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放課後カミカクシ  作者: 雨音静香
第拾玖章 救出作戦
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拾玖之参拾参 前進

「あの、えっと……」

 舞花ちゃんが視線で、部屋の隅に立つ林田先生を見た。

 雪子学校長はそれだけで言いたいことを察したらしく「舞花君には苦労を掛けてしまったが、もう林田先生に『カミカクシ』に関わることを隠す必要はない……その証拠に、林田先生は卯木君の作った白い鳥居の世界を通り抜けてきただろう?」と言って微笑む。

 それを聞いた舞花ちゃんは心からホッとした表情を見せた。

 今にして思えば、最初、舞花ちゃんが口数が少なかったのも、秘密を隠していたからかもしれない。

 思えば必要以上に結花ちゃんがフォローしていた記憶もあった。

 ここで結花ちゃんが「そう言えば、林田先生は入院してたんじゃ無かったかしら?」と怪訝そうな顔で林田先生を見る。

 自然と皆の目も林田先生に向かったが、ここで那美ちゃんが「私が治したのぉ」と視線を遮るように割って入った。

「リンちゃんからぁ能力の一部を貰ってぇ、その力でぇ、林田先生を治してぇ。運んであげたぁ……じゃあ、ないわねぇ。私の身体を運んでもらったのぉ」

 のんびりした口調だけど、言い直し以外はつっかえること無く言い切った那美ちゃんは、最後に笑みを加える。

 これ以上聞くなと言わんばかりの態度に見えたけど、舞花ちゃんは純粋ゆえかまるで効かなかった。

「なんで、林田先生なの?」

 ストレートに急所を突く問い掛けに、私だったら間違いなく、自分と林田先生が元は一人の人間だと告白してしまう気がする。

 が、那美ちゃんは「え?」とほんの一瞬固まっただけで、答えを組み上げてしまった。

「リンちゃんから貰った力の相性が良かったのぉ~それにぃ、林田先生はぁ、実は前から協力をしてくれててぇ~」

 そう言いながら那美ちゃんは林田先生を見た。

 那美ちゃんの誘導で、皆の目が自分に集まったタイミングで「皆には内緒にしてて申し訳なかった」と言って林田先生は頭を下げる。

 直後、那美ちゃんは「むしろぉ、私のわがままに付き合って貰ったんだからぁ、悪いのは私でぇ」と強めの言葉で否定した。

「なっちゃん!」

 自分を責めるしおらしい那美ちゃんの姿に、舞花ちゃんがいたわるような眼差しを向ける。

「なっちゃんは、皆を巻き込みたくて、お友達を助けたくて、いろいろ間違っちゃっただけだよ!」

 舞花ちゃんの言葉に「……マイちゃん」と那美ちゃんは名前を呼んだ後で「間違い?」と首を傾げた。

「簡単な事よ。ユイ達を頼らなかったこと……もちろん、巻き込みたくないっていうのはわかるけど、水くさすぎだわ」

 結花ちゃんの言葉に、那美ちゃんは「……うん……ごめんねぇ」と申し訳なさそうに言う。

 その後で「皆に止めて貰ってぇ、自分の間違いに気が付いたわぁ」と那美ちゃんが言えば、舞花ちゃんが「じゃあ、もう大丈夫だね」と屈託無く笑った。

 結花ちゃんも舞花ちゃんの横で頷いているし、傍観を決めていたのであろう東雲先輩も志緒ちゃんも頷いている。

 普通に考えれば、改めて打ち解けた言いシーンなんだろうけど、私は林田先生が那美ちゃんに応じた瞬間、目から光が消えたのを見てしまったせいで、もの凄く微妙な気持ちになってしまった。


 私の横に歩み寄ってきた那美ちゃんは「黙っていてくれたのね~」と小さな声で囁いた。

 その言葉で、那美ちゃんが林田先生を操ってたのを確信する。

「うん。正解……でも、口裏を合わせて貰っただけだから、安心してね、凛花ちゃん」

 那美ちゃんはわざわざ私の耳に息を吹きかけながらそう囁いた。

「あの……息吹きかけるのは止めて貰って良いですか?」

 私は那美ちゃんに苦情を言いつつ、耳を押さて距離を取る。

「じゃあ、これで」

 距離を取った脇腹を不意打ちでつかれた私の口から勝手に「はうっ!」という声が飛び出した。

 慌てて口を押さえたが、既に皆の目がこちらを向いている。

「ゆ、指で、急に、那美ちゃんに、つ、疲れただけだから、なんでもないです。く、くすぐったかっただけで」

 まくし立てるように言葉を並べて説明する私の頬はもの凄く熱くなっていた。

 言わないことで協力したはずなのに、何でこんな目に遭うのかと思いながら那美ちゃんを睨む。

「ごめんなさい、つい、悪戯したくなっちゃって-」

 悪びれも無く言う那美ちゃんに、心の中で『花ちゃんみたいですね!!』と言ってやった。

 すると、那美ちゃんは表情を歪める。

 その後で私を見ると「調子に乗りすぎたわ。ゴメン」と頭を下げた。

 私は謝ってもらったので、深追いはしないと決めたけど、思いの外『花ちゃんみたい』が効果的だったことに複雑な気分になる。

 なんだか、花ちゃんが気の毒に思えて、思わず謝罪の気持ちを込めて手を合わせてしまった。


「これから、新たな四季の箸……になるかはわかりませんけど、ともかく、那美ちゃんのお友達がいる神世界へ入るための道具を作り出します」

 私の宣言に、周囲を取り囲むように立つ皆が頷いた。

「林田先生……負担が大きいかも知れませんから、もし、異変があればすぐに教えてください」

 既にドローン二号機を具現化したのは皆が見ているので、私が林田先生と協力することに疑問を抱く人はいない。

 それどころか「林田先生、リンちゃん、頑張って」と舞花ちゃんが口火を切ると、皆が呼応して応援をしてくれた。

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