱いを受けていた。それが変化したのはだいたい二年くらい前、ちょうど秋葉ねぇが性というものを意識しだしてからだと思う。初めて人間の男というものを認識し、かつその存在は自分と同じ異常者(まわりとはちがう)。秋葉ねぇのなかでその男が特別な存在になるのにさほど時間はかからなかったようだ。さながら雛の刷り込みのように。

 ……まあなんだ、ぶっちゃければ俺の息子がライド・オンしたわけで。風呂場で象が鼻を高らかに持ち上げるさまを秋葉ねぇの声で実況されたのはなかなかにくる物があった。もっとも混乱から立ち直った俺はその後すぐ鼻血出してぶっ倒れたんですけどね!


――――――――


「おはよう夏樹。う~ん、今日の夏樹分補充~」

「うわぁぁぁっととと」


 唐突に後ろから手を回され俺の体は宙へと持ち上げられる。とっさのことに情けない声があがってしまった。持ち上げたのは俺の血のつながった姉こと冬歌(ふゆか)ねぇだ。現在高校二年生で生徒会長も務めている。

 容姿はいわゆる高身長でヅカ系、同じ血を引いている俺としては自分の将来が非常に楽しみだ。だがそれは将来的な話であり今は、


「ちょっ、ちょっと冬歌ねぇ! お~ろ~し~て~」

「う~んまだまだもうちょっと。夏樹エナジーはまだ満タンになっていませーん」


 夏樹エナジーってなんだよとの突っ込みはさておき、冬歌ねぇの身長170台に対して俺は140台。その体格の差はいかんともしがたくジタバタとあがくも為すがままだ。


 すう~はあ~すう~はあ~クンカクンカクンカクンカhshsprpr……


 ……背中から荒い息遣いが聞こえてくる……まぁいつものことなんですけどね! こんなふうになったのには俺にも責任はある。


 俺がハーレム計画を決心した時実験として最初の標的になったのが冬歌ねぇだ。当時の俺は前世のラブコメ物のシュチュを冬歌ねぇに試しまくった。その頃冬歌ねぇは周りの男子が女子に対して険悪になり始める時期で、周りの男子の態度がムカつく中甘えてくるうちの弟マジ天使! とまぁうまいこと噛み合ってしまったわけで、いうなれば時期が悪かった。結果誕生したのが重度のブラコンである。


 はむっはむはむむぐむぐ


「ひうっ、ふ、冬歌ねぇ……耳は……耳はダメェ……」


 今日はいつものスキンシップでは満足しないのか耳をくわえられた。今日が初めてというわけではないので驚くことではないのだが俺は耳を責められるのが弱いようだ。自分でも信じられないくらい恥ずかしい声が出てしまう。


「ちょっ、冬歌さん! なんてうらやま……もといキーくんが嫌がってます! それに周りにはまだ小学生の子もいるんですからね! 自重してください!」

「ふふん、これが実の姉の特権というものだ。悔しかったら生まれから出直してくるんだな」


 俺は冬歌ねぇのクンカクンカもハムハムも許可した覚えはないんだけどなぁ。この会話を聞いてのとおり冬歌ねぇと秋葉ねぇは二年前から俺をめぐってよく喧嘩をするようになった。大概は口喧嘩で殴り合いになることはないのだが冬歌ねぇはうっかり屋さんなので時折秋葉ねぇのコンプレックスをついて胸をえぐることがある。そうなると俺が秋葉ねぇを慰めることになるので喧嘩はやめて欲しいのだけれど……俺を取り合ってのことなんだよなぁ。

 まぁとりあえずはこの場をなんとか収めますか。


「冬歌ねぇ、そこまで。それ以上やり合うというのなら……今日の差し入れはいらないんだね?」

「よし、秋葉。私が悪かった。仲直りをしよう」


 それまで緩慢に振舞っていた冬歌ねぇが俺の言葉で態度を一変させる。差し入れというのは転生特典についてきたおまけのようなものだ。たまたま最後に読んだエロコメの主人公の特技だったからなのか俺は料理、その中でもお菓子作りがかなり得意になった。なのでたまたま「生徒会の仕事がしんどい~」といっていた冬歌ねぇのために出かけるときにおやつを手渡したらそれが大好評。以来冬歌ねぇの必死の土下座もあり毎日のように作ることになった。冬歌ねぇの差し入れだけじゃなく大量に作ってみんなのおやつにするからまぁいいんだけどね。

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