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放課後カミカクシ  作者: 雨音静香
第弐拾章 苛烈氷界
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弐拾之拾 双球

『ダメよ!』

 東雲先輩の問いにそう返したのは結花ちゃんだった。

『お、お姉ちゃん?』

 舞花ちゃんが驚いた様子で、姉である結花ちゃんを見ながら瞬きを繰り返している。

『火の玉の実験なら、ユイの出番でしょ? 交代すべきだと思うわ!』

 当然と言わんばかりの結花ちゃんの発言に、ハッとした舞花ちゃんが『舞花も水の球を試した方が良いと思う!』と言い出してしまった。

 対して、東雲先輩は『まあ、そうなるか』と苦笑しながらゲートを潜る。

 白い鳥居の世界にも出ってくるなり、東雲先輩は両手を広げて『交代だ』と口にした。

 志緒の目先輩の右手を結花ちゃん、左手を舞花ちゃんが叩く。

『じゃあ、いってくるわ』

『変わってくれてありがとう~』

 こちらが言葉を挟む間もなく、軽い足取りで結花ちゃんと舞花ちゃんはゲートをくぐり抜けて行った。


 ゲート前で待機していたヴァイア達に手を振った双子はすぐさま構えを取った。

 結花ちゃんがゲートから見て左手の境界付近を、右手の境界を舞花ちゃんが狙うらしい。

『しーちゃん、マイとタイミングを合わせてみるわ』

『その方が実験になるよね?』

 結花ちゃんと舞花ちゃんからの言葉に、志緒ちゃんは『うん。お願い』と短く返した。

 あまりにもさっぱりとした三人のやりとりに、私は不安な気持ちから、思わず「舞花ちゃん、結花ちゃん、身体に変なところは無い?」と聞いてしまう。

 すると、ヴァイア達に視線を向けた結花ちゃんが『特に違和感は無いわ』と答えてくれる。

『ただ、時間が遅くなっているというのは感じないわね』

 腕を大きく振りながら、結花ちゃんはそう言い加えた。

『うん。舞花も影響はわからないかも……だから、逆に変な感じはしないよ~』

 舞花ちゃんもヴァイア目線で、そう報告してくれる。

 その上で舞花ちゃんが放った『あ、でも、リンちゃんガシッpナイしてくれて、嬉しくなっちゃったから、やる気が出た分強くなったかも~』という発言が嬉しさ半分恥ずかしさ半分で頬が熱くなった。


『……と、いうわけで、やる気が出てるうちにやっちゃおう、お姉ちゃん!』

『そうね』

 舞花ちゃんと結花ちゃんは言葉を交わすなり、すぐさま、狙いを付けていた方へと視線を戻した。

 その直後、二人の前にはそれぞれ炎の球、水の球が出現する。

『せーーのっ』

 舞花ちゃんの掛け声に合わせて、ほぼ完璧にシンクロした動きで、炎と水の球が同時に放たれた。

 向かって行く方向、炎と水という違いはあれども、速度、大きさ、共に同じで、ちゃんとした打ち合わせをしたわけでも無いのに、素直にスゴイなと思ってしまう。

 そんな状況の中、志緒ちゃんの『やっぱり境界に近づくにつれて、速度が落ちてる……威力が減衰している程度の誤差かもしれないけど……』という呟きが聞こえてきた。

 つまり現時点では誤差というか、飛ばしている球が徐々に減速しているだけとも言える変化しか無いとこと何だろうと思う。

 が、志緒ちゃんを悩ませる程度の変化しか無かった二つの球の速度に著しい変化が起き始めた。

 急激に速度が低下し、境界に最接近したところでは止まりそうになっている。

 ただ、軌道自体は水平方向に一直線に進んでいて、重力に引かれているわけではなさそうだ。


『マイ、ちょっと力を込めてみて』

『わかったー』

 結花ちゃんの指示に、舞花ちゃんが即答で了承した。

 言葉通り、すぐに力を送り込んだんだろうけど、炎の球にも、水の球にも変化がなさそうに見える。

 どうなるのかと思いながら成り行きを見守っていると、二つの球が境界のドームから徐々に離れ始めた。

 それに伴って、二つとも徐々に速度が増していく。

 単純に加速していっているようにも見えるが、実際のところは、恐らく『停止』の影響を離れ、元の速度に戻っているというのが正しい筈だ。

 私がそう思っていると、急に二つの球が巨大化する。

「えっ!?」

 驚きで声が出たものの、直前で結花ちゃんと舞花ちゃんが力を送り込んでいたのを思い出した。

「あ、時差で送り込まれたエネルギーが反映されたんですね!」

 閃きをそのまま口に出しただけの、独り言のような私の言葉に、那美ちゃんが「そうみたいね」と返してくれる。

 なんだか、那美ちゃんが肯定してくれたことが嬉しくて「ドームに近づきすぎると、能力の発動や効果の増強の反映に時間が掛かりますね」と更に声を掛けてみた。

 が、残念ながら那美ちゃんからの言葉は返ってこない。

 代わりに頭の上のリンリン様が『わらわが魔除けの鈴を使う際、主様が加えてくれる祈りの効果が現れるのに時間が掛かる事は意識しておかねばならぬの』と言ってくれた。

「そうですね。リンリン様の『魔除けの鈴』の効果範囲を考慮に入れて、停止の影響を最低限に抑えられる場所を探さないとですね」

 私の発言に対して、素っ気ない言い方で那美ちゃんが「それはアンタが考えなくてもいいわ」と言う。

「え?」

 戸惑い気味に声を上げた私に、那美ちゃんは「もう既に計算してるわ。しーちゃんとオリジンがね」となんと句の言葉を返してきた。

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