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プロローグ

 拝啓、前世の俺へ。いかがお過ごしでしょうか。この手紙が届くことなどまずありえないでしょうがもし届くようならこれだけははっきりと言っておきます。転生先の世界ではエロコメ主人公の特性は地雷スキルだ! 神様にはエロ漫画主人公の特性にしてもらうようにお願いしておくんだ! なぜならば――


――――――――


 よし、この手紙は明日燃やそう。燃やして天に届けたほうが前世の俺に届く確率も上がるかもしれないからな。

 俺はしたためた手紙に封をするとそっと机の引き出しにしまいこんだ。


 って、俺は何をやってるんだ! いまさらながらに自分のやっていることが厨二っぽいことに気づいておもわず身悶える。





 前世で死んで神様に出会って特殊能力をもらってこの世界に転生して12年ほどになる。前世の意識が戻ったのが6歳の頃だから実質6年位この世界で過ごしてきたわけだが……神様ぇ……なんて世界に転生させてくれたんだ……


 この世界は前世と同じ21世紀の地球のような世界だ。普通に科学が発展し人類が地上の支配者だ。魔法や魔物なんていうのはゲームや漫画のお話。住んでいる星の名前も変わらずいわゆる平行世界といえるだろう。


 違っていたのでまず強烈だったのが男の性癖の変化だ。この世界の男は人間の裸より動物を見て興奮するという特集性癖を標準で装備している変態どもだらけだった。AV(アダルト・ビデオ)がマジモンのAV(アニマル・ビデオ)になってるって何だよそれ。ちなみに再度言っておくがここは前世に似た平行世界。当然のごとく獣人はいない。

 で、当然のごとく男がそんなんだから恋愛は女の方からアピールすることが当然となっている。(めす)から(おす)への求愛行動、いわゆる前世とは男女の価値観が逆転しているのだ。とは言え根本的に男は女を(ケモ)の代用品としか見ておらずむしろ嫌悪していると言っていい。世の女性たちはよくこんな男相手にアプローチを掛けられるものだ。

 男女が逆転しているから歴史上の偉い人や実際の政治家や社長などは女性が多い。かと言って男の社会的立場が前世でいう女の立場と同じかと言われればそうではなくほぼ同等に扱われている。なぜなら世の発明家や芸術家と言った人物には男のほうが圧倒的に多く名を連ねており”変態となんとかは紙一重”を地でいっているからだ。


 後は違っているのは女性の服装か。この世界では男にいやらしい目で見られないということで女性の服の露出がどんどん上がっていき、もうなんというか痴女? ってことになっている。前世の性癖を持ったままの俺はそりゃもう狂喜乱舞したものさ。どっちを向いても痴女だらけ、こりゃいろいろ捗るぜ! ……なんて思っていたんだがここで俺が神様からもらった転生特典がじゃまをすることになる。


 俺は前世で一度死んでからこの世界にやってきた。で、この世界にくる前に神様に出会って好きな能力を一つくれるっていうもんだから俺は迷わず「エロコメ主人公の特性をください!」って言ったんだ。ラッキースケベから始まるあれやこれや。イチャイチャラブラブハーレムは夢だった。前世ではもてなかった分新しい人生では漫画の主人公みたいにトラブルって見たい。そんな思いで願ったものだったが俺はこの世界にきてその安易な考えを後悔することになる。


 まず、この世界で痴女い衣装を見て興奮した俺は鼻血を出してぶっ倒れた。その時は若返ったしそういうこともあるかな? と思っていたのだがそれが二度三度と続くうちに何かがおかしいと気づき始めた。

 ……ちげーよ! そっちのエロコメ主人公の特性じゃねーよ! 確かにエッチなシーンで鼻血放出するのはエロコメの定番だけどさ! ありゃギャグでやってるのであってリアルでやったら出血多量で死んでしまうわ!


 神様が別れ際に最後に行っていた言葉を思い出す。


「珍しいやつじゃな。寸止めが好みとは」


 そう、エロコメ主人公はハプニングでエッチな羨ましい目にはあうが決して本番まで行くことはない。そのことに気づいた俺は絶望した。


 ――しまった……どうせならエロ漫画主人公の特性にしておくんだった……


 おそらく本番まで行かせないためのリミッターが鼻血放出による意識の喪失(ブラックアウト)なのだろう。実際にそういうことを考えている時ほど鼻血の放出量が多く意識を失う確率も高い。神様ぇ……ちがう、ちがうんだ。俺の望んだのはそうじゃないんだ……


 そしてそんな体質なのにもかかわらず次々と起こるラッキースケベ。なんなの? 神様、俺を出血多量で殺したいの? おかげで輸血パックが手放せないよ!





 ……この世界の実情を知った頃はこう思ったものだ。


 この世界の男は動物に愛情を向けるのが基本。俺のように生身の人間に興奮する奴はいない。そんな奴は女性向け創作物、つまりは漫画や小説の中だけの存在だ。そんな男がもしリアルに存在したら? そりゃ周りはほっとかないだろう、つまりはモテモテは確実。ハーレムも夢じゃない!


 ……なんてね。実際はこの世界では日常的になっている丸出しの下着を見て鼻血を垂らしている傍から見てちょっと変な子が一人。なんとなく納得がいかないのが鼻血を出しても人間の女性を見てそうなったと認識されないことだ。何故か俺には妄想癖があり動物のいやらしいことを考えて鼻血を出してると思われている。動物のいやらしいことってなんだよ!


 一応ハーレムの夢は諦めてなくて女の子たちには優しく接しているんだけど最近になって周りの男子の反応が厳しいことになっている。俺くらいの年の男子はちょうど二次成長期に入って動物愛に目覚め始めるんだが、それと同時に何故か女子を嫌悪するようにもなる。で、そんな中嫌うどころかむしろ優しく接してる俺は目立つ。とゆうか人目のあるところで優しくするという行動自体が異端なのだ。それに加え俺は所属する動物派閥を明らかにしていなかった。

 この世界の男子には前世で女子がグループを作っていたように好みの動物が同じ者同士で派閥を作る傾向がある。どの派閥にも所属していないということは状況によって派閥を変えるというふうに捉えられ男子の中から爪弾きにされる。というわけで俺も所属する派閥、愛する動物を選ばざるを得なくなった。

 で、俺が所属した派閥は”獣人”の派閥、空想の存在でありマンガやアニメにしか出てこないいわゆるオタク系の派閥だ。まだ人型を保っているだけまし、リアル獣愛について語れとかマジ無理です。


 立ち位置を明確にしてからは風当たりは減ったがやっぱり女子と会話してたりするといい顔はされない。逆にラッキースケベを起こしてボディータッチが起こったりすると羨ましいとはならず可哀想にと同情の視線で男子から見られる。そんなに人間の女は嫌いかお前ら。


 まぁいくらこんな変な世界でも俺はこれから先もこの世界で生きていくしかないんだよなぁ……せめて鼻血から気絶のコンボがなくなってくれれば……


 神様ぇ……あんたホントとんでもない世界に転生させてくれたよ……

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