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放課後カミカクシ  作者: 雨音静香
第拾玖章 救出作戦
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拾玖之弐拾弐 疑念

 私が、林田先生の身体に触れようとした瞬間、なんとその目が開かれた。

「っ!」

 思わずあたしは手を引っ込めながら後ろに飛んで距離を取る。

 那美ちゃんが意識を移して操っていた身体が勝手に動いたということに、強い衝撃があった。

 それは、周囲を取り囲むようにしていた雪子学校長や月子先生、リンリン様、それぞれがそれぞれ身構えている。

 林田先生はそんな中で周囲の状況を確認するように頭を動かし始めた。

 那美ちゃんが操っていないのなら、何故動いているのか、私の知識と発想力では見当も付かないけど、皆が警戒している以上、危険な可能性があると気付いて、青呉はしたものの、林田先生から距離を取る。

 全員が警戒しながら塔巻きに見る中で、林田先生はゆっくりと気に手を掛けながら立ち上がった。


 私の頭の上に飛び乗ってきたリンリン様が囁くような小さな声で『主様』と呼びかけてきた。

「なに?」

 短く返すと、リンリン様は『主様とは繋がりを感じているのじゃが、あの者とは全く繋がりが感じられぬ。気をつけるのじゃ』と状況を伝えてくれる。

 リンリン様の言いたいことを完全把握出来ている気はしないけど、少なくとも、林田先生を動かしているのが、私とは別のモノだということは間違いないのだと理解した私は、雪子学校長と月子先生を順番に見た。

 すると月子先生が、私に下がっているようにとハンドサインで指示を出した後で、雪子学校長と視線を交わし合った後に、一歩前に出る。

「林田君」

 月子先生が呼びかけると、林田先生は頭を押さえながら「……教授?」と疑問符付きながら反応を示した。

 林田先生の様子を覗いながら更に一歩近づきながら、月子先生は「私がわかるかな?」と柔らかな声色で尋ねる。

 対して、林田先生は「教授……いや、先生でした……ね。頭にモヤがかかったような、感じです」と苦笑を浮かべた。

 月子先生は林田先生の様子を観察しながら「私との関係や現状については思い出せているようだね」と口にした後で「モヤがかかっているというのは所々思い出せないといった感じかな?」と問う。

 林田先生は息を吐き出しながら目を閉じると、少し間を置いてから「忘れていることがあるかも知れませんが、少しはっきりとしてきました」と口にした。

 月子先生は「そうか」と頷いてから「それじゃあ」と声を掛ける。

「君の状態を確認するために、とりあえず自己紹介をして貰おうか」

 林田先生は月子先生の言葉に頷くと、ゆっくりと自分について話始めた。


 月子先生が聞き取りをしている間に、私の横に来ていた雪子学校長が「彼の記憶にある経歴に間違いはなさそうだね」と声を掛けてきた。

 そんな雪子学校長の言葉に対して、私は反応が返せない。

 私が無反応なことに気が付いた雪子学校長が、心配そうな顔でこちらを見ながら「どう、したかね?」と尋ねてきた。

 私は抱え込んでも良いことにならなそうだと思い、素直に雪子学校長に答える。

「林田先生がしていた自己紹介……自分の振り返りに所々覚えが無い話があって……」

 自分ではどういう表情を浮かべていたのかわからないけど、雪子学校長が「大丈夫だ。不安に思うことは無い」と声を掛けてくれたので余りいい顔はしていないようだ。

 リンリン様も気を遣って、優しく私の頭を叩いてくれる。

 そこから少し考えるような素振りを見せた雪子学校長は「卯木君、少し待っていて貰えるかな?」と口にして月子先生の方へと向かって行ってしまった。


 近づいてきた雪子学校長に気付いた月子先生は、林田先生に待つように言ってから距離を取った。

 私からも距離を取った状態で何か話をした後、今度は月子先生がこちらに、雪子学校長が林田先生の方へと移動する。

 私の目の前までクルなり、月子先生は「単刀直入に聞くが、君は過去をどこまで遡れる・」と問うてきた。

 あまりにも急な問い掛けだったので、私はまずその質問に面食らってしまう。

 けど、何故そんな質問をしてきたのかと考えるうちに、真剣に考えて答えなければいけないことだと気が付いた。

 雪子学校長に伝えたとおり、林田先生が知っていて私が知らない記憶が存在しているかもしれない。

 それが何故起こったのかと考えれば、林田先生の身体の方に記憶が残っているからじゃ無いかと、私は考えた。

 つまり、私の視点では、記憶では、林田先生が引き剥がされて分離させられたと思っていたことが、逆だった可能性である。

 私の方が分離させられたんじゃ無いかと考えると、全身から血の気が引いていくのがわかった。

 意識が続いていたから、私が林田京一であり、卯木凛花だと思っていた……いや、思い込んでいたのじゃ無いか、そう考えると私の方が記憶が曖昧なことに辻褄が合ってしまう。

『ぬしさまっ!』

 リンリン様の声と共に、ゴンと頭全体に鈍い振動が響いた。

「り、リンリン様?」

 突然の一撃に名前を呼ぶと『主様! わらわとの繋がりのことについても考えてほしいのじゃが?』と苛立った口調なのに、妙に柔らかい複雑な心境を示すようなリンリン様の声が掛けられる。

 戸惑いながらも、私が「リンリン様との繋がり」と繰り返すとリンリン様は『わらわが繋がっているのは主様だけじゃ』と言って、私の頭をポンポンと頭を叩いた。

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