23、行く道は、晴れ
.....。
俺と親父と八鹿。
それから七瀬と柳、智和がこの場に居る。
何でこんな構図になってしまったのやら.....?
思いながら俺は親父に、何か食うか?、と聞いてみる。
カメラを回しっぱなしの親父に。
「ふむ。ではパンケーキをもらおう」
「そうだね。お父さん。じゃあみんなも?」
「あ、私は仕事があります」
「私は大丈夫。食べる」
「ああ。俺も仕事があるから」
そして残されたのは柳だった。
コイツ何だか苦手なんだよな.....。
思いながら柳を見る。
すると柳は俺を真顔のまま見てきてから、先輩、と聞いてくる。
俺は、はい?、と返事をすると。
「.....私と奏。どっちが好きですか」
「.....それはお前.....究極だな。.....俺は恋はしないって決めているんだ。すまない」
「そうなんですか?じゃあ私は今から貴方を惚れさせる為に動き出します」
「.....あのな.....恥ずかしいセリフばかり言うなよ」
「私はあくまで貴方が好きです。だから恥ずかしい事も全部全部したいです」
あのクソバカ殺す、と言う視線を感じる。
クラスの男子とキャーキャー言っている女子。
貸切状態の教室。
全く.....困ったもんだな、と思っていると。
「なあなぁ」
「.....うん?どうした。椿」
「お前の親父さんってスゲェ厳ついけど面白いな」
「まあな。これが俺の親父だから」
「それからさ。柳って子は何者だ?」
「ああ。七瀬の親戚らしいんだが.....知り合ったばかりで俺も詳しくはしらん」
「そうなんだな」
そして柳を見る。
柳はメニュー表と睨めっこしていた。
俺はその姿を見てから親父を見る。
親父は、所で、と.....切り出してきた。
?、を浮かべて親父を見る。
「.....常盤の母親と会ったそうだな」
「.....ああ。その事ならな。会ったよ」
「そうなのか。何か言っていたか」
「そうだな.....まあその。常盤の事に関して反省していた」
「.....そうか......」
「娘は本当に反省しています、だそうだ」
深刻そうな顔をする親父。
そして顎に手を添える。
俺はそんな親父を見てから八鹿を見る。
親父はお前が連れて来たのか、と聞くと。
うん、と答えた。
「.....何だか来たいからって言ってて聞かなかったの」
「成程な。まあ親父だしな。それはしゃーない」
「.....そだね。ゴメンね。突然の訪問で」
「いや。構わない。こういう事もあるとは思ったからな」
「でも良かった」
「.....何が?」
「お兄ちゃんの楽しそうな姿を見れて。.....あんな事もあったしね」
それは確かにな。
俺は思いながら考える。
それから居ると親父が、常盤さんには会えないのか、と切り出してくる。
俺は首を振ってから回答した。
会えないよ。少年鑑別所に居るみたいだしな、と。
「彼女は何らかの.....反省をしているなら会ってみたらどうだ」
「.....まあそのうちな。会えたら会うよ」
「私は忙しいのもある。会う事が出来ない。その代わりにお前に会って欲しい。宜しく頼む」
「.....本当アンタは他人任せだよな。.....まあ頑張ってくれているしな。分かった。タイミングがあったらどうにかする」
すると視線を感じた。
顔を上げるとそこに真剣な顔の柳が。
俺は、どした、と聞くと。
常盤さんって捕まった人ですよね、と聞いてくる。
「まあ確かにな。事件を起こした野郎だ」
「.....先輩。行く気なんですか?その人の所に」
「行く気は無いけどでもいつか話は聞きたい」
「許すんですか?先輩は」
「.....そんなつもりも無い。.....だが.....救いようはあったと思う」
だからこそ俺は行動しないといけないと思っている。
俺は常盤に会いたいって思うよ、と切り出すと。
柳は、変わらずですね。仁先輩は、と柔和になる。
その言葉に、まあ優し過ぎるのかもしれないけどな、と複雑になる。
「それは優しいんじゃ無いです。.....過保護すぎます」
「はっはっは。それは当たっているかもしれないな」
「お兄ちゃんはいつもそんな感じだしね」
「.....失礼だな。俺だって考えているぞ」
するとパンケーキを智和と横須賀が持って来た。
それから目の前に置かれる。
親父はそのパンケーキと俺と八鹿と柳を撮る。
しっかり撮りながら笑みを浮かべていた。
「.....親父。冷えるぞ」
「そうだな。じゃあ温かいうちにお前のオススメを食べてみよう。このメイド喫茶の監督だろう。お前は」
「何で知ってんだよ気持ちが悪い」
「酷いな。私の情報網を舐めないでくれたまえ」
「.....はぁ.....」
気持ち悪いが。
まあでもこう言う所が親父だよな。
そう思いながら俺は親父を見る。
親父はグラサンを変えた。
そして手を合わせて、いただきます、と言って食べ始める。
「柳も美味いか」
「はい。美味しいです」
「.....八鹿は」
「美味しいけどお兄ちゃん素材はどうしたの?」
「地元の商店街と交渉した。それで今に至る」
「.....全く。無駄に人との関わりが得意なんだから」
無駄とは失敬だな。
俺は思いながら苦笑いを浮かべる。
それからみんなを見る。
みんな笑っている。
「.....仁先輩ってそういうの得意なんですね」
「それはまあな」
「.....そうだよ。柳さん。お兄ちゃんの会話術って言ったら誰でも寄せ付けるんだから」
「そのお陰でクソ野郎も生まれてしまったけどな」
「そうだね。でもこれからだよ。お兄ちゃん。みんなで磔にしてボコボコにしよう。一宮は絶対に許せない」
「一宮は何処にいるか知らないが......まだ攻撃はしてくるだろうな」
そうだ、と佐藤が声を発した。
それから背後で男子達が俺を見てくる。
その時は一緒に戦うぜ、と笑顔になってみせる。
俺はその事に、犯罪だけは起こすなよ、と苦笑した。
そして俺は嬉しさと恥ずかしさに頬を掻いた
「長谷は仲間だからな」
「だな。俺達クラスメイトの」
そんな会話を見ていると親父が涙を浮かべて拭っていた。
幸せな世界だな、と呟きながら。
俺は、親父.....、と見る。
やっと手に入れたんだな。お前は居場所を、と言ってくる。
「やっと、だな。確かにな」
「散々あったしね。お兄ちゃん」
「.....だな」
それから俺は苦笑しながら周りに来るクラスメイトを見る。
そして盛大に溜息を吐いてから窓から外を見る。
こういう幸せが.....本当に。
願わくばずっと続いて欲しいもんだな。
そう思いながら祈った。
.....。