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放課後カミカクシ  作者: 雨音静香
第弐拾章 苛烈氷界
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弐拾之参拾漆 EMS式

「いけるかも知れませんよね?」

「波……音波を電流に変換……するってことですか……」

 私の問い掛けに、考えるような口ぶりでそう口にした後で、林田先生は何かに気付いたらしく、恐らく無意識に「あっ」と声を上げた。

 その後で、少し興奮気味に「たしか、電話……電信が、そもそもそういう原理でしたね!?」と言う。

「私のイメージでは『魔除けの鈴』は、清めの音波を周囲に放って効果を及ぼしているので、EMSでその音に変わる前の電気の波を全身に送り込んだら代わりになるんじゃ無いかと思ったんです!」

 どうでしょうかという思いを込めて言うと、リンリン様は『主様が効果が出ると思っていれば、失敗は無いじゃろ』とあっさりと肯定してきた。

 私的には渾身の閃きだったので、もう少し何かあるかなと思っていたので、少し残念に思ってしまう。

 すると、リンリン様の前足が私の頭を叩いた。

 それだけで労われているのが伝わってきたのは良いのだけど、私がもの凄く子供みたいな理由でがっかりしていたことに気が付いて恥ずかしくなる。

 私はその羞恥心を拭い去って、気持ちを改めるために、必要以上に大きな声を張り上げた。

「花ちゃん!! 今から新しいアイテムを具現化します!」


 花ちゃんは、対峙する黒い人型の攻撃を避けながら、泣きそうな声で『あ、ありがとぉ~~』と声を上げた。

 五分以上に戦えていると思っていたけど、精神的には追い詰められてたらしい。

 すぐに助けに入らなければと、意識を集中して、EMS版清めの鈴の具現化に挑むことにした。

 まずはエネルギー効率を上げるために具現化する物体そのもののイメージを固める。

 コントローラーから実線のコードが伸びていて、その先にパッドが付いているものが最初に思い浮かんだけど、戦いながら身体にパッドを付けるのは、難しい筈だ。

 そこで私が閃いたのは、無線式である。

 うろ覚えな記憶ではあるけど、実際の無線式は、パッドから流す電流を生み出すためには電源が必要なので、操作は無線式のリモコンでも、ボタン電池か何かが使われていたはずだ。

 私の具現化はそう言った細かな問題をイメージとエネルギーのごり押しで乗り越えられる。

 林田先生には負担を強いることになるかもしれないけど、花ちゃんを助けるためなので、きっとわかってくれるはずだ。

「林田先生」

 私が声を掛けると、すぐに「どうしました?」と返ってくる。

「花ちゃんを助けるために、これから具現化に入ります。大変かも知れませんけど……」

 私がそこまで言うと、林田先生は「任せてください」と言いつつ私の肩に手を置いた。

「卯木さんは僕が支えますから、卯木さんは花子さんを支えて挙げてください!」

 懸念を伝える前にそう言い切られてしまった私は、これ以上の言葉は蛇足だなと考え「お願いします」とだけ返す。

 林田先生は「任せてください!」と力強い声で言い切った。


 頭に浮かんだEMS式魔除けの鈴を、花ちゃんのすぐそばで出現させる為に意識を集中した。

 構成は二枚の電極パッドとコントロール用のリモコンである。

 細かい仕組みは当然わかってないけど、リモコンでオンオフが出来て、電極パッドからは魔除けの鈴の音波を電気信号に変えた電流が全身へと伝わっていくという構成だけはしっかりと思い描いた。

 イメージの組み立ての最中、集中が乱れたり、集めていたエネルギーが反発して分散したりすることは無い。

 一方で私の肩に手を置いている林田先生が、小さく呻いていた。

 林田先生には申し訳ないと思いながらも、具現化が出来るということを状況が示している。

「申し訳ないですけど、林田先生、少しの間、耐えてくださいね!」

「もち……ろ、ん」

 苦しげな林田先生の声を聞いた私は、術を止めるのでは無く負担の掛かる時間を減らすために、心を鬼にして一気に具現化を進めた。

 すると、あっという間にエネルギーの球は三つの小さな球に変化し、やがてイメージしていた二枚の電極パッドとリモコンの姿ヘと変化を遂げる。

「花ちゃん! 電極パッドを両腕にそれぞれ貼り付けて、リモコンで起動させて!』

 私が腕を指定したのは、電流が流れることで、動きがおかしくなったときに、脚と腕では、脚の方が問題が大きいと考えたからだ。

 そんな私の意図が伝わったかどうかはわからないけど、花ちゃんは何の躊躇いも無く、右手にした電極パッドを左腕に、もう一枚を右腕に貼り付ける。

『これでいいのかしら?』

 花ちゃんが黒い人型の攻撃を掻い潜りながら問い掛けてきた。

 私は「はい!」と返事をする。

 その上で補足として「電流が流れるので、気をつけてくださいね!」と伝えた。

 が、少し遅かったようで、花ちゃんは『そういうことはスイッチ入れる前にいってぇ~~~』と悲鳴に似た声を上げながら、慌ててバックステップを踏んで、対峙していた黒い人型から距離を取る。

『ちょ、う、うでが、ふ、ふるえるんですがぁ~』

 高速で黒い人型の攻撃を掻い潜るように、動き回っているせいで、花ちゃんの発する悲鳴の混じった抗議の発言の通りに腕が震えているのかを確認することはできなかった。

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