4、秘めた想い
瀬本も一宮もこの世界の中で最も最低すぎる。
いずれにせよ...心底裏切られた気分だった。
俺は窓に手を触れ外を見る。
それから考え込む。
「...いずれにせよ別れは告げた。もうこれで関わる事はないだろう」
深夜...窓から外には街灯が見える。
少しの明かりも見える。
俺は呟きながら俺は窓のカーテンを閉じる。
それから横になってから布団を被る。
そして目を閉じた。
☆
翌日になってから俺は八鹿の作った朝食を食べた。
そして学校に行く為にドアを開けた。
八鹿は少しだけ家事をしてから出るらしく残った。
そして前を見る。
するとそこに...何故か七瀬が居た。
「七瀬?」
「あ、先輩。おはようございます」
「何をしているんだ?」
「いえ。...先輩と登校したいなって」
「そうか...え?珍しいな」
「いえいえ」
それから俺達は歩き出す。
すると数歩だけ歩いた時に七瀬がこう切り出した。
「先輩はこれからどうするんですか?」という感じで、だ。
俺は足を止める。
「どうするってのは?」
「いえ。その。...復讐もするとは思います。その。彼女を作るっていう気はない...ですか?」
「ああ。いや。彼女はもう作らない。俺は生涯独身で居るつもりだ。裏切りはこりごりだしな」
「そ、そうなんですね」
「ああ...でもなんでそんな事を聞くんだ?」
「いえ」
それから七瀬は公園を見る。
そして「先輩。まだ学校まで時間あるしブランコ乗りませんか?」と言ってくる。
俺は「?」を浮かべながら七瀬に付いて行く。
七瀬は勢いよくブランコに乗った。
勢いよく前後に動かす。
「えへへ」
「オイオイ。七瀬は子供かよ」
「良いじゃないですかぁ」
七瀬は笑顔を見せながら漕ぐ。
俺はその姿に苦笑しながら横にあるブランコに腰かける。
それから空を見上げた。
すると七瀬は漕ぐのを止めてから俺を見る。
そして「先輩は魅力的な男性です。だから彼女を作らないのは勿体ないですよ」と笑みを浮かべて俺に言った。
「...確かに俺は魅力はあるんだがな。多分だけど。...でももういいや。彼女は作るのがめんどいし...それに裏切られたら怖い」
「まあそういう人生も良いかもですね」
「だろ?っていうかそういうお前は作らないのか。彼氏」
「私ですか?...私は...」
「それこそお前の方が魅力があるぞ」
「えへへ。先輩ありがとう」
それから七瀬はまたゆっくりブランコを漕ぎ始める。
俺はその姿を見つつ空をまた見上げる。
すると七瀬が「私は好きな人が居ます」と言った。
顔を七瀬に向ける。
「そうなのか」
「はい。でもその人は天空に居ます。天の神様みたいな人です」
「?...随分と広大な人なんだな」
「いえいえ」
七瀬は飛び立った。
それから地面にひらりと着地する。
そして俺を見てきた。
俺は苦笑しながらその顔を見る。
「...私、その人に将来的には告白するまでは死ねないって思っています」
「そうか。応援しているけどな」
「はい。是非とも応援して下さいね」
「...」
俺は腕時計を見る。
それから立ち上がってから「そろそろ行かないか」と七瀬を見る。
七瀬は「はい。ですね」と笑顔になる。
そして歩き出した時。
七瀬が背後から俺に抱き着いて来た。
「お、おい?」
「先輩。負けないで下さいね」
「...え?」
「いや。あんな女に負けないで下さいね」
「あ、ああ。負ける気は無いけど」
「ですね」
そして七瀬は俺から離れる。
それからニコニコしながら歩き出した。
俺は「?」を浮かべながらその顔を見てから同じ様に歩き出した。
☆
私の名前は七瀬奏と言います。
私はギャルみたいな感じの姿だけど根っからは真面目です。
成績優秀だし容姿も磨いています。
そんな私は憧れの先輩が居ます。
それは...長谷仁先輩です。
私はそんな先輩を憧れの眼差しで見ながらいつも癒されます。
家庭環境の事を忘れてしまうぐらい。
あの毒親に汚染されるのが浄化されるぐらい幸せです。
私の親は親ではない。
「...」
目の前を歩いている長谷先輩を見ながら出会った時の。
不良に襲われていた私を救ってくれた時の先輩を思い出します。
先輩はなにがどうあっても正義で助けてくれます。
私はいつしかそんな先輩が。
「よし。じゃあ別れようか」
長谷先輩と高校に登校したらあっという間に着いちゃった。
私は残念に思いながら横に居て私を見る長谷先輩の顔を見ます。
そんな長谷先輩の手を握りました。
それから私は動揺している先輩に「じゃあまた」と言ってから手を離します。
「あ、ああ」
私は動揺している長谷先輩を見つつ昇降口に向かいます。
振り返って先輩に大きく手を振りながらです。
それから私は昇降口に入ります。
そして気が付かれない場所で胸に手を添えました。
「...」
そう。
私が好きな相手は先輩です。
長谷仁先輩が大好き。
この世で最も好きな人です。
私は赤面しながら心臓をどきどき鼓動させます。
「ふふ」
私はそう言いながら赤くなったままはにかみ。
そのまま下駄箱から靴を取り出して履き替えました。
だけどまあ今はこの想いは叶わない願いです。
何故なら私は鳥籠に入った鳥の様な感じだからです。
でも好きで居るだけでも悪い事はない筈です。
だから。