20、絶望の果てに
.....お久しぶりですね.....。
少年鑑別所とはつまりの所だが。
犯罪を犯した少年少女が起訴に値するかどうかを判別する場所らしい。
家庭裁判所に送るか、などの。
俺としては.....常盤に何の感情ももう持ってないが。
正直言ってあいつは自らの悪心に半分。
そして一宮に嵌められて半分、巻き込まれた、と言える感じなので何とも言えない。
「.....」
「.....」
俺達だが常盤の母親と対峙していた。
今度、と言ったが少年鑑別所で面会を終えた常盤の母親が来たのである。
俺は目の前の常盤の母親を見る。
常盤の母親は複雑な顔をしていた.....というのも。
申し訳無かった、という感じだ。
「.....仁くん。それから八鹿さん。この度は大変申し訳ありませんでした。.....うちの娘が.....ご迷惑を」
「.....此方こそすいません。大人達がみんな忙しいのでお会い出来ず」
「.....本当に心の底から謝っております。.....でもそれでは信じてはもらえないでしょうが.....」
「.....」
その言葉に、お兄ちゃんは死に掛けました、と怒りに声を震わせる八鹿。
俺はその言葉を聞きながら母親を見る。
この人を追求しても仕方が無いとは思うが。
万が一でもこのまま自殺してもらっても困る。
俺は常盤の母親に向いた。
「.....常盤はどうでした」
「.....あの子は.....妄想から目が覚めたのか反省していました。.....心から、仁ごめん、と言っていました。.....でもそれは本心かどうかは分かりません。.....何というか私もそうですが人間がこんなにも心が堕ちるものなんだと思いました」
「.....そうですか」
「そうですね.....信頼してほしいものでは無いですが.....時雨を少しだけでも心に留めておいてもらえれば助かります。.....何様かって話ですが。.....あの子は嵌められましたと思います」
「.....そうですね」
俺は顎に手を添える。
そして考え込む。
弁護士とかはどうなのだろうか、と思うが。
何でそうなるかといえば簡単だ。
調べてみたが接見では弁護士が入る事が多い様だ。
一般の面会では.....両親が入るのはなかなか難しい様である。
すると八鹿が切り出した。
「.....でもお兄ちゃんを襲ったりした罪は償ってもらわないと」
「.....ですね。それは分かります。.....その為に弁護士を雇っています。.....正直.....もうどうしたら良いか分かりませんが.....弁護士による接見もしてもらっています」
「.....」
詳しい事は分からん.....が。
取り敢えずそうなっているならそれで良いんじゃ無いだろうか。
思いながら俺は常盤の母親を見る。
すると常盤の母親は、もう少し前から弁護士を雇えば.....何とかなったんですかね、と泣き始めた。
とは言っても俺達もそんな法律家じゃない。
「少年院に送られても文句は言えないです。家庭裁判所が決める事なので.....。でも私は.....まだ希望を抱いています。愚かですかね.....私は」
「.....分からないです。.....正直そこら辺は。でも覚醒剤なもので捕まっています。有罪になるんじゃないですか?でも.....一宮が捕まれば全て明らかになるとは思いますが正直言って何処に一宮が居るかも分からないです」
「.....あの子も一宮とはもう二度と会いたく無いって言ってます。.....チャンスがあれば良いんですが.....」
「.....ですね。.....俺達はもう待つしか無いと思います」
「.....そうですね」
そんな感じで会話をしながら俺は窓から外を見る。
すると常盤の母親は、助かりました、と頭を下げてから。
そのまま、帰宅します、と俺達に謝ってくる。
俺はその姿を見ながら、はい、とだけ返事をして見た。
「.....すいません。本当に.....こんな私を招き入れて有難うございました」
「.....正直、俺達は貴方を追い返そうかと思いました。.....でも貴方の事でしたので.....もう少しだけ話をしてみても良いかなって思いました」
「.....こんな私に.....チャンスをくれたんですね」
「.....常盤が歪んだのは貴方のせいじゃ無いって思っていますから」
「.....」
常盤の母親は号泣する。
そして顔を覆った。
俺はその姿を見ながら八鹿を見る。
八鹿は俺を見ながら真剣な顔をする。
☆
「今日は有難う御座いました」
「.....はい」
「.....」
「宜しくお伝え下さい。.....特にお父様に」
「.....同級生だったんですね」
「.....はい。近所付き合いがありました。.....昔から.....」
そして俯く常盤の母親。
俺はその姿を見ながら複雑な顔をする。
それからまた常盤の母親を見た。
常盤の母親は涙を浮かべながら、すいません、と謝る。
そうしてから、失礼します、と去って行く。
その姿に俺は叫んだ。
「.....すいません!」
「.....は、はい」
「.....常盤の事.....頼みます。.....アイツ.....最後に俺じゃなくて自らの腹をナイフで刺したんです」
「.....はい」
「それは微かでも抵抗の証だったと思います.....だから」
「.....はい」
声が涙声で濁っている。
俺はその姿に、常盤に宜しく言っといて下さい、と切り出した。
すると常盤の母親は、はい、と言いながらそのまま涙を拭きながらそのまま俺達に頭を少しだけ下げてからそのまま常盤の母親を見送る。
常盤の母親を許した訳じゃ無いが.....でも。
「.....これで良かったの?お兄ちゃん」
「まだ戦いは終わってない。.....だが今はこれで良いんじゃないか」
「.....」
「.....」
俺は八鹿の頭をわしゃわしゃと撫でた。
それでも八鹿は表情を崩さず。
俺を見てきていた。
その姿に俺は笑顔になる。
そして、大丈夫だ、と八鹿を.....ゆっくりと抱き締めた。
.....。