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放課後カミカクシ  作者: 雨音静香
第拾玖章 救出作戦
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拾玖之肆拾弐 再開

「えぇ~リンちゃんはやっぱり、まーちゃんが好きなのぉ~~」

 私の頬を突きながら那美ちゃんが絡んできた。

「当然、好きですけど、何か?」

 怒り任せにそう返すと、花ちゃんが「それはライクですか、ラブですか」と聞いてくる。

「ラ……」

 勢いのまま、大きめの声で言いかけた私は、モニター越しとは言え、向こうに声が届くことを思い出して「ライクです、決まってるでしょうっ!」と声を潜めた。

「本当ですか? ちゃんと自分の胸のときめきに尋ねてみましたか?」

 もの凄く真面目な顔で切り返してきた花ちゃんに、私は即座に反応できず、言葉に詰まってしまう。

 花ちゃんは徐々に私に顔を近づけながら「ほら、本当は心当たりがあるんじゃ無いですか? ちゃんと考えてみてください。それは本当にライクなんですかぁ~」と言葉を重ねてきた。

 段々と目が血走ってきた花ちゃんに恐れを感じた私は「い、今はそんなこと言ってる場合じゃ無いですから!!」と口にしつつ、その顔を押し返す。

「人間には子孫を残そうとする本能があるんです。命の危機を感じる環境下では特に強まるのです。戦いの場とはラブの生まれる……」

 押し返しているにも拘わらず、距離が離れず、花ちゃんは頬を押されてしゃべりにくいはずなのに、ドンドンと饒舌になっていた。

「は、花ちゃん、今、そんな状況じゃ無いから、落ち着いて!」

 私の言葉で、ピタリと動きを止めた花ちゃんは「確かに……しかたありませんね」と言うなり急に離れて行く。

 ビックリするくらいの豹変に、直前まで花ちゃんの顔を押し退けていた手には、急に触れるモノを失って変な喪失感だけが残された。


「なんだか、納得がいかない……」

 取り残されたような形になったせいか、つい思ったことが口から出てしまった。

 直後、バシンという大きな音が響いた瞬間、息が詰まる。

「っ!」

 どうにか、息を吸いながら振り返ると、全力で腕を振り抜いた後と思しき格好で那美ちゃんがこちらを見ていた。

「な、なにを?」

「ほら、リンちゃん、気合を入れて、いよいよここからが本番なんだから!」

 ニコニコしながら言い放つ那美ちゃんにジト目を向けながら、私は恐らく平手で叩かれたのであろう背中をさする。

「あら、リンちゃん。身体柔らかいのね~」

 私を見ながらそんなことを言う那美ちゃんの態度も様子も明らかにおかしかった。

 那美ちゃんと違って、私はその心の内を覗けるわけじゃ無いけど、多分、今から蓋を開けることに、強い不安があるんだと思う。

 具体的に『黒境』の閉鎖からどれくらいの時間が過ぎているかわからないけど、少なくとも那美ちゃんが思い詰めて暴走する程の時間は経っているはずだ。

 経過した時間がいい影響をもたらす可能性の方が低いのは間違いない。

 生徒を思う那美ちゃんが不安から不安定になるのも仕方ないことだなと思った。


「ホント、大人なのか子供なのかよくわからないわね、アンタ」

 溜め息交じりに那美ちゃんにそう言われた私は「見た目はともかく、精神は成人してますからね!」と胸を張って見せた。

 対して那美ちゃんはものすごーーーく間を開けてから「……そうね」と頷く。

 私を認めたくないから頷くまでに時間が掛かったんだろうけど、事実をねじ曲げられないと諦めたのに違いなかった。

 その事を肯定するように、那美ちゃんは疲れた様子で「そうね」と言う。

 なんだか、気分がよくなってきたところで、月子先生が「二人とも、アチラは次の杭の準備に入ったようだぞ」と声を掛けてきた。

 そう言えば、未だ一本目の杭を打ち込んだだけだったことを思い出して、モニターへと意識を向ける。

 視線を向けたモニターの中では、金の文字が刻まれた円錐状の杭を手に、土の文字が刻まれた木槌で、舞花ちゃんが二本目の宇一込みの準備に入っていた。


 舞花ちゃんは、志緒ちゃんの指示に従って、金、火と順調に杭を打ち込んでいった。

 全員がパワーアップしたお陰か、一本目の水の杭の時とは違い、発生した衝撃波で吹き飛ばされることは無い。

 地面の草や桃の花が飛び散り宙に舞っているので、衝撃は自体が無くなったわけでは無さそうだ。

 加えて、衝撃を受け流すのにエネルギーの消費をしているのか、皆の周りを待っている五色の光が消えたり、そのサイズを小さくしたりしている。

 とはいえ、残り一本まで順調に状況は進んでいた。


『どう、しーちゃん?』

 舞花ちゃんが尋ねたのは、ゲートが開いた後に通して内部を探るための通信機材の状況だ。

 志緒ちゃんが衝撃波の発生は止められないと結論づけた事で、舞花ちゃんと結花ちゃんは協力して衝撃波から機器やドローンを護るために二重構造のドームを作り出したのである。

 内側に舞花ちゃんが氷で作ったドームを作り出し、外側に衝撃波を伝えてくる空気を遮断する炎の膜を結花ちゃんが張った。

 その氷と炎二重の膜で構成されたドームの中には、機材とドローンが入れられている。

 双子には衝撃波から守れているという確証はあるものの、温度や湿度という想定外の理由での故障を懸念して、杭を打つ毎に志緒ちゃんに動作確認をお願いしていた。

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