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放課後カミカクシ  作者: 雨音静香
第肆章 異界突入
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肆之玖 立体視

「それで、目を開かせることは出来そうかね?」

 しばらく羞恥心に身悶えていた私も、雪子学校長の質問に頷けるところまでは回復出来ていた。

「では、悪いが試して貰えるかね?」

 返事をしてしまうと上擦った声でまた恥ずかしくなってしまいそうだったので、私は無言のまま頷く。

 自分は目を閉じて意識を集中し、分身に『目を開け』と念を送ってみた。

 すると、すぐに雪子学校長から「卯木くん、映像が映ったぞ」と報告が上がる。

 私は慌てて目を開くと、雪子学校長が手にし他スマホに視線を向けた。

 そこには天井の光景が映し出されている。

「どれ」

 雪子学校長がそう口にした後で、私の分身の顔の前に手をかざすと、分身の視線であろうスマホの画像にも手が映り込んだ。

「『異界netTV』が視界を映し出せるのは間違いないな」

 私は雪子学校長に頷いてから、分身に視線を向ける。

 昨日の暴走の事もあるので、目を開けさせるための『同調』は既に切った。

 もう分身の感覚が伝わってきていないので、私では無い私そっくりの女の子が横たわっているように見える。

 開いた瞳もマネキンみたいな作り物のとは違っていて、普通の人間と見分けがつかないので、結花さんと舞花さんのように私の双子じゃ無いかという錯覚さえ覚えてしまう程だ。

 けれど、今、ベッドの上の分身は、ただ天井を見るだけで瞬きもしなければ、身じろぎもしないいので、ずっと見ていると不安を覚える。

 その不気味さに耐えられなくなった私は、雪子学校長に断らずに目を閉じさせてしまった。


「あの、すみません……勝手に」

「気にすることは無い。試すことは試し終えているしね」

 私の勝手な行動に対する謝罪の言葉に軽く頭を振って、雪子学校長は許してくれた。

 そんな雪子学校長に、罪滅ぼしでは無いが、私は一つの提案を持ちかける。

「次は私に接続して貰えますか?」

「まあ、次は、君か、私かだろうしね」

 雪子学校長は私の言葉にそう返してから、ほんの少し考える素振りを見せてから「では、頼む」と私を見た。

「はい」

 私は一応どうなるかわからないので、雪子学校長と対面する形で椅子に腰掛ける。

 視界内に雪子学校長と彼女が振り向かないと見えないであろう背後の壁を収めたところで「いつでも大丈夫です」と伝えた。

「了解した」

 そう言うなり雪子学校長は手元のスマホを操作し始める。

 指を離し、画面に注目し始めたので、私は首を前後左右に動かしてみた。

「どうですか?」

「うむ、映っている。君の動きに合わせて視界が変わっていくが、当たり前だが、私の方から見ると君の頭の動きと視界の動きが左右反転するのに、不思議な感覚を覚えるな」

 なるほどと私が頷いていると、雪子学校長から指示が飛んでくる。

「片目ずつ、目を手で塞いでくれるか?」

「あ、はい」

 言われるまま、右手の平で右の目を覆い隠した。

 当然視界が半分になるが、それ以外は何も変わらない。

 スマホの方の表示は何か違うのだろうかとも考えながら、一応目だけを動かして視界を動かしてみると、雪子学校長から「手を離してくれ」と指示が飛んできた。

 言われるままに右手を離して、再び両目で見る。

「なるほど……微妙にだが、映像に変化が出るな」

「え?」

「確認のために左目を覆い隠してくれるかね?」

 そう言われて、どんな変化が出るのか聞きたい気持ちはお預けになってしまったが、ともかくは検証だと考えて左手で左目を覆い隠した。

「よし、今度は両目で見てくれ」

「は、はい」


「ほんの些細な事だが、視界をそのまま投影しているからか、立体感に微妙な差異を感じた……まあ、視界が半分真っ黒になるという大きな変化はあるんだがね」

 そう言って、雪子学校長はスマホを私に差し出した。

「私も人体構造に詳しいわけじゃ無いが、目で捉えた映像を脳が処理して、人はモノを見ている」

 雪子学校長の言葉を邪魔しないように、私は無言で頷いて聞いていることを伝える。

「このスマホに映し出されている映像は目が捉えたままに近いのかも知れない……というわけで、君の意見も聞きたいのだが?」

 私は「意見ですか?」と苦笑してしまった。

 想像だけでは答えにくいと思ったのが大きいが、そう考えた時に雪子学校長の言葉の意図に思い至る。

「もしかして!」

「私を選択してみてくれ」

「いいんですか?」

「まあ、今確認するなら、私か君しか無いだろう?」

「そうですね」

 私は雪子学校長の許可を得て、スマホに手を伸ばした。

 既に私とのリンクは解除されていて、グレーと黒で名前が記された名簿が表示されている。

「いきます」

「少し待ちたまえ」

 雪子学校長はそう口にすると、私が座っていた椅子に移動して飛び乗るようにして腰を下ろした。

「よし、いいぞ」

 改めて発せられた許可に頷くと、私は雪子学校長の名前をタップする。

 接続するかどうかの選択肢が表示されたので、迷わず『接続する』を叩いた。

 直後、スマホの画面に黒い長方形が出現し、間を置かずに、私を真ん中にこの部屋を映した映像が表示される。

 スマホを盾持ちから横持ちに切り替えると、先ほど同様に表示が全画面に切り替わった。

「雪子学校長、お願いします」

「まずは、右目から塞ぐぞ」

 雪子学校長から返ってきた声に「はい」と答えて了承する。

 程なくして、画面の半分が黒一色となり、残る画面に映る映像は少し立体感が失われたように見えた。

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