弐拾之拾捌 切り札
物理攻撃メインと思われる二つの首と、電撃を放つ一つの首を相手に、東雲先輩と志緒ちゃんが立ち回ってる一方で、氷の障壁と白い炎の防御で弓越の皆を護っていた舞花ちゃんたちの方にも急激な動きがあった。
一瞬の隙を突いて障壁を解いた舞花ちゃんたちの元に、雪子学校長が合流する。
意識を取り戻すも動けない川西さんを始めとした弓越の皆を一人一人雪子学校長が確認し、手分けして五人をゲートの内側に連れ帰ることを即決した。
だが、間の悪いことに、方針が決まったところで、氷柱による攻撃が再開してしまう。
「つ、月子先生、私も行っちゃ駄目ですか!?」
皆を助けたいという逸る気持ちに任せて、私は気付くと月子先生にそう聞いていた。
対する月子先生は、一拍置いてから「どういう手順で助ける?」と冷静で落ち着いた口ぶりで聞いてくる。
「えっ」
助けに行くことしか頭になかった私には、月子先生の問われるまで、明確なプランどころか、現場に行くことしか考えな手無かったことに気が付いた。
「君の気持ちが強いものだというのはわかっているし、皆を心配する気持ちは素晴らしいものだよ」
柔らかい口調で言う月子先生が私の頭に手をポンと乗せる。
その後で表情をやや険しくしてから「だけどね。圧倒的に君には経験値が足りない。次々と考えを巡らせなければいけない状況で決断をして実行に移すことは、積み重ねが無ければ出来る事じゃ無いんだよ」と月子先生は言葉を続けた。
自分の浅はかさを痛感すると共に、自分の不甲斐なさが悲しくなってくる。
月子先生は変わらぬ口調で「ちゃんと経験を積めば、君だって出来るようになるが、今は未だそれが足りていない……だから、もし行こうとするなら、考えてからにしなさい。どんな能力を投入したら良いのか、自分ならどう干渉できるか、あらゆる状況を想定し、対応する能力を組み立て、必要なら作り出してしまいなさい」と笑みを浮かべた。
「つ、月子先生」
「君に辛気くさい顔は似合わないよ……それに、皆君を切り札にしているのは、君なら想像もしなかったことが起きても、どうにかしてしまうと思ってるからだ……私だって君を信じている」
こみ上げてくるものに押されて、私はもう一度目の前の恩師の名前を呼ぶ。
「……月子先生」
「一生懸命考えなさい。自分があそこに行きたいなら、自分がどんな能力を使い、どんな道具を作り出せば良いのか……君なら、考えれば出来るようになる筈だ」
月子先生の最後の言葉に、胸が熱くなって、気付いたときには「頑張ります」と口走っていた。
ポンポンと私の頭を叩いた後で、月子先生は「さあ、皆の動きをしっかり見て、自分ならどうするかを考えなさい」とモニターを見るように促してくる。
言われるままモニターに視線を戻した後ろ手、林田先生が「なんというか……不安を覚えますね」と呟いた。
林田先生が不安を感じるのも仕方が無い。
でも今はそんな場合じゃ無いと、モニターを見ながら林田先生に「今は皆を見守りましょう! 自分に出来る事を考えながら、必要な時に迷い無く突入できるように!」と伝えた。
私の言葉が響いたのか、林田先生は少し間を置いてから「そうだな」と少し震える声で言う。
もしかしたら、私の成長っぷりに感動したのかもと思いながら、私は自分の出番を見極めるために改めてモニターに集中した。
私が月子先生に突撃を訴え、諭されている間も、猛攻は続いていた。
完璧に氷柱を消し去っていく結花ちゃんの白い炎だったものの、その効果範囲は無限では無い。
首二つが連携して、白い炎が無い部分へと攻撃を繰り出していた。
だが、白い炎に向かって振る量も尋常な量では無く、動かすことが出来ない。
一方、残る三つの首は、物理攻撃の二つと、電撃を放つ一つがこちらも連携して、志緒ちゃんと東雲先輩を攻撃していた。
氷の障壁内部では、氷柱の衝突で生まれる轟音が響いている。
雪子学校長、舞花ちゃん、結花ちゃんが一人ずつ、花ちゃんが残る二人、弓越の皆を抱きかかえたり支えたりしながら離れる準備を調えていたが、そもそもの攻撃が緩む気配が無かった。
どうにか助けに入る方法を考える。
一番最初に思い付いたのは、もう一組ゲートを開く為のハンマー得意を用意して、障壁の中に出口を作る案だった。
けど、頭に乗るリンリン様が『主様、オリジンが、空間同士を繋げる道具ゆえ、人がいるところに新たにゲートを開くのは危険だというておる』と志緒ちゃんに変わって、オリジンからの警告を伝えてくれる。
それならば別の手段をと思った私は、そもそも『種』を遠ざけられないかと考えた。
皆と『種』の距離が近いから攻撃の速度も速まっているし、精度も高い。
だとしたら、一時でも遠ざけることが出来たなら弓越の皆を避難させる時間を稼げるんじゃ無いか、そして避難bんさせられれば、白い炎を操る結花ちゃんも、氷の障壁を張る舞花ちゃんも攻撃に回って、状況が変わるんじゃ無いかと思い付いた。
直後『それ良いわね!』という那美ちゃんの声が響く。
『そういう事なら、この大魔法使いである私に任せなさい!』
そう見得を切って姿を見せた那美ちゃんは、パワーアップした金と銀の刺繍の施された魔女服姿だった。




