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放課後カミカクシ  作者: 雨音静香
第弐拾章 苛烈氷界
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弐拾之陸 覚悟

「はぁ」

 那美ちゃんは前傾姿勢になりながら大きな溜め息を吐き出した。

 理解が遅い私が悪いので、なんだかとても居たたまれない。

 私の頭の回転の遅さに、諦めの表情を見せた那美ちゃんは「つまりよ」と、説明してくれるようだ。

 内容を聞き逃さないようにしっかり集中すると、またも小さく溜め息をつかれてしまう。

 状況からして、今回は完全に私が悪いので、反論もせず、ただただ説明を待った。

 そんな私に、那美ちゃんは再び胸を突きながら「停止が遮断を超えられるのは、その威力が大きいからっていうところまではいいわよね?」と聞いてくる。

 当然、そこは自分でも言い当てた部分なので、大きく頷いて応えた。

 那美ちゃんは苦笑気味に私を突く指に力を込める。

 触れられているから少し痛いに感触が変わったところで、那美ちゃんは「だから『魔除けの鈴』も遮断を越えるくらい強い力で発動すれば、境界の外からでもエネルギーを送り込めると思わない?」と尋ねてきた。

「た、確かに!」

 なるほどと思いながら頷いて、私は言葉の続きを待つ。

 だが、那美ちゃんからは続きの説明じゃ無くて、頭にペシッと平手が「自分で考えなさいよ!」という言葉と共に降ってきた。

 言われて、今更ながらそれはそうだと思った私は、思考を巡らせる。

 答えはすぐそこにあった。

「私が祈って、リンリン様の『魔除けの鈴』を強化する?」

 疑問形になってしまった私の閃きに、那美ちゃんは「そういう事よ」と頷く。

 その後で「成功するかどうかは、試さないとわからないけどね」と言い加えた。


 わからないのなら試してみようは、基本方針であり、早速実験をする方向で私たちの話は進んだ。

 けど、ここで月子先生が「ちょっと待ってほしい」と話しかけてくる。

「何ですか、月子先生?」

 私が月子先生にそう聞き返すと、なんだか申し訳なさそうな顔で「うむ。盛り上がっているのに、水を差してしまうことになるのだが『魔除けの鈴』は使えないかもしれない」と口にした。

「それ……」

「それはどういうことなの! っ……ですか?」

 私の声に被せるように強い口調で尋ねた那美ちゃんは、途中で冷静さを取り戻したのか、最後に語尾を付け加える。

「簡単なことだよ。那美さんなら知っているんじゃ無いかな? 『種』と『穢』には違いがある」

 月子先生の言葉に、那美ちゃんはハッとした表情を浮かべて、モニターを見た。

「もしかして、種も?」

 呟くような那美ちゃんの言葉に、今度は私が「種もって、どういうことですか!?」と問い掛ける。

 そんな私に、月子先生と同じく防寒の姿勢を取っていた雪子学校長が「簡単な話だよ」と言いながら私の肩に手を置いた。

 それが落ち着けの意味だと感じ取った私は、軽く息を吐き出してから、雪子学校長を見る。

 雪子学校長はほんのわずかだけど、柔らかさを感じる笑みを浮かべてから「神世界は『種』が力を蓄える世界であり……そして、その世界に人間が立ち入るためには、神格姿を獲得しなければならない世界だ」と言いつつ右手の人差し指を立てた。

「神世界で存在するために神格姿が必要だとした場合、その神世界の主である『種』も同質の身体を有しているとは思えないかね?」

 立てた指をくるりと回してから、雪子学校長は、私のお腹辺りを刺すように指を動かす。

 それで私に意見を求めているのはわかったのだけど、何を言えば良いのか思い付かなかった。

 仕方なく瞬きをしていると、那美ちゃんが溜め息を吐き出してから「つまり、種は、穢よりも神格姿に近いから、魔除けの鈴を使うと、一緒に強化されてしまう可能性が高いって事よ」と言う。

 那美ちゃんの言葉で皆が言わんとしたことを理解した私は、同時に『魔除けの鈴』を安易には使えないことを悟った。


「じゃあ、どうすれば……」

 折角思い付いた可能性を試せないなら意味が無い……いや、希望を感じた直後だけに、絶望感がとてつもなく大きかった。

 そして、絶望感を抱いているのは先生方も同じようで、目に入る顔は沈んでいるように見える。

 空気が重くなる中、モニター越しに『ねぇ!』という舞花ちゃんの声が聞こえてきた。

 状況を何度も覆してきた舞花ちゃんの声に、私は期待を抱きながらモニターを見る。

 私が見たモニター0の中の舞花ちゃんは腰に手を当てて『別に弓越の皆が助かるなら、良いよね? 種がパワーアップしてもやっつけちゃえばいいんだから!』と言い切った。

「それ……は……」

 確かにその通りなんだけど、それが難しいから問題なわけで……と考えてるうちに、結花ちゃんが『そうね。ユイもマイに賛成』と手を挙げる。

 更に東雲先輩が『確かに、相手が強大になろうと、斬ってしまえば何も変わらない』と武士のようなことを言い出した。

『確かに、救出最優先だよね。敵は強いカモだけど、皆が協力すれば勝てると思うし!』

 笑みを浮かべながら平然と志緒ちゃんが言った後で「それが君たちの決めたことなら全力で支えるのが我々の勤めだね」と雪子学校長は言う。

 それから私と那美ちゃんを見て「君たちはどういう覚悟するんだね?」と聞いてきた。

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