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7、芽生える悪


一宮勇人。

私と同じ様に先輩に可愛がられていた後輩。

先輩曰く...ゲームセンターで出会いそのまま仲良くなったという。

だが今となっては先輩の敵であり。

そして私の敵だ。


「先輩。大丈夫ですか」

「...ああ。...まあな」


私達は一宮勇人と再会してから河川敷に来ていた。

河川敷では...穏やかな感じで川が流れている。

オレンジ色にきらきら光りながらだ。

私はその光景を見つつ先輩を見る。


「先輩。一宮を殴っても良かったんですよ」

「殴る...か。確かにそうしても良かったかもな」

「何故それをしなかったんですか」

「それは...甘さだ」

「甘さ?」

「...一宮を殴れなかった」


そう呟きながら先輩は「...甘いな。俺も」と呟く。

私は「そうですか」と話しながら目の前を見る。

そして怒りに炎を灯す。

クソッタレ忌々しい一宮だけは絶対に許さない。

ただそう思いながら。


「すまない。根性が無かった」

「仮にも彼は教え子だったからですか」

「そうだな。...そうだ」

「ですか。でももうあれは敵ですよ。一宮勇人はもう戻らない」

「だろうな」

「...私は一宮勇人は...許されざる事をしたと。確かに今までの関係で乖離は難しいですけどそう思っています」

「...凄いな。七瀬は」


そして先輩は「俺もそんな感じでいこう。これからは」と言いながら川に石を投げてから立ち上がる。

私はそんな先輩を見ながら「...先輩」と言う。

それから先輩を見据える。


「どうした?」

「...私が変わっても先輩は変わらないで居て下さいね」

「?...それはどういう」

「家が家なんで」

「...ああ。成程な」

「はい」


それから私は「帰りましょうか」と言いながら歩く。

先輩も「そうだな」と言いながら肩を竦めた。

そして歩き出す私達。

私はそのまま家に帰った。



俺は実家に帰って来る。

それから俺はドアを開けた。

そして家に入ると「お帰り。お兄ちゃん」と声がした。

八鹿である。


「ああ。ただいま。八鹿」

「うん。...大丈夫?」

「今日知った事は全部お前に伝える」

「...え?」

「いや。一宮に会ったんだ」

「...そうなんだね...」


そして俺は「風呂に入って来るから」と言ってからそのまま歩き出す。

八鹿が「ねえ。お兄ちゃん」と言ってくる。

俺は「?」となりながら八鹿を見る。

八鹿は「あのお姉ちゃんを分からせてやって」と言ってくる。


「それでも私はお姉ちゃんを...信じていたから」

「だな。...お前誰よりもアイツが好きだったもんな」

「瀬本が好きだった」

「そうだろうな」


俺はその顔を見ながら「...瀬本はもう戻らないかもだけど...とりあえずやれるだけはするよ」と返事をした。

それから八鹿を見る。

八鹿は「...ありがとう。お兄ちゃん」と俺を見据えた。

俺は「ああ」と返事をしながら風呂場に向かう。



「...」


お兄ちゃんがお風呂に入っている間。

私は考えながら...汗をかく。

何故汗をかくかといえばお兄ちゃんと私の関係だ。

夜中に起きて両親の会話を聞いてしまった。


「...私は...お兄ちゃんと血がつながってないの?」


そんな言葉を呟きながら私は汗を滲ませる。

生まれた時からずっと一緒だったのに。

血が繋がってないってどういう事。

それも...お母さんの子ってどういう事...。


そう思いながら私は考え込む。

それから私は「...はぁ」と溜息を吐く。

すると背後から「八鹿」と声がした。

上半身が裸のお兄ちゃんが?!


「ちょ。おに」

「?...どうした」

「なんで上半身裸なの」

「そりゃ兄妹だからな」

「ま、まま、そうだ、けど」

「え?」


あれ?なんでこんな感情になるのだろう。

血が繋がってないから?

そんな馬鹿な。

いつものお兄ちゃんだ。

目の前に居るのは。


「...ゴメン」

「あ、ああ。どうしたんだ?」

「いや。何でもない」


私の旧姓は元は(田代)と言うらしい。

田代、か。

そう考えながら私はジュースを飲む。

するとお兄ちゃんが「何か飲むか?」と聞いてくる。

私は「...あ、今は良いかな」と断った。


「元気が無いな」

「うん。まあちょっと色々あってね」

「そうか」

「...!!?」


お兄ちゃんが私の額に手を添える。

それから目の前に割れた腹筋が近付いて来る。

ちょ、ちょい!?

私は真っ赤になる。


「熱があるのか?」

「待って、お兄ちゃん。待って」

「え?」

「良いから待って。わ、私は大丈夫だから」

「え?そ、そうか」

「う、うん」


それから後ずさる私。

正直なんか...変な気分だ。

なんせ血が繋がってないのだ。

あくまで家族の女子と男子という事だ。

わ、私は恥ずかしい。


「お兄ちゃん。ちょっと休んでくるね」

「え?あ、ああ」

「後でお風呂入るから」

「そうか」


そして私は自室に入る。

それから私はドアを背にして崩れ落ちる。

正直...心臓がバクバクする。

正直...恥ずかしい。

正直...もうお兄ちゃんを、お兄ちゃんとして見れない。


「...どうしたら良いのこれ」


そんな事を呟きながら私は「...やっば。私...お兄ちゃんが好きなの?」と言った。

すると急速に胸が痛くなってくる。

事実か。

今まで数えきれない程に助けられたのだから。

その分...私は。


「...」


私は息を吐く。

それから心臓の鼓動を聞きながら天井を見上げる、と同時に。

お兄ちゃんを独占したくなってくる。

好きだ。

だからこそ私は...。


「...お兄ちゃんを助けないと」


そう呟きながらニヤッとする。

そうか。

お兄ちゃんは浮気された。

だったら私がお兄ちゃんと家族になっても構わないよね。

血が繋がってないのだから。

どうして今まで黙っていたのだ親は。

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[一言] 寝取りがどうとか以前にドクズだな。 実際にいないわけではないとはいえ、コイツみたいな価値観の人間て世界がどんなふうに見えてるんだろうな。 ある意味幸せな光景か。 世界は自分より下で自分は上…
[一言] NTR ざまあは、どっちか派と両方派がいるけれど。 私は浮気女浮気男断罪派なので、あまり間男間女は興味がないです(あくまでも個人の感想です)。 現状では、浮気女に対して、主人公くんが精神…
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