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放課後カミカクシ  作者: 雨音静香
第弐拾章 苛烈氷界
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弐拾之弐拾捌 変質

「そう言えば、全てから護るイージスの盾を生み出せタラって考えていたのを、今思い出しました」

 私はそう言って、すっかり忘れてしまっていた自分の間抜けさに少し呆れてしまった。

 とはいえ、感覚の強化では無く、防御力の強化なら東雲先輩の助けになれるかもしれない。

 当たったときにダメージを軽減するだけなら、東雲先輩の感覚を乱すことは無い筈だ。

 胸の内で考えをまとめた私は早速行動に移す。

 避雷針に使わなかったエネルギーを東雲先輩に纏わせるようにイメージを固めた。

 エネルギーと化しているせいで、物理法則の影響を受けなくなったようで、瞬間移動と変わらない速度で、イメージした直後には東雲先輩の身体を覆うように広げることに成功する。

 そのまま、実証実験に突入した。

 東雲先輩の背後を中心にエネルギーを舞花ちゃんの氷の障壁をイメージした透明の壁に変化させて、後ろからの攻撃に備える。

 すると、すぐに張ったばかりの障壁に衝撃が走るのがわかった。

 透明のナイフのような硬いものが突き刺さり障壁を砕く。

 それによって威力を殺すことは出来たのだけど、止めきることはできなかった。

 結局、東雲先輩は振り向きざまに刀で弾いて、傷を負うことは無く切り抜ける。

 その光景を確認した私は、途中で感覚を乱す可能性の話を思い出した。

 私が障壁を出して、攻撃の速度を緩めたことで逆に東雲先輩の感覚を乱したんじゃ無いかと気付く。

 そうなると、次をどうしたら良いかが決断できなくなってしまった。

 完璧に受け止め切れずに、東雲先輩の調子を狂わせてしまうなら、明らかに手を出さない方が良い。

 私がそう考えたタイミングで東雲先輩の声が聞こえてきた。

『凛花、初めから上手くいかなくても、攻撃の速度が落ちるだけで助かる! 続けてくれっ!』

 その一言で、一歩後ろに下がろうとしていた私の気持ちが、一発で反転する。

 東雲先輩に求められたこと、そして、成長を期待されたことが、純粋に嬉しかった。

 絶対に、東雲先輩を完璧に護る。

 そう意識しただけで、頭の回転が速くなった……気がした。

 東雲先輩の目が届かない背後を中心に障壁を生み出すのは基本方針として、攻撃を受け止める方法を考える。

 今は、相手の攻撃の威力が高いせいで、勢いを削げてはいるものの、障壁自体は砕かれているし、攻撃は東雲先輩に届いてしまっている状態だ。

 これに対する対抗策として、私は正面から受け止めるのは難しいのでは無いかと新たな方法を閃く。

 頭に浮かんだのは、氷の障壁では無く、水の障壁にしたらどうかということだ。

 氷は個体ゆえにぶつかることで砕けてしまっているが、液体の水なら取り込んで減速、上手くいけば止めてしまえるんじゃ無いかと思う。

 方針が決まれば即座にイメージを送り込んで、障壁を固体から液体に切り替えた。


 二体の黒紫の人影と切り結ぶ東雲先輩に、その隙を突いて透明の攻撃が飛んできた。

 エネルギーから瞬時に水球に変わった新たな盾が、その攻撃を受け止める。

 私が生み出した水球に透明な攻撃を取り込んで止めるようにイメージしたからか、あるいは単純に物理法則に従っていて、空気中よりも抵抗が増えるからかはわからないが、目論見通りに速度を急激に落とすことには成功した。

 だが、止めきることは出来ず、水球から透明な攻撃が飛び出し、水滴が宙に舞う。

 とはいえ、かなり減速させることに成功しているので、東雲先輩は簡単に弾いて対処した。

 上手くいっているという確証を目で見た上に、東雲先輩から『良いぞ、十分だ。助かる』と言って貰えたことで、私のやる気は更に増す。

 もっと、より、東雲先輩の助けになりたいと考えた私の頭に浮かんだのは、先ほど『種』:自身が見せていた映像だった。

 頭が人型や獣に変化するのを悟らせないために、カモフラージュで見せていた光景の中で、なんとなく気になったのが、自分を護る壁として飛ばしていた氷柱の存在がもの凄く気になる。

 何故気になるのかと、自問した私の脳裏に閃いたのは『応用出来るかもしれない』という言葉だった。

 何が、どこが、どういう風にと真剣に考えると、答えは思いの外簡単に浮かんでくる。

「流れだ」

 唐突に呟いた私に、林田先生が「流れですか?」と少し驚いた様子で聞き返してきた。


 私は手身近に、能力の使い道を考える途中での独り言だったことから、流れを盛り込んだら防御力が上がるんじゃ無いかという閃きまでをそのまま林田先生に伝えた。

 そんな私の話を聞いた上で、東雲先輩は「なるほど、水球なら急流を表面上に作り出すことで、単純に取り込むよりも勢いをそげそうですね……上手くいけば、飛んで行く方向を変えられるかも知れませんね」と言う。

 私はそれを聞いて、水流で流すという点により注力して試そうと決めた。

 そして、直後の攻撃を私の水球が受ける。

 今度は水球の内に取り込むのではなく、表面を受け流すようにして滑らせ、他の方向へ飛ばすことを意識すると、すぐに水滴を飛ばして透明の攻撃が水球から離れて行った。

 完全に東雲先輩のいない方向へ飛ばすことに成功した私は、胸の内でガッツポーズを決める。

 東雲先輩と一緒に戦えているという思いで、私は次の攻撃に備えた。

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