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18、貴方の隣に

.....。

全てが歪だとは思える。

だけどその中でも希望は必ずあると思っている俺が居る。

そんな思いを抱きながら俺は目の前のミニピンやらミニチュアダックスフンドとか秋田犬とか見ていた。


みんな犬も猫も人間も生まれてからこうやって生きている。

多少の人生の屈折はあっても、である。

結構な人生を耐え抜いて.....此処に居るのだ。


一度は踏み外した人生もあるかも知れない。

だったらアイツ。

一宮も一度は踏み外したかもしれない道を正す様に救いようがある筈だと思ったりもする。


だけどこんだけ裏切られてはもう手の付けようも無いかも知れないが。

何というか正直言って一宮に対しては気持ちが折れてしまった。

俺の方が、である。

何かもう.....本当にこの先、どうしたら良いんだろうな。


「.....お兄ちゃん。有難うね」


「.....何がだ?」


「.....私、ペットショップに来れて良かった。.....本当に良かった。今は休息を求めていた気がする」


「そうなんだな」


「.....うん」


そして目の前の猫を見ながら俺達は会話をする。

食料品を持っているのであまり長時間は居れないのが残念だ。

思いながら居ると八鹿は、帰ろっか、と言い出した。

俺は、もう良いのか、と聞く。


「.....うん。栄養分は補充出来た」


「そうか。.....なら良いけど」


「.....お兄ちゃんはどうかな」


「.....俺も和ませてもらった。.....何というか.....荒んでいたしな」


そっか。

それは良かった、と言いながら俺達はペットショップを後にする。

それから歩き出す俺達。

すると途中で八鹿が俺に向いてきた。


「.....お兄ちゃんは.....まだ一宮を救いたいって思うの?」


「.....!」


「.....救いたいの?.....一宮は最低だよ?それでも救うの?」


「.....救いたいとかそういう気持ちは今はもう無い。.....でもな.....アイツと決着をつけないといけないとは思う。.....元が付こうがあれは俺の後輩だったからな。だから何かしないといけないと思う」


「でもお兄ちゃん。.....それで心底悩むなら止めて。お願い。.....心配だから」


「.....悩んではいないぞ。.....俺は.....もう気持ちとか全部.....慣れたから」


そんな感じで言いながら俺は苦笑い。

そして食料品を家に運ぶ。

そうしてから仕舞う。

するとその中で八鹿は、お兄ちゃんは優しい部分があるから。だから本当に心配な部分がある、と切り出してきた。


「.....お兄ちゃんは本当に穏やかで良い人だけど.....時には心底、無常になる事も大切だよ」


「.....ああ。.....分かってる」


「.....だから.....ね」


「.....ああ」


そんな会話をしながら俺達は見合う。

そして俺は唇を噛んだ。

俺の関係性はどうしようもない.....だからこそ。

無情にならないといけない時もあるだろう。


「.....お前には色々学ばせてもらってるよ」


「.....そだね。.....まあ私は妹ですから」


「.....だな」


そして俺は、ちょっと勉強とかしてくる、と言いながら八鹿を見る。

すると八鹿は、うん。お兄ちゃん、と言いながら笑みで手を振ってくれた。

俺はそれに答えながら.....そのまま廊下に出る。

そうしてから複雑な顔になる。


「.....無情に.....ね」


分かってる。

正直言って本当に全てにおいて甘いよな俺も。

常盤に関しても全てにおいてもそうだが.....、と思う。

思いながら俺は天井を見上げる。

そして歩き出した。


取り敢えず文化祭を今は考えよう。

それから.....七瀬に向き合おう。

そんな事を思いながら自室に戻った。



「.....うん.....?」


朝。

眠気まなこを擦りながら起きると。

また目の前に七瀬が!

俺はビックリしながら飛び起きる。

が.....もうそんなに反応しなかった。


「.....ったくコイツは.....」


俺はそんな呟きをしながらツンツンと皮膚を突く。

グッスリ眠っている様な七瀬の頬を、だ。

そして七瀬は目を覚まし、うん?、と目を開ける。

おはようさん、と挨拶してきた。

いや。おはようさんじゃない。


「あ、おはようです。先輩」


「.....お前良い加減にしろよ?.....何やってんだよ」


「.....モーニングサービスです」


「.....嘘つけお前。眠たかっただけだろ。もう騙されんぞ」


「いや。そんな事は.....えへへー」


えへへー、じゃねぇよ。

思いながら俺はジト目で後頭部に手を添える七瀬を見る。

すると七瀬は、まあ本音を言いますと心配だったから、ですね、と言い出す。

俺は?を浮かべて七瀬を見る。


「.....だって.....常盤さんが自らでお腹を刺しましたしね」


「.....ああ。それか。.....確かにな。ショッキングだよあれは」


「.....最後の最後に自らに天罰を下したんですかね?」


「それは分からない。.....そもそもアイツが何をしたかったかは分からない。.....だけど.....もし常盤は自らで腹を刺したのだったら。もう一度やり直せるチャンスがあるって思ってる感じではある」


「.....ですね.....確かに」


「.....だから俺は向き合おうと思う。アイツらに」


「その時には私が貴方の隣に居させて下さい。先輩」


真剣な顔で俺を真っ直ぐに見てくる七瀬。

俺はその姿を見ながら、いや。俺は1人で大丈夫だ、と答える。

その瞬間にムッとした七瀬は俺の頬を持った。

そして何を思ったかそのままキスをしてくる。

オイ!!!!?


「駄目です。.....先輩は1人じゃ無い」


「お、お前!?」


「.....私が居ます。私にもその思いを半分わけて欲しいです。そして.....周りに頼れる仲間が居るんですから」


「.....まあそうだが.....」


「.....1人で決着つけて死んだら元も子もないです。.....そんなの絶対に嫌です」


「.....分かった。.....そこまで言うなら頼る。.....有難うな。七瀬」


私の命の苗木は枯れて無かった様なものです。

でもその時に先輩が水を与えてくれた。

そこから蘇ったんです。

だから私は先輩に付いて行くって決めましたから、と笑顔になる七瀬。


「.....俺なんかに付いて来てもマイナスなのにな.....。本当に良い奴らを持ったな俺は」


「.....マイナスをプラスに変えれば良いんですよ。.....先輩。大丈夫です。.....私達が居ますから」


もう先輩を絶望させない様にします。

と言いながらまた笑顔で俺を見てくる七瀬。

俺はその姿を見ながら、だな、と返事をした。


そして時計を見ると。

登校時間が.....ホームルーム直前で完璧に時間は無くなっていた。

おぁ!!!!?ヤベェ!!!!?

.....。

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