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放課後カミカクシ  作者: 雨音静香
第肆章 異界突入
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肆之肆 無茶振り

「ダメだ。許可出来ない」

 雪子学校長に断じられて、私は唇を噛むが、これに反対する言葉を口にすることは出来なかった。

「少なくとも、神世界へ立ち入ったことが無いのに、いきなり『種』に挑むことは、君だけで無く、皆にも被害を及ぼす可能性がある」

 私の動向を訴えてくれようとしていた舞花さん達を制するように、雪子学校長ははっきりと断言する。

「君たちも最初は『種』が無い時に踏み入っただろう?」

 諭すような雪子学校長の言葉に、何人かが渋々頷いた。

 空気が悪くなってしまったのを感じたので、私は可能な限り明るい声で「皆の無事を祈っていますね! 早く皆と一緒に行けるように、頑張るので、近いうちに私も一緒に行きます!」と断言する。

 正直同行出来ないのが悔しかった。

 でも、雪子学校長の言葉はもっともだし、無理矢理参加して皆の連携を崩すわけにはいかない。

 そもそも、これまで特訓場での特訓で二回の中断がなければ、参加出来ていた可能性もあると考えると、自業自得という感覚もあるし、これ以上わがままを言うわけにはいかないと、自分の気持ちを戒めた。

「そんなに心配しないで、リンちゃん! 舞花達、何度も祓ってきてるんだから!」

「舞花さん」

 舞花さんの言葉と表情で、明るく振る舞っているつもりの自分が、虚勢を張っているように見えているのだろうと察する。

「待ってるだけって心配よね。ユイもそうだった」

「結花さん」

 舞花さんに続いて声を掛けてくれた結花さんは、少し困ったように笑ってから「でも、先輩を信じて待つのも後輩のお仕事だよ」と付け足した。

「舞花さん、結花さん。大丈夫です。私、先輩方の無事を信じてます!」

 上手く言えたか自信は無かったけど、二人とも頷いてくれる。

 それを確認してから他の面々にも視線を向けた。

「志緒さんも、那美さんも、東雲先輩も、皆無事で戻ってくるって信じてますから!」

 そう伝えると、志緒さんは「リンちゃんの分も頑張ってきますね」と返してくれる。

 那美さんは「ん、頑張る」と短く頷いてくれた。

 最後に東雲先輩は「今日のはそれほど強い感覚は無かったから、安心してくれ」と言い切る。

 それから、私を真っ直ぐ見て「大丈夫だ。油断はしない」と付け加えてくれた。


「今日は花子が同行する。卯木くんが神世界に出入りするための、仮の入り口を確保するためだ」

 雪子学校長の言葉に、皆が「はい」と声を揃えて返事をした。

 瞬間、ピシッと空気が変わるのを感じる。

 皆が脅威に対して一丸になる姿勢に、純粋に憧れを感じる反面、そこに加われていない自分のこれまでの行動が悔やまれた。

 狐雨にしても、分身の同調にしても、私が好奇心のままに行動してしまった結果なので、迂闊な行動はするまいと心に誓って、じっと皆の勇姿を見詰める。

 最初に動きを見せたのは花子さんだった。

「それじゃあ、先に行きますね」

 そう皆に断った後で、花子さんはそのまま『黒境』をくぐっていく。

 続いて、皆がそれぞれベッドの上に横になった。

 直後、皆の体から昨日映像で見たのと同じ光る球体が出現して、東雲先輩と志緒さんのモノは迷い無く真っ直ぐ『黒境』へと向かって飛んでいく。

 舞花さんの『球魂』は私の頭の上を一回転してから『黒境』へと向かい、それを追って結花さん、最後に那美さんのモノが『黒境』をくぐり抜けていった。


 花子さんや皆の『球魂』が『黒境』の向こう側に消えた直後、私は大きく息を吐き出し、すぐに大きく息を吸い込んだ。

 その状況になって、自分が呼吸も出来ていなかったことに気付く。

 改めて自分をコントロール出来ていない事実に、嫌気がさした。

 そんな私に、一人この場に残る雪子学校長が声を掛けてくる。

「よし、では中の様子を確認するか」

「え?」

 想定に無かった雪子学校長の言葉に、目が点になった。

「今回は花子が、こちらの世界と神世界に道を通す道具を持ち込んでいるからな、多少の通信なら可能だ」

「そ、そうなんですか?」

「君もただ待っているだけでは気が気では無いだろう?」

「それは確かにそうです!」

 雪子学校長の言葉に食い気味に答えてから、周囲を見渡す。

「どうやって、確認するのですか?」

 映像を投影するような機械が見当たらなかったので、そう尋ねると雪子学校長は平然ととんでもないことを言い出した。

「君の分身の能力を応用して、神世界の状況を映し出す投影機を出現させたまえ」

「は……い?」

 正直、雪子学校長の言っていることが上手く飲み込めない。

 理解出来ないのではないし、何を求められているのかはわかるのだけど、何を言っているのかという思いが強くて、そこから先に進めないのだ。

「な、何か、そういう道具があるんじゃ無いんですか!?」

「簡潔に言えば、無い」

 雪子学校長の断言に、私は「へ?」と口にするのが精一杯で、それ以上の言葉は続かない。

 そんな私に対して、雪子学校長は「だが、君の想像力と変幻自在な能力が噛み合わされば、生み出せるかも知れない」と真剣な表情で言い切った。


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