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放課後カミカクシ  作者: 雨音静香
第拾玖章 救出作戦
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拾玖之弐拾壱 接触

 延焼しないイメージを浮かべているとはいえ、出現させるのは狐火なので、一応、周囲に木が無い空間を目標地点にした。

 頭の中で『燃えない火』という単語を繰り返し思い浮かべつつ、目標とした空間に狐火が出現するように念じる。

 燃えない火でできた狐火という矛盾したモノを出現させようとしているせいか、極小化させた狐雨よりも現象の発現二時間が掛かった。

 もしかしたら、発動できないんじゃ無いかと考え始めたところで、急に火が現れる。

 赤やオレンジでは無い、少し緑がかった青い炎が自然な火ではないことを物語っていた。

 普通では無いと認識出来たお陰か、頭の中でこの炎は熱を放っているだけで、周囲のモノに燃え移ることは無いという認識が強まる。

 すると、頭の中になんとなくだが『動かせる』という確信が浮かんだ。

 私はその確信に従って、周囲の木々の枝に触れないように気をつけながら、狐火にこちらに近づくように命ずる。

『ふむ。しっかりと熱を発しておるようじゃの』

 私の頭の上のリンリン様がそう言ってちゃんと熱を発していることを伝えてくれた。

 神格姿であるせいか、温度に関しての感覚が鈍くなっているので、リンリン様からの報告はとても参考になる。

「もう少し近づけてみても大丈夫ですか?」

 私の問い掛けに、リンリン様は『うむ。直接触れなければ、人間であっても火傷はせぬはずじゃ』と答えてくれた。

 その言葉を信じてもう少し近づけてみる。

 手を伸ばせば触れられる距離まで移動させ、掌を翳してみたが熱量を余り感じられなかった。

「ちなみに、リンリン様、温度ってわかりますか?」

 私の言葉に、リンリン様は『摂氏100度を少し越えた位じゃな』と即答してくれる。

 更にリンリン様は『オリジンからの情報によると、どらいやーの温度と同じ程度らしいのじゃ』と情報を追加してくれた。

 その情報に、私がなる程と頷いたところで、事態が急変する。

 頭の上に座っているはずのリンリン様の気配が消え、ほぼ同時に目の前の狐火も消え去った。


 何が起こったのか、理解できず混乱しかけたところで、何かが上から下へと私の目の前を通り過ぎた。

 思わず視線を落とすと、そこには華麗に着地を決めたリンリン様の姿がある。

 同時に、私の身体が消えていることに気が付いた。

 ようやく自分が球魂の姿に戻ったのだと理解した私は、車椅子に座った私の身体へと移動を開始する。

 近くには『穢』の存在は無く、リンリン様もすぐに『魔除けの鈴』の待機状態に入ってくれたので、大丈夫だとは思うけど、それでも身体に戻っておいた方が安全なのは間違いなかった。

 なるべく早くと思ったのが結果を呼び寄せたのか、車椅子の方へ意識を向けた直後には、目の前には私の身体の後頭部が迫っていて、次の瞬間には視界が黒一色に塗りつぶされる。

 直後、腕を乗せた肘掛けの感触、座っている椅子の座面の感覚、靴越しのステップの存在感と、身体から触れているモノいについての報告が上がってきた。


「無事、身体に戻れたようだね」

 私が目を開けたところで、のぞき込むようにこちらを見ていた雪子学校長がそう言って頷いた。

「はい。大丈夫そうです」

 雪子学校長にそう返してから、足を上げてステップを上げる。

 足を降ろして、ゆっくりと立ち上がってから、少し身体を動かしてみた。

 改めて、雪子学校長に「今動かした限りですけど、特に身体に問題なさそうです」と報告を上げる。

「そのようだね」

 雪子学校長が頷いてくれたのを確認してから、私は本題と言うべき視線を林田先生に向けた。

 私の目線の先には、ほんの少し前、お風呂の最中に見た分身……私から分離された半身とも言うべき存在、林田京一が木により掛かっている。

 さっき、球魂と神格姿で見た卯木凛花の身体とは違い、自分の身体という感覚が凄く気迫で、寝ている他人を見ているのと、変わりが無いように思えた。

 そこまで思考が卯木凛花に寄っているのかと、自分の状況を改めて確認して、思わず苦笑を浮かべそうになる。

「躊躇しているようだね」

 私が林田先生を前に動きを止めたことをそう解釈したのであろう月子先生から声が掛かった。

 続けて「何があってもフォローはする。花子には、皆には内密にして、こちらの状況をライブ中継しないように『オリジン』にオーダーして貰っている」と、何か問題が起きても、すぐに皆に伝わることは無いと補足してくれる。

 こうなると、後は私の覚悟だけだ。

 何か起こるにせよ、起こらないにせよ、もう一人の私である林田京一との接触は避けられない。

 目を閉じて気持ちを落ち着かせるために、私は大きく息を吸い込み、大きく息を吐き出した。

 一度、二度、三度と、気持ちよ落ち着けと念じながら繰り返して、ようやく、手を伸ばせると思えた私はゆっくりと目を開く。

 伸ばす手が震えているけど、これを直接見ているのは、リンリン様と雪子学校長、そして、月子先生だけだ。

 私の真実を知っているメンバーしか見ていないという状況を改めて思い返したことで、スッとより気持ちが落ち着くのがわかる。

 このまま、触れてしまおうと決意を込めて、手を伸ばしたとき、想定外の事態が起こった。

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