14、家族の愛情
☆
過ちは数多くある。
私は色々な人を裏切った。
だから私は...この町を反省の意味で出て行く。
思いながら私は帰る。
そして帰宅した。
「お姉ちゃん。お帰り」
築70年くらいの中古民家。
当然外観はボロボロの家から真凛が出て来た。
私は「ただいま。真凛」と言う。
真凛はニコニコしながら私の手を引く。
「待ってた」
「おじいちゃんは大丈夫かな」
「...うん。大丈夫だよ。元気そう」
「良かった」
そう話す中で下半身がむず痒くなる。
一宮勇人に病気を移され私は...仁にも迷惑をかけ。
生きている意味はあるのだろうか。
考えながら私は「ねえ。真凛」と聞く。
すると真凛は「ん?」と私を見る。
「生きるって...どういう事だと思う」
「生きる?」
「...生命が生きていくには...人間が生きていくにはって感じかな」
「何それ?なんでそんな哲学的なの?」
「...私が生きる目的が分からなくなりそうだから」
その言葉に真凛は「...」となりながら私を見る。
私は「でも」と切り出す。
それから先程の緑さんとの会話を思い出す。
そして「質問したけど私が生きるって意味は答えは知っているの」と話す。
「...それはどういう答え?」
「私は贖罪をして生きていく。当たり前の事だけどこれが大切なんだろうって」
「...そうだね」
真凛は私をジッと見る。
それから「その通りだと思う」と話してきた。
私は「真凛もそう思う?」と聞いてみる。
真凛は「私はまだ若いから。お姉ちゃんみたいな過ちもしてない。だから私には何が過ちで何が正解かも分からない」と答えた。
「...だけど私は死ぬ事だけは分かる」
「それはどういう意味?」
「その死ぬ事は...情けない人生の逃げだよ。お姉ちゃん」
「...真凛...」
「その自殺は完全な逃げだよ」
そう言いながら真凛は私を強く見る。
私は「...だね」と返事をした。
それから家の中に入る。
そしてお爺ちゃんの下に行った。
「おお。由香。お帰り」
「ただいま。お爺ちゃん」
「辛そうな顔をして。まあ座りなさい」
「...お小遣いなら要らないよ。お爺ちゃん。今はそんな事をしている場合じゃないよ」
「そうかの。...でものう。由香。受け取るのも一つの礼儀だぞ」
「...気持ちは分かるけど」
「じゃあ受け取りなさい」
それから私は少ないお爺ちゃん。
治五郎の年金を貰う。
実際、全くお小遣いにはしてないのは内緒だ。
将来の為に貯めている。
「お爺ちゃんは何か飲みたいのはある?」
「そうじゃな。...まあお茶をくれるか」
「分かった。じゃあ入れてくるね」
私はお茶を入れてからお爺ちゃんに渡す。
それからお爺ちゃんはお茶を飲みながら「美味しい」と言う。
私はその顔に「良かった」と言う。
お爺ちゃんの病魔は全身を蝕んでいるが。
あくまで治療費が...あまり出せない現状がある。
手術もしないといけないのに。
「ワシはもう直ぐ死ぬから」
そう言ってから手術を受けようとしない。
私はそんなお爺ちゃんが心配だった。
すると真凛が「ね。お爺ちゃん」と言った。
「お爺ちゃんは何か欲しいのないの?」
「そうじゃな。...じゃあ背中を揉んでくれるか」
「いやいや。違うよ。お爺ちゃん。欲しいものだよ」
「欲しいものはもう貰った」
お爺ちゃんは私達を見渡しながら「ワシはお前達の笑顔さえ見れればそれでいいんじゃ」と言う。
私はその言葉に真凛と一緒にお爺ちゃんを見る。
正直。
お爺ちゃんには感謝はしている。
だけど。
「私達はもう1人立ち出来るよ。お爺ちゃん」
「...!」
「だから私達はお姉ちゃんと一緒に願う。お爺ちゃんに長生きしてほしい」
「...由香...真凛...」
その言葉に涙を浮かべるお爺ちゃん。
それから泣き始める。
この人には数えきれない恩がある。
それはどういうのかといえば。
お爺ちゃんが...私達をあの絶望から救った。
父親から遠ざけた。
「...」
父親は私達を邪魔なものとして扱っていた。
母親は育児放棄をした。
それからその後に親権は母親は親権を嫌がって担わずお父さんに移ったけど育てる事を諦めたように。
ネグレクト状態だった。
幼い私達は途中でお爺ちゃんに救われた。
そんなお爺ちゃんの体内に悪性の癌が見つかった。
1年しか経ってないが全身に転移した。
進行が早く止めようがなかった。
「...お爺ちゃんには感謝しかない」
「だからこそ長生きはしてほしいんだよね」
「...良い子に育ったのう。お前達は。安心している」
「私はまだまだ未熟だよ。お爺ちゃん」
「そんな事はないぞ。ワシの可愛い娘じゃからな」
お爺ちゃんは私達の事を孫とは思ってない。
娘として大切に育ててくれた。
そんなお爺ちゃんには絶対に...死んでほしくない、から。
「...由香?」
「あ、い、いや。ごめん」
「泣いているの?お姉ちゃん」
「ごめん...涙が止まらないや」
お爺ちゃんには本当に長生きをしてほしい。
だけど心の中では反発している。
生きていくのって本当に辛いなってそう思えた。
私は...本当に愚か者だな。
「お爺ちゃん」
「...なんだい?」
「私は...身体を売ったの。お爺ちゃんの治療費の為に」
その言葉に真凛が「ちょっと待って!お姉ちゃん...それは内緒って...」と絶句する。
青ざめる真凛。
私はそんな真凛に「これ以上隠すのは嫌だ」と告げる。
そして私はお爺ちゃんを見た。
「...そうか」
正直ぶん殴られるかと思った。
幾らお爺ちゃんでもこれはもう容赦はないだろう。
そう思ったのだが。
お爺ちゃんは手を伸ばしてきたがそれは私を抱きしめてくれた。
「...馬鹿な子だな...全く。でもそれは裏返せば...ワシを大切にしてくれたって事じゃな」
「でも私は家族を裏切ったから。死に値するよ」
「ワシはそうは思わん」
「え?」
「じゃが由香。お前のやった事は社会的には許されない。これから反省して生きていくんじゃぞ。そしてもうそんな真似はするんじゃない」
「...」
私は崩れ落ちた。
それから涙をぼろぼろ流した。
馬鹿だな私。
全てを失って...先を見据えずに動いて。
本当にありのままに全部を失った。
死んでもおかしくないのに。
お爺ちゃんはそれでも私を見捨てないのか。
何故なのか。
「お爺ちゃん身体を売った事に怒ってないの?」
「そりゃ勿論怒る。...じゃが怒れない部分もある」
「...」
「由香。...本当にお前は馬鹿じゃな。ワシの事なんぞ放っておけば良いものを」
「私は見捨てれなかった。お爺ちゃんを」
「...じゃろうな。ありがとう。由香」
そして私はその日。
二度と一宮勇人に関わらない事を決意した。
そして。
私は一宮勇人を倒す事を決意した。