6、激高
怒りしか湧かない俺に。
彼女、七瀬は俺に寄り添ってくれた。
それから俺を読書部というものに誘ってくれた。
読書部は読書をして...嗜むという目的の部活らしい。
「という事で。こちら2年生の部員の山下一穂くん」
「宜しく」
「ああ。宜しくな。山下」
「それから此方は1年生の木山晴美ちゃん」
「先輩。宜しくお願いします」
「ああ。宜しくな。木山」
俺は部員の自己紹介を受ける。
山下の容姿は柔道でもやっていたかの様な巌な感じだ。
目鼻立ちも濃い。
心優しい紳士的な感じの性格をしている様である。
木山の方はもふもふな感じをしている。
ゆるふわな髪型。
それから柔和な感じをしている。
身長も低く...何かその。
愛らしいマスコットの様な。
「1年生が2人。2年生も2人。3年生は私だけだが...でも楽しくやろう」
「そうですね」
「そう思います」
それから緑先輩は「という事で、だ。好きな本とかあるかな」と俺に聞いてくる。
俺は「...うーん。普通の本しか分からないです」と答えた。
すると「そうか。君はさっき太宰を見たな?」と話す。
確かに太宰は見た。
だがちょっと待てあれは太宰か?
「何...太宰を見たのかお前」
「いやまあそうだが。中身があれとは思わなかった」
「この部室には秘めたる事ばかりだ。バラす事は厳禁だぞ」
「そ、そうか」
それ読書部じゃねーだろ。
考えながらも俺は「緑先輩。俺は徐々にでも本の内容を知りたいです」と言う。
すると緑先輩は「そうか。...まあ私的には...人には好みがあるからな」と苦笑する。
それから「まあでも君には村上春〇とか合うんじゃないか?」と話す。
俺は「ああ。成程っすね」と笑みを浮かべた。
「ところで」
「?...はい?」
「君は...あの子と知り合いなのかい」
「あの子っていうのは...」
「真凛ちゃん。つまりを言うと瀬本さんだね」
「...ああ。知り合いなんですか?」
「まあね。真凛ちゃんとは知り合いかな」
「...瀬本とは恋人同士でした」
「そうだったんだね」
「真凛からは何を聞きました?」
「浮気したという事を聞いたよ」
その言葉に目線を緑先輩に向ける。
緑先輩は真剣な眼差しで「...それはいけないね」と呟く。
俺はその言葉に「...ですね」と返事をした。
すると七瀬が「私は絶対に許しません」と怒った。
「七瀬ちゃん?」
「私はそんな汚らわしいのを絶対に許しませんよ」
「...そうか。...君はどうしたいんだ?彼女らを」
「先輩と話して復讐するって決めています」
「...そうなんだね」
「はい」
緑先輩は「目を覚ましてくれるかね。彼女は」と言いながら眉を顰める。
俺は「...分からないですね。味を占めていたらもう終わりですけど」と返事をする。
七瀬は「絶対に許さない」と怒る。
「私...真凛さんと話をします」
「え?いや。君に迷惑をかけるわけには」
「構いません。...私も気になっていた事ですし...それに部員ですから」
「...そうか。じゃあ頼めるかい」
「任せて下さい。緑先輩」
「俺はどうしようか」
「お前まで参加しなくて良いぞ」
「しかし。まあ俺も部員だしな」
「何か出来る事があったら参加してくれ」
「そうですね。先輩」
それからというもの。
なんというか浮気の事を、真実を。
それを突き詰める為に協力し合う事になった。
俺はその事に申し訳ない感じを感じながら見ていた。
☆
放課後になって帰る事になる。
その際に七瀬が「一緒に帰りませんか」と切り出したので一緒に帰る事にした。
そして歩いていると「やっと見つけました」と声が...。
俺はボルテージが上がる。
怒りのボルテージが。
「...一宮」
「久しぶりですね」
一宮勇人が目の前に立っていた。
学生服を身にまとい。
つまり高貴な学校からの学校帰りと言ったところか俺を見ていた。
その姿は当時と何も変わらない。
怒りしか湧かない。
「のこのことよく出てきますね。貴方」
「七瀬くんですね。君は黙って。...僕は長谷先輩と話したい」
「...何の用事だ」
「はい。いや。...語弊があるので解きたくて来ました」
「...なんのだ」
「何かその。僕が悪いみたいですけど僕何もしてないですよ。...薬を使ったりとかそういうのはしてないので」
「お前の言う言葉は何も信じられない。...俺らの幸せを壊した分死んでくれ」
「死なないですって」
そう言いながら苦笑する一宮。
俺は「掴みかからないだけでも良いと思ったらどうなんだ。お前」と言いながら一宮を心底睨む。
七瀬も睨んでいる。
「彼女はですね。僕を求めました」
「...は?」
「僕を大切にしたいと寄って来たんですよ。心底からです」
「...そうか。...じゃあ彼女もお前も最低な訳だな。良く分かった」
「ただですね」
「...なんだ」
「僕は彼女を奪ったんじゃないです。彼女が僕を奪った」
「...で?何が言いたい」
「つまり僕はあくまで被害者ですよ」
「だけど彼女を奪ったでしょ。貴方。先輩を裏切った」
「嫌だなぁ。言い方ですよ」
「とにかくお前は何回か死ねよ。マジに。死ねよ」
そう言いながら居ると「長谷先輩って頭おかしいんですか?そういう言葉ばっかりで」と一宮が言う。
俺は「お前のせいだけどな。こういう言葉を使わざるをえなくなっているのは」と言いながら静かに一宮を見る。
「...まあいいや。伝えたい事は伝えました。帰りますね」
「一宮」
「...なんでしょうか?」
「お前次は絶対にぶっ飛ばすからな。許さん」
「はいはい」
そして一宮は去って行く。
あの屑。
今は疲れているのもあったけど。
次会ってきたら殺してやる。
そう考えながら俺は人込みに紛れる一宮を見ていた。