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放課後カミカクシ  作者: 雨音静香
第拾玖章 救出作戦
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拾玖之弐拾肆 もう一人の?

「そもそも、本当に林田先生に、神世界を繋ぐ能力を奪われているか、どうかから確かめなければならないね」

 月子先生の言葉に、私は思わず「え?」と返してしまった。

 私の能力が使えなくなったのは、林田先生と私が分離させられたからで、今使えない能力は林田先生が持っていると単純に考えていたからに他ならない。

 月子先生の言葉は、その前提条件を揺るがすものだった。

「でも……」

 私が精一杯ひねり出した言葉に、月子先生は大きく頷いてから「確かに君の能力に変化が起きているし、使えなくなったモノもあるが、それと林田先生の方に持っていかれたという発想が必ずしもイコールでは無いと言うことだ」と言う。

「単純に、どちらかに継承されたのでは無く、例えば、二人に分割された……といった可能性もあるんじゃ無いかと考えられ無くも無い」

「分割……ですか?」

 私の返しに対して月子先生は頷くと、こちらと林田先生を順番に指さした。

「君と林田先生、精神や記憶が分割されたのなら、能力が分割されていてもおかしくないだろう?」

 可能性がゼロとは言えないけども、すんなりと腑に落ちるわけでも無く、私は「それは、そうかもしれませんけど……」と返す。

 対して、月子先生は「あの那美君があっさり君たちに従ったのを疑問に思わなかったのかい?」と問うてきた。

 那美ちゃんの名前が出るとは思っていなかったせいで、私は「え?」と驚きで声が出る。

「小学生の少女なら、状況に流されるかもしれないが、彼女は君よりも大人の女性だし、強い信念……いや、執念も持っている。その彼女が無茶をしたのに、簡単に元の鞘に収まるだろうか?」

 そう言われてしまえば、確かに、違和感が大きい行動だ。

 抵抗らしい抵抗もなかったし、今現在も協力的だと……思いたい。

 思考が読める那美ちゃんだけに、追い掛けてきた皆の思いを目の当たりにして、態度が軟化したのだとも思っていたのだけど、月子先生の言葉が生んだ波紋はあっさりとそのイメージを揺るがしてきた。

 ここまで得た情報から、その詳細まではわからないものの林田先生は何らかの能力を使うことが出来るのは間違いない。

 けど、その能力では、林田先生と二人では、目的を達成できないと、那美ちゃんが判断した。

 それは何故かと考えた時、そこを埋めるのは月子先生の言う『能力の分割』の可能性だと気付く。

 私と林田先生の分離を成功させた那美ちゃんだけど、能力を上手く持っていけなかった。

 だからこそ、林田先生と私が再接触することにも反対しなかったんじゃ無いかと考えると、辻褄が合ってしまう。

 ただ、那美ちゃんの思惑がどうであれ、やることが変わるわけでは無かった。

 私たちの目標と目的は、那美ちゃんの生徒達を救うことなので、ここは一致していると思う。

 なので、少なくとも救出差作戦が終わるまで花観ちゃんは味方と考えていいし、裏切りというか、問題を起こしたりもしないはずだ。

 いろいろ本人に聞いて解明したいことはあるモノの、一応の区切りを自分の中で付けた私は、月子先生に改めて視線を向ける。

 月子先生は「折り合いは付けられたかな?」と、私が考えていることなど、お見通しと言わんばかりの問い掛けをしてきた。

 今更なので、私は驚くことも無く頷きながら「考えてもわからない……と、結論づけました」と返す。

 月子先生は少し間を置いてから「それでは、次の検証だね」と口にした。


「正直、君が林田先生と接触することでわかることは数多いと思う」

「はい」

 私が頷いたのを確認してから、月子先生は「ただ、君自身が、分かたれたもう一人の自分に接触するということで想定しないことが起こる可能性があり、私としてはそこに危険が潜んでいる可能性を危惧している」と続けた。

 月子先生はここで少し間を置いてから、軽く咳払いをしてから続きを口にする。

「既に伝えているが、君は神に近しい能力を得ていた……つまり二人が接触することで、その力が再現し、最悪の場合、暴走状態になりかねない」

 私は目を閉じてこれまで得た情報を頭に浮かべてから「わかります」と返した。

 先を離すのを躊躇っているように見える月子先生に、私は気になっていることを尋ねることにする。

「あの……月子先生」

「……なにかね?」

 私から話しかけられると思っていなかったからか、月子先生の反応は少し鈍かった。

 いろいろ考えているのを邪魔してしまったかもしれないとは思ったけど、話しかけた以上ここで踏み止まる方が迷惑と考え直して「あの、林田先生は私をどう思っているんでしょうか?」と尋ねる。

「どう思っている……か、か……」

 私の問いに月子先生は何故か動揺を見せた。

 不思議そうに見ていると、月子先生は溜め息を吐き出してから声を潜めて「彼は君を自分の分身とは思っていないかもしれない」と言う。

「へ?」

 想定外の月子先生の言葉に、目が点になった。

 そんな私に月子先生は声を潜めたままで「彼は、君を舞花さんや結花さんたちと変わらない……一生徒とと考えているような受け答えをしていた」と続ける。

「雪姉がそこら辺を念頭にしつつ、聞き取りをしてくれているから……」

 月子先生はそこまで言ったところで、私の様子を見て「どうしたね?」と聞いてきた。

 私は素直に「……そ、その……私と接触していいか、どうか、という感覚的なモノを、林田先生が感じているかどうかを聞こうと思ったんですけど……」と想定していた答えがどういうモノかを伝える。

 月子先生は私の考えを聞いて「あー」と声を漏らしてから、頭を掻いた。

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