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2、死にゆく大地

大地が歪んで見える。

ただひたすらにそう感じながら俺は教室に入った。

すると友人の吉永智和よしながともかずが「おはようさん」と声をかけてから笑みを浮かべてきた。

高校1年の頃からの親友の男子の同級生。


俺はそんな智和になんとか笑みを作り「おはようさん」と言う。

そんな俺の様子に「?」を浮かべながら黒縁眼鏡の奥の視線が俺を射抜いた。

「どうした?」という感じで、だ。

その言葉に「なにがだ?」と聞いた。

すると智和は「いや。お前らしくない。覇気がない」と言葉を発した。


「覇気がない、か」

「...なんかあったか」

「いや。なんでもねぇ」


智和にも心配をかけさせる訳にはいかない。

そう考えながら俺は苦笑した。

だが智和は「もしかして瀬本さんとなにかあったか」と聞いてきた。

鋭いなこの眼鏡。

考えながら「...ま、まあな」と返事をする。


「なにがあった」

「...浮気されたんだ」

「...マジか...」

「ああ。それも俺の後輩とな」

「...ああマジか...」

「なんでまああのクソ野郎どもに何か鉄槌を下してやりたいんだがな」

「...」


考え込む智和。

俺は教科書を出しながら机に仕舞う。

すると智和が「よし。復讐だ」と言う。

俺は「...やっぱりお前もそうなるか?」と聞く。

智和は「当たり前だろう。このままやられっぱなしで居るのか」と話す。


「まあそれは嫌だな」

「だろ?俺は...嫌だな。そんな汚らわしい行為は許さん」

「だろうなぁ。お前ならそう言うと思った」

「つーかお前は何もしないのか」

「俺だって復讐はしたいとは思ったけどさ」


そう言いながら手を止める。

それから顔を上げた。

「だが俺が手を出した場合さ。...それは俺達が悪いって事になるじゃん?」と智和に話す。

智和は「そんなもんかねぇ」と肩を竦めて席に腰かける。


「俺としては犯罪行為は止めたが良いとは思うんだよな」

「それは確かにそうだが。だけどこうも考えられないか?」

「は?」

「いや。先に手出ししたのはそっちなんだからってやつ」

「...あー。成程な」


俺は納得しながら居ると智和がジュースを飲んだ。

それから一息ついてから「なあ。それって目撃したのか?」と聞いてくる。

俺は「ああ。そうだな。...ちょうどラブホから出てきたところをな」と言葉を発してから溜息を吐く。

智和は「うわー。グロテスクだなそれ」と眉を顰める。

その言葉に「まあな」とスマホを弄る。


「七瀬さんが知ったら切れるぞ」

「切れたな。現に」

「あー。そうなのか」

「...復讐すべきって言ってる」

「だろうな。俺も賛成」

「...そうかぁ」


そしてチャイムが鳴る。

俺は智和と別れてからそのままホームルームを受ける。

それから俺はホームルームを終えてから表に出ると...瀬本由香が居た。

俺を見ながら「おはよ」と言ってくる。

大地が割れそうなぐらい腹が立った。



「...ああ。おはようさんだな」


平然とした態度をとる。

すると瀬本は「どうしたの?なんだか元気ないね」と言う。

誰のせいだと思っているのか。

考えながらも首を振り「いや。なんでもないな」と笑みを浮かべた。


「そっか。あ。仁さ。放課後にデートしない?」

「...それはいいや」

「え?え、なんで?」

「俺は今はデートする気は無い」

「えー。そうなの?用事?」

「用事...か。まあそんなところ...」


すると背後から「そうです。先輩は用事です」と重い声がした。

背後を見ると七瀬が眉を顰めて立っていた。

俺は「七瀬...」と言う。

瀬本は「七瀬ちゃんも用事?」とニコッとするが。

七瀬はキツイ態度のまま接する。


「そうですね。...先輩は私と用事です」

「え?そうなの?仁。彼女居るんだからほどほどにね」

「...」


七瀬は「瀬本先輩。申し訳ないんですがこの先も彼に近付かないでくれますか」と威嚇する様に瀬本を見る。

瀬本は「へ?」となりながら目をパチクリする。

それから「え?」となる。


「それはどういう意味?」

「言葉通りの意味です。貴方は...何をしたか胸に手を添えて下さい」

「...何をしたか?」

「そうです。...貴方は何をしたか反省して下さい。そして...」

「待て七瀬。それは俺が言う」


それから俺は瀬本を見る。

瀬本は「...」となりながら俺を見ていた。

何か分からないという感じの顔だが。

俺は断罪した。


「瀬本。別れよう」

「...え...え?な、なんで。仁」

「お前が何をしたか胸に手を添えて聞いてみろ。...一宮の事もあるが」

「...え...」


一宮。

その言葉に瀬本は考え込み。

青ざめる。

そして「ま、待って。あれは」と言う。

俺は「待ってあれは、じゃない。俺は見た。お前が...ラブホから出るのをな」と怒りながら言う。

七瀬が呆れる。


「事実なんですね」

「待って。待って!お願い。語弊があるから」

「待たない。...お前は本当に心底人を苛立たせるのが好きだな」

「じ、じん。お願い。...まだ私は」

「まだ私はなんだ」

「貴方を愛している」

「上っ面だけですね。...最低」


それから七瀬は「いやはや汚らわしいですよ?他人のちん棒を舐めたんですよね?挿入したんですよね?先輩を裏切って。死んでくれますか?」と怒る。

言い過ぎだとは思ったが。

七瀬は完全に怒りが爆発している。


「...」


瀬本は反論も何も言えなくなりそのまま黙った。

そして踵を返して去って行った。

俺はその背中を見つつ唇を噛んだ。

忌々しい。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 多分デートの約束有ったのに、来ない彼氏に連絡ない彼女? 想定済みで見せびらかす為だったとかか。
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