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放課後カミカクシ  作者: 雨音静香
第拾玖章 救出作戦
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拾玖之参拾肆 新たな道具

 林田先生と手を繋いだ私は「それじゃあ、始めますね」と伝えて目を閉じた。

 ゲートを開くための道具を生み出す。

 ただそれだけを念頭に置いて、どのような形にするかは、私の能力に託した。

 漠然としたイメージだけだとエネルギーを必要以上に消費したり、また、完成形にこだわりすぎても身体に負担が掛かる。

 一方で、その具現化するものの使用目的か、構造か、いずれか一つをはっきりとイメージすると、それ以外は能力に依存した方が負荷が少なかった。

 エネルギーを抽出する役目を林田先生側が担っているので、私自身が苦痛を感じることは無いけど、負担を強いるのは出来れば避けたい。

 そう思って可能な限り負担を減らしてるつもりだけど、効果が出ているかはわからなかった。

 頭の中に浮かぶイメージの林田先生は平然としているので、大丈夫だとは思う……いや、思いたいところだけど、実際に今浮かべているのが、どういう表情なのかはわからないのがもどかしい。

 これで、呻き声でも聞こえれば、停止の決断も出来るのだけど、声はおろか身体を動かしている様子も伝わってくることは無かった。


 モヤモヤした気持ちのまま、しばらく経ったところで、林田先生からの抽出が終わったことが感じ取れた。

「林田先生。必要なエネルギーが集まったみたいです。これから具現化に移ります」

 私の報告に、林田先生が「わかりました」と返してくる。

 大きく乱れてはいないものの、林田先生の声には疲労感が滲んでいるように聞こえた。

 頭の中のイメージに反映されてないだけで、林田先生は苦痛に耐えていたのかもしれない。

 それでも声に出さずに、林田先生が耐えきったのだとしたら、心意気に答えたいと思った。

 すると、私の気持ちが影響を与えたのか、具現化前のエネルギー球がまるで変化を望むようにボコボコと表面が波打ち始める。

 このままエネルギー状態を維持するのはいけないと感じた私は、頭の中でゴーサインを出した。

 すると、光るエネルギーの球体は五つの球体へと分裂する。

 元々白に近い色をしていた球体は五つに分かれることで、より白みを増した球体、朱色に近い赤、黒に近い紫、緑がかった青、金に近い黄色と、五行の金行、火行、水行、木行、土行に由来する光をそれぞれが発していた。

 白い鳥居の世界と現実世界を結ぶ四季の箸とは違って、これから生み出す世界を繋ぐ道具は五つで一組で構成され、それぞれに五行の力を宿すんだろう。

 そう考えている内に五つの光は同じ形のもの四つと、まるで形の違う一つへと変貌を遂げた。


 出現した五つの物体を前にして、雪子学校長は「これは……」と眉の間に皺を作って呟いた。

 ひょっこりと顔を出した舞花ちゃんは、同じ形の四つの物体を指さして「タケノコみたいだね」と笑う。

 舞花ちゃんがタケノコと評した四つの物体の形状は、20センチくらいの高さのある円錐型で、底面部分には漢字一文字でそれぞれ『木』『火』『金』『水』と刻まれていた。

 そして、最後の一つは直径が10センチくらいの円柱に細めの柄が付いた木槌で、円柱の底面の円の真ん中には一文字『土』と刻まれている。

 それら五つを見た東雲先輩が「まあ、単純に考えて、この四つの杭を、このハンマーで打ち込む……のだろうな」と口にした。

 東雲先輩の言い方からして、自信が無いように思える。

 ただ、私としてはそれしか無いと思ったので「多分そうですよ!」と強めに伝えた。

「あ、ああ」

 東雲先輩は私の勢いに驚いたようで、少し戸惑ってはいたけど、頷いてから「試してみよう」と言ってくれる。

 ここで、志緒ちゃんが「ちなみに、リンちゃん」と私に声を掛けてきたので「なんですか?」と聞き返した。

「この道具はどこで使うのが良いと思うの?」

 何を聞きたいのかがわからずに「え?」としか、返せない。

 そんな私に、那美ちゃんが「しーちゃんは、この道具が……と……白い鳥居から繋がる神世界かぁ、こちらの世界かぁ、どちらの方で使ったら良いかぁ、効きたい見たい~」とフォローしてくれた。

 途中で自分のキャラを思い出したらしい那美ちゃんの語尾の変化が面白かったけど、口に出すともの凄く怒らせそうな目で睨んでいるので、スルーすることに決める。

 代わりに、私は志緒ちゃんを見て「ちょっと、イメージを読み取ってみますね」と告げて五つの道具に手を翳した。

 そのまま目を閉じて、使い方が知りたいと念じる。

 すると、私の訴えに呼応して、頭の中に説明の文字が流れ始めた。

「えっ? 文字!?」

 思わず口にした言葉に、志緒ちゃんが「文字?」と反応してから「あ、文字同士がぶつかるように叩くとか?」と推理した使用方法を口にする。

 私は慌てて「あ、今、文字っていったのは使い方の説明が頭の中に流れてきたので、驚いて言ってしまったんです」と説明した。

 志緒ちゃんは「あ、なるほど」とすぐに納得してくれる。

 その直後に目にした文章を読んだ私は、志緒ちゃんに「ただ、志緒ちゃんの言うとおり、文字同士をたたき合わせるのは正解みたいです」と伝えた。

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