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放課後カミカクシ  作者: 雨音静香
第弐拾章 苛烈氷界
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弐拾之弐拾漆 不可視

 頭の中に出現した神世界の模型は、情報を取得する度にリアルタイムで書き換わる優れものだった。

 もし現実との誤差があれば教えてほしいとリンリン様に向かって、頭の中で伝えてみたところ『オリジンが言うには、ドローンやヴァイアの映像から組み直すより正確なようじゃ』という言葉が返ってくる。

 思ったよりも役に立っていそうな評価に、少しテンションが上がった。

 リアルタイムで状況把握が出来ているのなら、このモデリングされた世界を見て適所にふさわしいサポートを入れられるんじゃ無いかと私は考える。

 そうして、私は残ったエネルギーの使い道として、思い付いた一つを早速試すことにした。


 舞花ちゃん、花ちゃん、志緒ちゃんに連続で迫る電撃の目前で、私が新たにイメージを送り込んだエネルギーが変化し具現化した。

 出現させたのは地面に深く突き刺さる金属の棒である。

 避雷針になればと思ったのだけど、予想外に上手くいったようだ。

 舞花ちゃんが二重に張る氷の障壁に辿り着く前に、電撃は避雷針へと吸い寄せられる。

 電撃は攻撃自体が早かったのもあって、押され気味だった三人は、攻撃が曲がるようになったことで、自由にお動ける範囲が増した。

 役に立てた確信を胸に、私は神世界の他の場所の状況を確認していく。

 続けざまに、私が確認したのは『種』の頭が何に変わったのかということだった。

 まず、最初に飛び出してきた紫を帯びた黒い人影が二体、ハンマーを振るっていた人型は緑がかった青を帯びている。

 加えて、電撃を放っていたのは、神社にいる狛犬というか、シーサーに似た容貌で、緑がかった青い体表をしていた。

 これらが頭の変化したものだとすると、数が合わない。

『目』によって出現した模型を様々な角度で動かしてみても、黒の人型が二つ、青の人型と獣型が一つずつしか発見することが出来なかった。

 残るもう一体がいるはずだと、何度も何度も視線を巡らせたところで、リンリン様が『姿を消しておるようじゃ』と口にする。

「姿を消している?」

 私がそう聞き返すと、リンリン様は『文字通りじゃ。どこかに隠れているわけでは無く、目に見えぬ姿……透明になっておるようじゃ』と詳しく話してくれた。

「透明!? そんなのどうすればいいの?」

 思わず声を上げた私に、リンリン様は変わらぬ落ち着いた口調で『侍のこぞ……小娘が戦っておる……恐らく気配を読み取っておるのじゃ』と言う。

 私はすぐに、脳内模型の焦点を東雲先輩に合わせた。


 東雲先輩は、両手に一振りずつ刀を手にして、自らに迫ってくる何かを弾きながら、細かく動き回っていた。

 数歩進めば後ろに飛び、直進したかと思えば、その場で身体を回転させて、移動方向を90度変える。

 何故そんな動きをしているのか、最初はわからなかったけど、攻撃を絞らせない為だとリンリン様が教えてくれた。

 足を止めれば、見えない攻撃に加えて、先ほどの黒い人影二体が大地を抉るほどの爆発力を持った一撃を放ってくる。

 足を止めることが致命傷になりかねない状況のようだ。

 東雲先輩なら大丈夫だとは思っていても、誰にでもミスはあるし、極限の状態が続けば精神はすり減ってしまう。

 見えない攻撃を受け流しながら、高火力の黒い人影二体にも注意を払うのは並大抵のことでは無い筈だ。

 東雲先輩が二振りの刀を使っているのも、手数が必要だからに違いない。

 そうにかして、東雲先輩のフォローに入りたいけど、上手くいきそうなアイデアが浮かんでこず、私は焦れて気付けば「どうしたら……」と呟いていた。

 リンリン様の説明を聞いていて、焦る私よりも冷静な林宇田先生がここで「なにか、見えない攻撃を見えるようにする方法は無いんですかね?」とリンリン様に尋ねる。

『侍の小娘は気配を感じとっておるわけじゃから、何かしらの気配はしているはずじゃ……じゃが、主様の新たな能力でも、ドローンのカメラでも、それを捉える事が出来ておらぬ』

 リンリン様の言葉に、少し唸ってから、林田先生は「見えない攻撃を対処できないなら、例えば、その、東雲さんの感覚を底上げするのはどうでしょう?」と口にした。

 私はそれなら役立てそうだと思ったんだけど、リンリン様はすぐに『それは危険じゃな』と言い切る。

『見えない気配を読むのは並大抵のことでは無いことじゃ。繊細な気配察知の能力を必要とするわけじゃから、主様の力で急に感度を変えてしまっては、最悪感覚が狂ってしまう可能性が高い』

 言い加えられたリンリン様の言葉に、私はすぐにその通りだと思ってしまった。

「……それじゃあ、下手に手を出さない方が良いですね」

 諦めの気持ちでそう呟いた私に対して、林田先生が「それじゃあ、攻撃が通らないように、膜のようなもので東雲さんを覆ってみたらどうだろう」と言う。

「服の強度を上げたりとか出来れば、傷つかずに済んだりしないだろうか……」

 林田先生の言葉を耳にした私は、そう言えばかつて、全てを防ぐ盾、イージスを生み出せたらと考えていたことを思い出した。

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