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放課後カミカクシ  作者: 雨音静香
第拾玖章 救出作戦
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拾玖之参拾玖 木行付与

『水行も、火行も、刀身に力を吸収して蓄えることができるようだ』

 今火球の力を吸い取った刀だけで無く、もう一振り、鞘に収めていた刀を抜いた東雲先輩は、両方の刀身を見ながらそう呟いた。

 普通の刀に見えていた二振りの刀は刀身が鈍い銀色から、それぞれ赤と黒みがかった紫に変わっている。

 二刀を軽く振るって納刀すると、東雲先輩は『これから、強敵と戦う可能性を考えると、心強いな』と笑った。

 そんな東雲先輩に顎に手を当てながら志緒ちゃんが『まーちゃん。刀に込めたエネルギーって無くなったりしないの?』と納刀されたばかりの刀に視線を向ける。

『三日月宗近……水行を宿してる刀は一度納刀しても纏ったエネルギーはそのままだったな……いつまで貯めておけるかはわからないというのが正直なところだ』

 左腰に下げた刀の内、先ほど水の力を吸収していた刀の柄をポンポンと叩きながら東雲先輩は答えた。

『それだと、頼り切るのは危険だね』

 志緒ちゃんの意見に頷きつつ、東雲先輩は『あくまで、溜まっている間は火力が上がる程度のオプションで考える。存在しない前提なら、火力が増す分には問題無い筈だ』と返す。

 神世界のベテランといった雰囲気のある二人の会話に、舞花ちゃんが混ざった。

『金とか土とか木とかも溜めたいよね?』

『それはそうだな』

 舞花ちゃんの発言に、東雲先輩は素直に頷く。

 そして、当然のように皆の目は志緒ちゃんに向かった。


 皆から視線を向けられた志緒ちゃんは『だ、だから、私はこう身体から放出する系の力は使えないんだって!』とアワアワし始めた。

『身体強化して刀に触れてみたら良いじゃ無い』

 シレッという結花ちゃんに、志緒ちゃんは『いや、それは……』と躊躇うような言葉を発してから『溜められるかな?』と東雲先輩に視線を向けて尋ねる。

 東雲先輩は三日月宗近の下、左腰に下げているもう一人の刀を抜きながら『試せば良いだろう』と平然と言い放った。

『それもそうだね』

 あっさりと覚悟を決めてしまった志緒ちゃんは、躊躇いも無く抜き身の刀に触れる。

 とはいっても、峰の側から刃に触れないようにしているので手を切る心配はなさそうだ。

 そんなことを思っている間に、志緒ちゃんは『それじゃあ、使ってみるよ!』と宣言して、おそらく集中するために目を閉じる。

 志緒ちゃんは、舞花ちゃん、結花ちゃんとは違い、力の使い方に慣れていないせいか、すぐに力を発揮できないようだった。

 けど、志緒ちゃんは焦ったりせずに、集中を高めている様子で、ピクリとも動かない。

 そのうち志緒ちゃん自身では無く、その周囲に変化が起き始めた。

 周囲を回転するように飛んでいた緑がかった青い光が徐々に輝きを増し始める。

 それが能力の発動の予告だった。

 パリっと小さな音が響く。

 徐々にその数が増えていき、志緒ちゃんの身体からバリビリというノイズと共に電気が放電され始めた。

 思わず「電気が!」と声に出した私の横で、那美ちゃんが「いつの間にかそんなことも出来るようになったのね」と溜め息をつく。

 その後で、那美ちゃんは私を見ながら『規格外はアンタだけかと思ってたけど……」と言ったところで言葉を止めた。

 変な話の切り方に眉を寄せると、那美ちゃんはなんだか馬鹿にしたような笑みを浮かべて「凛花ウィルスが感染したとか?」と言い放つ。

「ちょっと、人をウィルス扱いしないでください」

 思わず抗議する私に、那美ちゃんは「たとえ話よ……別に馬鹿にしてるわけじゃ無くて、良い影響を与えているって意味だから問題ないでしょう?」とシレッと返してきた。

 問題があるかないかで言えば、問題は無いような気がする。

「うーーん」

 明確な正解がわからずに唸る私に、那美ちゃんは「それよりも見て、刀の色が変わり始めたわよ」とモニターを指し示した。

「え?」

 言われて振り向くと、確かにモニターの中では、志緒ちゃんの触れた峰から刀の切っ先と柄に向けて弧を描きながら緑がかった青が銀色の刀身を塗り替え始めたのが目に入る。

「舞花ちゃんと結花ちゃんの時とは違いますね」

 私の呟きに対して、那美ちゃんが「現象を吸収していた双子の場合と違って、今回は体内に生じたエネルギーを接触で取り込んでいるみたいね」と説明をしてくれた。

「なるほど、それで仕組みが違うんですね」

 私が大きく頷くと、那美ちゃんは苦笑しながら「刀に直接触れれば、マイちゃん、ユイちゃんも水球や火球を出さなくても力を込められるんじゃ無いかしら」と考えを伝えてくれる。

 その間にも志緒ちゃんのエネルギーが供給され続けられ、刀身の全てが緑がかった青に塗り変わった。

 目を閉じて集中していた志緒ちゃんに、東雲先輩が『志緒、十分溜まったみただ』と声を掛ける。

 志緒ちゃんはその言葉を聞くなり目を開いて、自ら刀の色を隅々まで確認し始めた。

 それからようやく納得がいったのか、ぷはぁ~~~と長く息を吹き出しながら倒れ込むようにお尻から地面に座り込む。

 東雲先輩が少し焦ったように『大丈夫か、志緒』と確認すると、志緒ちゃんはフラフラと手を振りながら『大丈夫。集中しすぎただけ』と笑って見せた。

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