終之参 互助
舞花ちゃんと結花ちゃんと手を繋ぎ、真ん中に立つ眉の辺りでパッツンに切りそろえた片間でのウェーブの掛かった髪の少女は、栗橋さんだった筈だ。
私がそう考えていると、リンリン様が『その通りじゃ。あの娘は栗橋羽海、能力は『継続』……今回はどちらかというと、炎や氷の形を『維持』しておるようじゃがな』と情報を添えてくれる。
リンリン様の言葉を聞いて、能力が派生したのかなと思ったのだけど、少し違ったようだ。
『この娘の能力は『保つ』事なのじゃろう。名称は便宜上付けられた呼称に過ぎぬようじゃな』
私はリンリン様の説明になるほどと言いながら『それで、炎の球も氷の球も、黒い人型に何度もぶつかってるのに壊れたりしないんですね』と思い浮かべる。
『そういうことじゃな』
リンリン様の返答を耳にしてから、月子先生に「弓越の子達も意識が戻ったんですね」と声を掛けてみた。
月子先生は「言っただろう? 皆無事だと」と言って、柔らかな笑みを浮かべる。
この調子と雰囲気なら、無事、黒い人型を、『種』を倒せたんだろうなぁと安心して視線を動画に戻した。
動画の中では新たな変化が生まれていた。
氷の球が突如としてサイズを大きくした上で分裂していく。
その光景を見て、弓越の残る三人の内の一人に『増殖』の力を持っていると書かれていた子がいたのを思い出した。
『正解じゃ、主様。木元伊織じゃな。増殖とされておるが……その本質は『増す』じゃな、結果的に数や質量が増えておるわけじゃ』
リンリン様がテンション高めに褒めてくれるのが心地よい。
皆が無事だと聞いた上で観る緋馬織の皆と弓越の皆が協力し合ってる姿は、映画のクライマックスシーンのようだ。
動画の中では、木元さんだと思われる二つ結びの女の子が舞花ちゃんと手を繋ぎ、代わって栗橋さんが手を離すと氷の球に変化が起きた。
ビリビリと電気のスパークを、分裂した全ての水の球が纏い始める。
これまでの経験から、雷は『木行』に属していて『水行』の水の球とは属性が違うことに気が付いた。
すると、即座にリンリン様が解説してくれる。
『結果からの推論じゃが、そもそも水行は木行を生む関係になっておるのじゃ。保つ力を持つ娘が離れたことで、増す力の影響が強くなり、水行が強化された結果、木行を生み出す力も増したようじゃ』
つまりこの電撃は木行の力を宿した……いや、生み出した証なんだと理解した。
一つ理解を深めた私に、リンリン様は『まだまだ終わりでは無いのじゃ』と言う。
その言葉を裏付けるように4人目の少女が姿を見せた。
長い髪をポニーテールに結んだ真面目そうな少女は、栗橋さんの立っていた場所に入って、舞花ちゃんと結花ちゃんと手を繋ぐ。
直後、結花ちゃんの生み出した炎の球が分裂した炎が、雷を纏っていた水の球に巻き付いた。
一気に火力を増したことで、水球を飲み込んで締まったのだと思ったのだけど事実は違う。
私の使った障壁のように炎は、膜を春用に球面状に広がり、雷を纏った水球を包み込んでいた。
更に、炎の膜にも変化が起こり始める。
揺らぐ炎の隙間から、私も真似た那美ちゃんの使う土の棘の縮小版が生えた。
頭では状況は理解できたのだけど、仕組みがわからない。
そう考えたところで、リンリン様がすぐに説明してくれた。
『木行と水行の力を込めた水球を、剣持恵那の混ぜ合わせる力で、炎の力を増す種にしたのじゃ。そして、火行の強化、そして、土行の力を生み出したというわけじゃ』
以前教えて貰った五行相生、それぞれの属性がそれぞれを生み出すという仕組みを、弓越の子達の協力で形にしたのだろう。
その事実に、なんだかとっても心が温かくなった。
ほっこりした気持ちで見る動画では新たな動きが起きていた。
出現した雷を纏った水球を核にした四つの炎の玉をそれぞれ二つずつ、志緒ちゃんと花ちゃんがそこから生えた土で出来た棘を掴む。
すると、二人が掴んだのと炎の球を挟んで反対側に短剣の刃のような棘が出現した。
そのタイミングで、先ほど一歩下がった栗橋さんが空いている結花ちゃんの手を取る。
栗原さんと結花ちゃんが手を握ったのを確認した志緒ちゃんと花ちゃんは、そのまま黒い人型に向けて飛び出していった。
何故か、身動きせずにずっと突っ立っていた黒い人型は、志緒ちゃんと花ちゃんが接近した直後、急に動き出した。
どういうことだろうと思っていると、ここでもリンリン様が答えを教えてくれる。
『停止の娘は攻撃を止めるだけでは無いのじゃ。魔女の娘と協力して動きそのものを止めておったのじゃ』
その言葉を示すように、力が入らないといった様子で座り込んでいる川西さんと那美ちゃんの姿が動画に映った。
まさに総力戦といった状況だったのかと、胸が熱くなっている私の目の前で、花ちゃんと志緒ちゃんによる近接戦闘が繰り広がる。
巨大な人型に対して、小さな二人が素早い動きで接近と離脱を繰り返しながら、舞花ちゃんたち五人の力で生み出された土の武器を振るい、その身体を削り始めた。




