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放課後カミカクシ  作者: 雨音静香
第弐拾章 苛烈氷界
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弐拾之弐拾陸 目

 ハンマーをエネルギー体に戻すイメージを浮かべ、頭の中の映像に変化が起き始めていた。

 先端部にあたる柄の突端、ハンマーの金属部の両端から、中心に向けて光、エネルギーへと変わっている。

 が、その速度は恐ろしいほど遅かった。

 遠隔のせいなのか、それとも『種』に握られてしまっているせいなのか、普段とは比べものにならないほど、変化の為に時間が掛かる。

 それでも、林田先生が「卯木さん! ハンマーが端から少しずつ光って消えていっていますよ」と教えてくれたことで、ちゃんと進んでいることは認識出来た。

 時間が多少掛かろうとも、成果が上がっているなら、私のすることは一つしかない。

 慌てず、ただ、エネルギー体に戻るようにひたすら意識を集中させた。


 目を閉じてハンマーの無力化に集中している私の情報源は、音に限定されていた。

 リンリン様と林田先生が、現状を伝えてくれるのだけど、時折混じる猛烈な衝撃音が私を震わせる。

 音自体が大きいので身体が反応してしまっている部分はあるけど、音が怖いわけじゃ無く、皆に何か起こっていないかという不安が私を震わせた。

『大丈夫じゃ、今のは新たな障壁を砕かれた音じゃが、しっかりと二重にして攻撃を通しておらぬ!』

 私の不安を感じ取れるリンリン様がすぐにそう説明してくれる。

 舞花ちゃんも頑張っているんだと思うことで、不安を抑え込んで、私も頑張れなければと気持ちを切り替えることが出来た。

 早くという焦りはあるけど、確実に皆の助けになるようにと考えた私の頭に、ハンマーをただ消すだけでは無いアイデアが浮かぶ。

 遠隔でハンマーをエネルギーに戻せるなら、エネルギーから具現化することも出来るはずだ。

 そう思った瞬間、私のしたいことのための道筋が、頭の中でもの凄い勢いで組み上がる。

「林田先生、椅子をお願いします!」

 目を閉じたままでそう声を張り上げると、林田先生はすぐに「わかった。ちょっと待ってくれ」と返してくれた。

 林田先生の支えがなくなった私は、倒れないように、足に力を込める。

 それも僅かな時間で、あっという間に戻ってきた林田先生が、私の肩と腰に手を置きながら「車椅子を持ってきたので、僕が支えますから、ゆっくり座ってください」と言って、誘導してくれた。


 車椅子に座ったことで、立つことに意識を回す必要がなくなった私は、継続しているハンマーの具現化解除の先に挑む為に、新たなイメージを浮かべた。

 まず、状況をより早く正確に掴むために『目』がいる。

 既にドローンは生み出しているので、単純にカメラを増やすことは出来るはずだ。

 でも、それだけじゃ足りない。

 目を閉じている私の脳内映像を強化できるもの、それも『種』の虚像を見破れるものが理想だ。

 それが出来るかはわからない。

 なら、試してみれば良いと考えて、ハンマーから戻したエネルギーに私の新たな『目』となるようにイメージを送り込んだ。

 それが劇的な変化を引き起こす。

 エネルギーに戻した先をイメージしたのが大きかったらしく、ハンマーからエネルギーへの変化が急に速度を上げた。

 それは感覚でしか無かったけど、すぐにリンリン様が『主様! ハンマーの崩壊が早まったのじゃ!』と報告を入れてくれたことで確信に変わる。

 エネルギーは通過点に過ぎず、安定している状態ではないので、何か目標の形にする必要があるのだと漠然と理解した私は、より早く、より的確な『目』の出現を強く意識した。

 そこから数秒、私自身を中心とした脳内風景が、急激にその範囲を拡張する。

 恐らく『目』を具現化に成功したのだ。

 そう確信した私は、早速その機能の把握に入ろうとして、自分が作業の途中だったことを思い出す。

「あ、リンリン様、ハンマーってあとどのくらい残っていますか?」

 私の問い掛けに、リンリン様は『もう柄と鉄槌の一部しか残っておらぬ。使えぬと思ったのであろう……奴め、投げ捨てたのじゃ!』と教えてくれた。

 とりあえず、奪われたハンマーを『種』:から奪い返す目標は達成したので、ハンマーのエネルギー化は継続しつつ、軸足を新たに生み出した『目』に移す。

 感覚的には、私が一人存在する世界の近くに、正確な縮尺の模型が現れた感じだ。

 それもパソコン上に造り上げられた3Dモデルのように、方向や視点の位置、サイズを自在に変えることが出来る。

 カメラ映像よりも、遙かに情報量が多く、オリジンに伝えることが出来るならより活かせるんじゃないかと思った。

 するとすぐにリンリン様から『わらわが、伝えておるぞ。主様』と言われる。

「伝えている?」

 私が聞き返せば、リンリン様は『主様の新たな目の力を、わらわが経由する形でオリジン、そして猫娘達に伝えておる』と詳細を語ってくれた。

 どう伝えるかと考えている間に、解決していたことに思わず苦笑してしまう。

 でも、ありがたいことだと考え直した私は、より皆に貢献できるように、新しい『目』から得た情報から残るエネルギーの使い道を考えてみることにした。

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